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今だから知っておきたいXMLデータベースの成功ポイント
今だから知っておきたいXMLデータベースの成功ポイント

第1回:XMLデータベースのつまづきはなぜ起こるのか

著者:ウルシステムズ  林 浩一   2006/12/8
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XMLデータベース導入のポイント

   これまでの説明を踏まえ、これから目指すべきXMLデータベース導入のポイントを前述のGAPS2分析に当てはめて解説しよう。
XMLデータベース導入成功のポイント
図4:XMLデータベース導入成功のポイント


性能・機能の向上でスキルのギャップは埋まりつつある

   最近のXMLデータベースの性能向上により、最大の阻害要因は解決されつつある。性能については、初期の製品において困難だったGBの壁を越え、数10〜数100GB規模のデータベースで実用的な性能を出すことができるようになっている。

   また機能の向上によって、製品固有の特殊な知識を持たない技術者でも容易に利用できるようになった。ネイティブ型の場合、スキーマの定義が不要なウェルフォームドXMLへの対応と、チューニングのための知識が不要なオートインデックス機能を備えた製品が主流となっている。

   標準の検索言語であるXQueryの採用が広がったことも技術者の層を厚くすることを後押ししている。XQueryはリレーショナルデータベースのSQLに対応するもので、基本的にはXQueryをマスターすればそれぞれの製品に固有の検索手法を学ぶ必要がなくなる。

   ただ、性能が向上し、使いこなしも容易になったとはいえ、実績はリレーショナルデータベースと比較すると少ないため、万一に備えて高いスキルを持つ技術者を配置し、ベンダーから受けられる技術サポート内容を押さえておくほうがよいだろう。


半定型文書処理に着目して有効なビジネス上の目的を考える

   XMLを有効活用するために着目すべき分野は、オフィスでの半定型文書処理である。「ODF(Open Document Format)」や「OOXML(Office Open XML)」といったオフィス文書のXML標準化の進展もあり、この領域の可能性は大きく拡大している。

   半定型文書は、定型文書と非定型文書の両方の特徴を持つ文書のことである。定型文書は発注書や申請書など構造が完全に決まった文書で、これらはリレーショナルデータベースで効果的に扱うことができる。

   非定型文書は、ワープロなどによって自由な書式で書かれた報告書やプレゼン資料などだ。これらはリレーショナルデータベースでの処理は難しいが、目的のデータを探し出すためだけなら文書検索エンジンを使うことで対応できる。

   そして半定型文書は、おおよそ共通の構造を持っているものの制約があまり厳しくなく状況に応じて構造が変更されるような文書のことである。XMLデータベースを使えば、すべての文書で共通する定型部分の構造を使って一覧の作成や比較をしたり、一部のプロジェクトの文書のみで使われている構造を使った検索も可能となる。このようなシステムはXMLデータベースの独壇場である。

XMLデータベースには半定型データが適している
図5:XMLデータベースには半定型データが適している


半定型文書処理が活きる創造的活動の支援を企画する

   半定型文書の処理機能が支援する対象は主に非定型的な業務である。これまでリレーショナルデータベースを用いて支援してきたような、基幹のデータを扱う定型的な作業ではなく、自由で創造的な作業が中心となる。

   このような分野では、創造的な内容の自由度を保ちながらも、定型的な部分を自動化可能なシステムが必要となる。こうした創造的な業務は企業の競争力の源泉であり、各企業で大きく異なっている。XMLデータベースによってどのような業務支援を実現するかという企画そのものが勝負である。


新しい開発プロセスが拓く可能性にも目を向ける

   XMLデータベースの活用範囲は必ずしもオフィスの半定型文書処理に限るものではなく、まだまだ未開拓の可能性が残されている。例えばWeb 2.0的といわれるインターネットサービス開発では、仕様変更の柔軟性が強く求められている。

   開発を進めているうちに、当初は思ってもみなかったXML構造が生まれ、プログラムと共に成長していくことが必要になる可能性は高い。そうした場面ではXMLデータベースの活用を検討する価値がある。


実際のXMLデータベース活用事例は

   以上、本連載第一回では、これまでのXMLデータベース導入の傾向を分析し、さらに最近の動向について解説した。XMLデータベースは従来のリレーショナルデータベースとはまったく異なる特性を持ち、大きな可能性を秘めている点がご理解していただけただろう。

   XMLデータベースの柔軟性を活かすことができるかどうかは、柔軟な発想ができるかどうかにかかっている。次回は、XMLデータベースの具体的な活用事例を紹介しよう。

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ウルシステムズ株式会社 林 浩一
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  林 浩一
アジャイル開発手法やXML技術を駆使して、ビジネスとITのギャップを埋めるITコンサルティングを行う部門を率いるディレクター。お客様のビジネスを本当に支援できる先端技術の活用を目指して、理論と実践の両面からアプローチしている。


INDEX
第1回:XMLデータベースのつまづきはなぜ起こるのか
  はじめに
  現在のXMLデータベースの特徴と動向
XMLデータベース導入のポイント