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Ajaxではじまるサービス活用 |
第1回:サービスを活用するAjax時代の到来
著者:ピーデー 川俣 晶 2006/12/22
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Ajaxの〜暗黒期・ユーザビリティが見捨てられた時代〜
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さて、そのように優れた特徴を持つAjaxがどのような経緯を辿って成立し、発展したのか、その歴史の流れを見てみよう。そのためにも、まずはAjaxという言葉が生まれる以前の時代に目を向けてみる必要がある。
Ajax誕生直前の時代とは、サーバ側技術を主に用いるWebアプリケーションの全盛期ということができる。いわゆるイントラネットブームの時代といえる。
サーバ側Webアプリケーションは管理コストの低減という目的のため、システム管理者より歓迎された技術である。処理のほぼすべてをサーバ上で実行させ、クライアントは単にサーバから受け取ったページを表示するだけの役割しか与えない構造を持つ。
このようなシステムは、クライアント側に業務ソフトをインストールする必要がなく、管理の手間とコストは確かに低減された。しかし、本来インターネット上コンテンツを閲覧するソフトに過ぎないWebブラウザを業務システムに使うのは不便であった。
例えば、従来型の業務ソフトであれば入力後に即座に警告された誤入力が、サーバ側Webアプリケーションではサーバに送信した後、何秒も待たされた後にならなければ警告されなくなったように、使い勝手が低下する事例は多い。また、使ってしまうと不整合が生じる「戻る」ボタンの存在など、トラブルの種も多い。
このように、管理コスト低減のために、ユーザビリティを見捨てたのがこの時代の特徴といえるだろう。
もちろん、この問題に対して対策が講じられなかったわけではない。例えば、管理コストを低く抑えたままでユーザビリティに優れたリッチな専用ソフトをインストールする「リッチクライアント」は、この問題を解消するための1つの選択肢となった。
各社は、競ってリッチクライアント技術を開発し、アピールした。しかしこれが広く普及することはなかった。結局のところリッチクライアントを使うためには、まずそのための専用ソフトをインストールしなければならず、そこで管理コストを抑えるという目標と食い違ってしまったのである。
その結果、管理コストの低減とユーザビリティの復権は、両立しない目標であるかのように思われた。それがAjax以前の時代である。
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Ajaxの黎明期〜古い技術を生のまま使うパイオニアの時代〜
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実は、管理コストの低減とユーザビリティを両立させる技術は1990年代末期にすでに存在していたのである。XMLやDynamic HTMLを活用するリッチなWebアプリケーションは、1990年代末期から2000年代の初頭に、実に様々なものが作られていた。
事実として、そのような事例は多く残っている。例えば、それに該当する事例は「MILLENIUM XML WWWページコンテスト」や「2001 XML WWWページコンテスト」などの応募作品にいくらでも見られるし、筆者が1998年7月に東京電機大学出版局から出版した「XMLコンテンツの作り方」という書籍は、Ajaxの原型そのものを解説した書籍といって間違いない。
それにも関わらず、この時点ではAjaxブームが起こるどころか面白い遊びのままフェードアウトしてしまった。その理由は簡単である。そのようなリッチな機能はInternet Explorerでしか利用できず、その他ライバルのWebブラウザでは使えなかったのである。誰でも利用できるサービスを作成するために、こういった機能を使うことはできなかったことが、遊びに終わった要因であった。
この状況に変化が起きたのは、ライバルWebブラウザがようやくInternet Explorerの水準に追いついてきた2004年頃である。
この時代にGoogleは、もはや有望な技術とは見なされていなかったXMLやDynamic HTMLなどの技術を掘り起こし、非常にリッチなWebアプリケーションを作って見せた。特に、インターネットの地図に革命を起こした「Google Maps」のインパクトは絶大であった。少ない待ち時間で自由自在に地図をスクロールできる快適さ、便利さはまさにWebアプリケーションの常識を覆す異次元の快適さだったのだ。
即座に追従者達が出現し、次々とリッチなWebアプリケーションが作られ始め、それらも非常に便利であるという評価を受けた。このような動きに対して、後から付けられた名前がAjaxである。
それゆえに、Ajaxが実在するか否かを問うことは無意味といえる。便利だと評価を受けた実在するサービス群に対して付けられた名前である以上、それが実在することは間違いない。
かくして、Webアプリケーションの弱点を克服するリッチクライアントの復権は成し遂げられた。使い勝手がよく機能も強力というリッチクライアントの夢はここに現実のものになったのである。
しかし、使う側にとってよいものでも、開発する側にとってはけっして楽なものではなかった。それは、古い技術を生のまま使う必要があったからである。また、必要な機能はすべて自前で開発しなければならなかった。例えば、地図機能を含むサービスを作ろうと思ったら、自分で地図データを探してくるところからはじめねばならなかったのである。
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著者プロフィール
株式会社ピーデー 川俣 晶
株式会社ピーデー代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、Microsoft Most Valuable Professional(MVP)、Visual Developer - Visual Basic。マイクロソフト株式会社にてWindows 3.0の日本語化などの作業を行った後、技術解説家に。Java、Linuxなどにもいち早く着目して活用。現在はC#で開発を行い、現在の注目技術はAjaxとXMLデータベース。
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