TOPキーパーソンインタビュー> Linuxコミュニティ支援とサイオスグループ技術戦略の2つの使命を持つ男
Linuxコミュニティ支援とサイオスグループ技術戦略の2つの使命を持つ男
前のページ  1  2   3  次のページ

— 先日開催されたOSDL Japan Linux Symposiumで日本のエンジニアと触れた際に、アメリカのエンジニアとの違いを感じましたか


Bottomley氏 Bottomley氏: エンジニアの方々の姿勢やスキルは、日本でもアメリカでもそれほど違いはないと思います。ただLinuxに対する貢献度合いは、アメリカと比較すると日本はまだ少し低い状況にあります。これはエンジニア自身に起因するものではなく、むしろ日本の企業の構造に原因があるのではないかと思っています。

アメリカの企業では、マネジメント層がエンジニアにLinuxで「遊ぶ」時間を提供しています。それによって、エンジニアはLinuxに触れて、試行錯誤しながら自分たちのスキルを磨いていくことができるわけです。

それに対して、日本の企業ではエンジニアがLinuxで「遊ぶ」ことによってスキルを培うことが会社のメリットにつながるという考え方が、マネジメント層になかなか受け入れられていないように思います。それがLinuxに対する貢献度の差となってあらわれているのではないでしょうか。

また、アメリカでは市場におけるLinuxのパワーや重要性をエンジニアがキャッチして、それをマネジメント層に対して自然な形で上げていくという企業風土があります。これについては、CTOという存在がその一助になっているのかもしれません。一方、特に日本の大企業では、マネジメント側が市場でのトレンドを認識した上で、上から引っ張り上げていくということがないと、なかなか先に進まないということが多々あるように思います。


— 現在、多数のLinuxディストリビューションが乱立しています。この状況についてはどう考えていますか

Bottomley氏: イノベーションというのは、ある意味混沌としたところから生まれてくるものです。完全に整理整頓された状態、例えばWindowsのように1社がすべてを制御するような状況では、なかなか革新性のあるものは望めません。

それに対してディストリビューションが複数存在すれば、それぞれが差別化をはかっていこうとする中で、イノベーションも加速化します。また逆にいえば、十分なイノベーションを発揮できないディストリビューションは、ディストリビューションという存在でいられなくなるでしょう。

ユーザにとって多少混乱の原因になるかもしれませんが、Linuxがこれから先も引き続きイノベーションを実現していく上では、モノリシックな提供形態ではなく、現在のような複数ディストリビューションが存在する状況が必要不可欠なのではないかと思います。

— ディストリビューションに不適切な動きがあった場合、それに対してOSDLが何かアクションを起こすということはありますか

Bottomley氏 Bottomley氏: まず前提として、OSDLにはディストリビューションの活動に介入できるという権限自体が付与されていません。

ただし、様々なディストリビューションやISVの方々がOSDLのメンバーになっていますので、例えばあるディストリビューションに対して「あなたがやっていることは間違っている」と意見を述べた場合、かなり影響力のあるメッセージにはなると思います。さらに、そのディストリビューションの顧客がOSDLのメンバーである可能性もありますので、強制力はありませんが非常に力強い意味のある声になり得るでしょう。

Linuxの場合はソースコード自体が公開されていて誰でも入手することができるので、あるディストリビューションのやり方に対して意見があった場合には、自分なりの意見を公開されているソースコードを使って作ってしまうことができるわけです。

その他にも、ディストリビューションのやり方に納得できない場合には、それを表現する様々な方法があります。例えば、Red Hatに対するOracleの最近の動きも、その1つの例といえるでしょう。顧客の声にきちんと耳を傾けないとビジネスで不利益を被ることは十分あり得るという意味では、自然な流れともいえます。


前のページ  1  2   3  次のページ