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キーマンが広げるオープンソースビジネスの輪
第1回:JBossのキーマンが語る日本市場戦略
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   ワールドワイドに証券投資サービスを展開するみずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ証券子会社となるMizuho Internationalにおいて、Lead Architectとしてオープンソースをシステム構築に利用されているJeff Michell氏に、オープンソース利用のポイントをうかがった。Jeff Michell氏は、以前COBOLで開発されていた同社のビジネスアプリケーションを、JBossのSOAプラットフォームを用いてオープンソースベースのシステム基盤への移行を行っている。

JBossのSOAプラットフォームを用いたシステム基盤への取り組み例

梶山氏   ミッションクリティカルなシステムへのオープンソースを導入に至った経緯をお聞かせください。

Jeff Michell氏 Michell氏   2000年に、商用のEAI/BPM製品を利用してCOBOLベースのビジネスアプリケーションを再構築しました。この環境では約30のアプリケーションが稼働し、1日の取引金額にして約2兆円の取引を管理しています。この製品のメジャーバージョンアップ時に問題に直面しました。

  新バージョンのAPIにあわせて全てのアプリケーションをポーティングし、データベースなどのインフラをアップグレード、単体テストからユーザ受け入れテストまでを繰り返すという、新規開発と同じような事を繰り返すことになったのです。開発用ライセンスの費用のお蔭で開発者の増員や追加開発に制約を受けました。このことが我々に激変している市場に目を向かせるきっかけとなりました。

そこで再構築時のオープンソースの導入に当たって、まずじっくりと検証を行うことからスタートしました。市場の動向調査と製品の机上調査だけで半年以上の時間をかけています。プロジェクトの本格的な開始の前に、約3ヶ月のパイロットプロジェクトでも検証を行っています。その後、インフラ構築からアプリケーションの移行を3つのフェーズに分け、さらにSOAを取り入れたシステム構成での開発とSOAの考え方をビジネスに取り込むSOE(Service Oriented Enterprise)へと発展を計画しています。

梶山氏   製品としてはオープンソースのJEMS(JBoss Enterprise Middleware Suite)を採用されていますが、選定のポイントはどのような点ですか?

Michell氏   JEMSを構成する製品はライセンス費用が不要な点で商用製品に対するアドバンテージとなります。コストを下げられる点以外にも、各種のオープンソース製品をプラグインのような形で機能追加できるアーキテクチャもメリットです。そして他のオープンソース製品では用意されていない高い品質のサポートサービスが大きな決め手となりました。

オープンソースであるということは、仮に製品の開発元が無くなったとしても自分たちでソースコードを持つことで、ある程度の問題には対応していくことが可能となります。企業としてコミュニティのトップエンジニアを雇用することで、開発の方向性やバグの修正などに統制がとれます。企業ユースに向いたオープンソースになっているのもJBossの特徴です。

Jeff Michell氏 梶山氏   JEMSの利用にあたって問題はありましたか?

Michell氏   パイロットプロジェクトの期間や開発フェーズでは開発に一時的に支障となるような問題が出たこともあります。現在ではコンポーネントの設計の刷新や他のプロジェクトを買収することで品質が改善したようですが、当時はいくつかのコンポーネントで問題がありました。ですが、サポートに問い合わせると即座に問題箇所を修正するなどの対応をしてくれました。

梶山氏   最後に、オープンソース利用のメリットをユーザ企業の視点で分析してください。

Michell氏   最大のメリットは、ライセンス費用ではないコストの問題を解決できることにあります。ポイントは問題解決までの時間が短縮できるということです。ソースコードを見ることができるため、ユーザ側のエンジニアによる問題箇所の特定が非常にやりやすくなります。

  ソースコードが公開されていない商用ソフトウェアのサポート担当者とのやりとりは、エンジニアにとってフラストレーションが貯まります。すでにいくつかの解析作業を行ってから問い合わせても、1つ1つこれをやったか、あれをやったかと聞かれることがしばしばあります。

  問題はこの時間です。本番環境で問題が発生すれば、このやりとりの間にユーザは多くのコストを支払い、その上で顧客を失う可能性もあります。特に高いレベルのサポートサービスが提供されているオープンソースの採用は、この問題に対する最良の解決策であると考えています。


RedHat,Inc.
JBoss Division Product Management VP
Shaun Connolly

JBossの主力製品群であるJEMS(JBoss Enterprise Middleware Suite)のプロダクトマネージャを務める。SOAを実現する製品の開発戦略の策定の傍ら、ビジネスとITの連携やIT投資効率の向上をテーマとしたセミナーなどでの講演や記事の執筆を行っている。

RedHat,Inc. JBoss Division Product Management VP Shaun Connoll

Mizuho International
Lead Architect
Jeff Michell

英国ロンドンを拠点とするみずほフィナンシャルグループの証券・投資銀行であるみずほインターナショナル(Mizuho International plc)において、同社のEA(Enterprise Architecture)の設計ならびにシステム戦略の責任者を務める。現在は既存のEAI/BPM環境をオープンなSOAに移行するための活動を主導している。

Mizuho International Lead Architect Jeff Michell
野村総合研究所  情報技術本部 オープンソリューションセンター 副主任テクニカルエンジニア  梶山 隆輔

野村総合研究所
情報技術本部  オープンソリューションセンター
副主任テクニカルエンジニア
梶山 隆輔

OSSC(オープンソースソリューションセンター)においてマーケティング担当。同時に海外のオープンソース関連企業とのパートナーシップの構築や共同ビジネスの展開を推進している。

OpenStandia
http://www.nri-aitd.com/openstandia/

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第1回:JBossのキーマンが語る日本市場戦略
  RedHatによる買収から約半年経過したJBossの現状
  JBossのパートナー戦略とビジネスアプリケーション
JBossのSOAプラットフォームを用いたシステム基盤への取り組み例