— ユーザ側の利益に立ったコンサルティングというのは、独立系のコンサルティング会社ならではのスタンスですね
漆原氏:私自身がメーカーの技術者だった頃は、やはり売らなくてはならないからという理由で働いてきた経験があります。しかし、そうした中で常に「ITを導入する側と売る側のギャップ」に悩んできました。
そもそもウルシステムズを立ち上げた動機も、技術者として本当にユーザの役に立つシステムを提供するには、売る側の利害を離れてお客様の側に立てる場所を自ら作るしかないと考えたからなのです。
— では、お客様のために本当に役に立てるエンジニアになるには、どんなことが必要でしょうか
漆原氏:まず、「ITを作り上げることではなく、その結果にこだわること」ですね。
ほとんどの技術者は自分の専門パートをきちんと仕上げれば仕事は完成したと思いがちです。これは、実装をするエンジニアだけではありません。システムインテグレータやコンサルタントも同じ傾向があります。
しかし、いくら見事な設計書や凝ったシステムであっても、お客様の関心はあくまでその結果としてもたらされるビジネスにあるのです。つまりスタートラインですでに両者にズレが生じているのです。
だから、エンジニアはシステムを作ることだけに熱中するのでなく、それがどのように使われて、どのような成果をユーザにもたらしたかを常に意識することが必要だと考えます。
次に大事なのは、「2次請けや孫請けをやめる」ことです。本当にお客様にとって使えるシステムを作ろうと思ったら、お客様と直接話さなければダメです。それには相手のところに行ける立場にいなくてはなりません。
「でもそういう立場ではないから」というかもしれませんが、お客様と話せる場所にいないなら、話せるところまで行く方法を考えればいいんです。環境のせいにしていても、何もはじまりません。
まず先方に自ら足を運び、そこでお客様と共有できるものが得られたら、必ずいいものが作れますよ。そこでお客様のビジネスにメリットを提供することができたら、それが成果です。
また最近は上流工程の方が高級だというような意識で上流に行きたがる人も多いですが、お客様の信頼を得られているなら一介の現場エンジニアだってよいのではないでしょうか。
お客様が本当に心を開いて悩みや要望を打ち明けてくれ、それに自分の技術で応えていけるのは、技術者冥利に尽きる幸福なことだと思いますし、信頼を得ているエンジニアだからこそ、次のステップにつながると考えます。その点はエンジニアとして、忘れてはいけない点ではないでしょうか。
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