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テキストマイニング
顧客の声を活用するテキストマイニング

第2回:テキストデータ活用の変遷

著者:野村総合研究所  神田 晴彦   2006/12/7
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全社活用・業務特化への動き

   1つ目の動きは顧客の声の全社活用である。企業に寄せられた顧客の声を、全社的に共有・展開することで、施策に活用しようという動きである。

   これまではマーケティング部門やコールセンターなどの顧客接点となる部署で分析を行った際に、せっかく発見された貴重なルールや傾向が、分析した部署の中で閉じてしまうことも多かった。その結果、アクションに活用したい関連部署に情報が共有されないといった場面も多く存在していたのである。

   また、グラフなどの集計結果を紙の報告資料にまとめて関連部署に報告しても、2次情報・3次情報では現場は親近感がわかず、アクションを検討しにくいという悩みを抱える企業も非常に多いのも事実だ。

   この課題を解決するために、テキストマイニングを行った結果を全社イントラネットで共有することが求められるようになってきた。重要なのは分析結果と具体的な顧客の声を一緒にフィードバックすることだ。傾向とエピソードを有機的に関連部署に提供することで、具体的な改善策の検討が進めやすくなる。

   近年では、経営層に顧客の声を共有する企業も非常に増えてきており、これついては本連載の最終回で取り上げていく。

業務特化・データ特化

   2つ目は、個別の業務への特化やテキストデータの特殊化の動きについて言及したい。元々テキストマイニングはアンケートの自由記述やコールセンターの問い合わせなどの分析が中心であったことはこれまで述べてきた通りである。

   しかしながら、昨今ではテキストマイニング技術を応用して、個別の業務に特化したシステムを望む声も多くなってきている。また企業側の担当者が特殊なテキストデータを扱う場面も増えてきた。ここではテキストマイニング技術の主要な活用動向を見ていこう。


FAQ(よくある問合せ)の例

   例えば最近のコールセンターの業務の1つとして、FAQの整備・構築があげられる。これはコールセンターの電話の受け手(オペレーター)が、回答する際にわからない質問があった場合、すぐに調べて適切な回答ができるようにするための取り組みである。この業務にテキストマイニング技術を応用したいという声を多く聞く。

   オペレーターがこのFAQを検索しやすくなるように、またコールセンターの管理者が不足しているFAQを特定するためには、テキストマイニングツール単体で分析を行うよりも、一連の業務のフローに特化したシステムとして提供する方が利便性は非常に高まることがわかっていた。

   そこでNRIではテキストマイニング技術だけでなく、検索すべき内容のレコメンド機能やメール回答文作成支援、承認管理などの各種業務に便利な機能を盛り込んだ「TRUE TELLER FAQナレッジ」というシステムを開発し、多くのコールセンタ−で導入されている。


個人情報保護の例

   個人情報のマスク処理の場面を紹介しよう。最近では個人情報保護の観点から、社内で情報共有をする際にテキスト本文中に含まれている個人情報をマスクしたいというニーズが多くなってきている。

   これはもちろんデータベースの住所欄や電話番号欄にアクセス制御をかけることで非公開にすることができるが、メールの本文中やコールセンターの応対履歴本文にかかれた住所や会員IDなどは簡単にアクセス制御をかけることができない。

   そのため現在は担当者が一件一件、目視でチェックしてマスク処理を行っているのが現状ではないだろうか。この個人情報の特定やマスキング作業の効率化のために「TRUE TELLER個人情報フィルタ」というツールで対応することができるようになる。


その他の例

   その他の利用法としては、特許文献などの専門的な文献情報を分析する場面が急増している。特許情報は非常に長く専門的な表現も多い。競合動向把握や自社保有の特許の動向、M&Aの策定などにおいて、特に企業の知的財産部に所属している担当者にとっては、このような情報のチェックが貴重になってくる。これらを可視化するための「TRUE TELLERパテントポートフォリオ」は多くの知財部門で利用されている。

   またWeb 2.0時代といわれるようになり、blogやSNS、検索キーワードなど、扱えるテキストデータの種類も量も増加しつつある。その現状を踏まえ「TRUE TELLERイントラブログ活性化支援システム」や、「クチコミ分析サービス」などを提供している。

   また企業の扱うテキストデータは日本語だけにとどまらない。特に製造業においては、海外からの問い合わせ内容などを分析する機会も多くなっている。TRUE TELLERでは英語版と中国版を提供中である。

   このように業務特化・データの特殊化は様々なところで進んでおり、テキストマイニングの技術によって対応する動きは、今後も多くなると思われる。


今回のサマリー

   顧客ニーズの多様化・商品の複雑化やインフラの整備充実から、テキストデータの種類と量が増え、テキストマイニングの必要性が高まってきた。今後は、社内への情報共有としての動きと、業務特化・データ特殊化に個別に対応する動きの2つの方向性が見られるようになる。

   次回は、テキストマイニング技術の詳細についての説明に入っていきたい。

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株式会社野村総合研究所  神田 晴彦
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  神田 晴彦
野村総合研究所ビジネスインテリジェンス事業部にてテキストマイニングを活用したCS調査や、データマイニング分析コンサルティングを数多く手がける。近年はテキストマイニングによるBlog分析やFAQ構築、品質管理・経営層向けのポータルサイトの構築を実施している。また人材育成プロジェクトも担当し、日本で最初となるテキストマイニング認定試験の企画に携わる。


INDEX
第2回:テキストデータ活用の変遷
  検索から分析へ
  アンケート・コールセンター部門で利用が急増
業務特化・データ特化