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Ajaxではじまるサービス活用 |
第7回:Ajaxはどこへ行くのか
著者:ピーデー 川俣 晶 2007/5/17
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乗り越えられない制約
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Ajaxは、Webブラウザをプラットフォームとして実行するため、Webブラウザが持つ制約を乗り越えることができない。
例えば、ローカルのハードディスクに格納された文書ファイルを開くケースで考えてみよう。一般のデスクトップアプリケーションでは、以下のような手順で開くことができる。
- ツールバーのファイルを開くアイコンをクリック
- ファイル選択のダイアログボックスが開く
- 開くファイルの名前をダブルクリック
表1:一般的なデスクトップアプリケーションの手順
しかし、Ajaxアプリケーションでは以下の手順を取る必要がある。
- ファイルアップロードのページを開く
- 参照ボタンをクリックする
- ファイル選択のダイアログボックスが開く
- 開くファイルの名前をダブルクリック
- 送信ボタンをクリック
表2:Ajaxアプリケーションの手順
これらをみてわかるように、Ajaxアプリケーションではローカルアプリケーションに比べて手順が2つ多く必要なのである。
このような制約は、Webブラウザ側によってもたらされるもので、Ajax開発者の努力では乗り越えられない。そして、同様の制約はあちこちに存在している。このため、どれほどAjaxアプリケーションが進化しようとも、デスクトップアプリケーションに真っ向勝負で勝つことは難しい。
仮に、ユーザの要求が肥大化し、このような制約が重大な問題として立ちはだかることがあれば、Ajax時代が終わるという可能性もあり得る。その際、Ajaxに取って代わる候補になりうるのは、以下の2つだろう。
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従来型のデスクトップアプリケーション
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従来型のデスクトップアプリケーションは、Ajax時代よりも前からある標準的なアプリケーションソフトである。
歴史が古いため、強力かつ実績のあるソフトが揃っており、すぐにでも活用できる。例えば、GMailの機能性に不満があるので、デスクトップの電子メールソフトに乗り替える、というのはあり得る選択肢である。
弱点は、いちいちバージョンアップの手順を取らねば機能が新しくならないことと、別のパソコンから容易に利用できないことである。
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専用リッチクライアント
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専用のリッチクライアントは、ネットワークからダウンロードされ、実行されるアプリケーションソフトだ。Ajax時代よりも前から提案されつつも、なかなか普及が進んでいないという状況にある。これらには、主にWebブラウザ上で実行されるものと、Webブラウザ外で実行されるものがある。
例えばFlashアプリケーションは、Webブラウザ上で実行されるものの典型的な例といえるだろう。そして、Microsoftの「Click Once」技術は、後者を実現する例となり得る存在だ。
これらは、従来型のデスクトップアプリケーションを克服するために存在するといえる。常にサーバと連携して動作するため、バージョンアップは自動的に行われることも多い。また、別のパソコンからであっても、同じソフトを利用して同じサービスを受けることも容易である。
しかし、弱点もある。たいていの場合、専用リッチクライアントはそれを使うための専用ソフト(ランタイム)をインストールする必要がある。この弱点は、不特定多数のユーザに使ってもらうことを考えた場合、このような手間を要求できないという点で致命的である。
また、多数のパソコンを使う企業内システムでは、それらのすべてにランタイムをインストールし、それを最新版に維持する手間が非現実的とみなされるケースもあり得る。
以上のどちらのケースも深刻な弱点を抱えていて、すぐにAjaxに取って代わるという話はないだろう。しかし、Ajax側に「ユーザニーズを満たせない」という深刻な問題があると認識された場合は、別の候補として浮上する可能性は十分に考えられる。
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著者プロフィール
株式会社ピーデー 川俣 晶
株式会社ピーデー代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、Microsoft Most Valuable Professional(MVP)、Visual Developer - Visual Basic。マイクロソフト株式会社にてWindows 3.0の日本語化などの作業を行った後、技術解説家に。Java、Linuxなどにもいち早く着目して活用。現在はC#で開発を行い、現在の注目技術はAjaxとXMLデータベース。
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