— その両方の事業の発展に向けて、2007年はどのような取り組みをしていくのでしょうか
漆原氏:コンサルティング事業(KBS事業)は人材の実力がものをいう仕事ですので、コンサルタントの採用と教育をきっちりと行うことが最大の課題です。先ほども述べましたが特に最近はリピーターのお客様が増えてきているので、ここをしっかりとつなぎとめる意味でも、優れた人材の確保と育成は必須の課題であると捉えています。
もう一方のソリューションの開発・販売(PBS事業)は、まだはじまったばかりですので、中長期的な視点で大きく育てていきたいと考えています。また製品販売にあたっては提携パートナーである各社の力を借りて、市場を拡大する必要があります。とりわけ「UMLaut/J-XML」のターゲットである流通業界では、20年ぶりのビッグバンが生まれていることもあり、これをきっかけに飛躍的な成長を遂げたいと願っています。
当社では中長期的なビジョンの目安として「2010年像」を掲げています。これを数字であらわすと「事業規模50億円/経常利益10億円」です。
とはいえ、数字だけを目標にしているのではありません。むしろ、堅実な売り上げと余裕のある利益構造によって、人材がいたずらに疲弊することのない経営を確立することが真の目標です。
本当に優れたものや本当にお客様に喜んでいただけるものを生み出す体制づくりには、社員が創造性とやりがいを感じられることが不可欠だと考えます。お金という利益の論理だけで追求していくと、必ず行き詰まりをみせ、おかしなことになってしまいますから。
— 社員がいきいきと仕事ができる環境づくりというのは、経営者のポリシーとしては大変重要ですね
漆原氏:ITソリューションビジネスにありがちな、「デフレ構造」に落ちていきたくないというのが理由です。
利益や規模だけを求めていくと、どうしても価格競争に巻き込まれていきます。その結果、開発の現場は人月あたりのコスト圧縮ばかりを求められ、いくらよい仕事をしてもその対価である価格は下がっていくというのがデフレ構造です。
当社ではこうした消耗戦に巻き込まれないために、大手へのアンチテーゼ、つまり大手企業がやらないことをやろうと考えました。その成果が、現在の「発注者側に立ったコンサルティング」というスタイルなのです。
当社のコンサルティングは、「ソリューションの受注側」ではなく、発注者であるお客様の側にスタンスを置くという、他に例のないものです。つまり、企業が必要とするシステムと、それを開発するITベンダーの間に立って、お客様の視点から本当に役立つシステムを作り出すことが私たちのミッションです。
ITソリューション導入プロジェクトのほとんどは、「ユーザ企業 vs ITベンダー」という対立図式が描かれることになります。
ユーザは自社の希望するシステムをITベンダーに伝え、ITベンダーはそれを実際のシステムに組み上げていきます。しかし、これが幸せな結果になるケースは稀です。むしろ多くのユーザは自社の思い描いたシステムと現実とのギャップに不満や疑問を抱くことが少なくありません。「いくら要望をいっても理解されず、コストばかりがかさむ」という不信感が増すばかりで、本当にユーザの役に立つシステムは実現されないままなのです。
こうした不幸な現状を打ち破るためには、一般企業ユーザの意向を正確に理解し、システム構築要件として最適化した上でベンダーに伝え、開発を監督するITのプロフェッショナルが必要なのです。
例えてみれば、ユーザとIT技術者とをつなぐ「橋渡し役」という役割ですね。こうしたお客様のビジネスとITのギャップを埋める知恵を提供するという独自のスタンスが認められ、コンサルティング事業は当社の主軸として、社内の人材の成長とともに着実に伸びてきたのです。
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