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インフラ構築
後悔しないためのインフラ構築の勘所
〜パッケージアプリケーション導入編〜

第3回:パッケージアプリケーションの将来性を見据えたインフラの選定ポイント

著者:日本アイ・ビー・エム  菅野 博貴   2007/4/4
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可用性

   一言で可用性といってもその適用箇所や適用レベルは様々である。例えば、まずはアプリケーション単位での可用性が考えられる。とはいうものの、基幹システムのようなミッションクリティカルなパッケージアプリケーションと、2〜3日停止しても影響の少ないアプリケーションとでは考え方が異なる。そしてインフラの構成単位でも検討が必要だ。サーバ、ストレージ、ネットワーク、DBMSなどがあげられる。

   可用性を持たせる手法も、その適用レベルによって多種多様である。ここではサーバとストレージについて例をあげる。

   サーバの場合、サーバソフトウェアを使用してわずかの切り替え時間での復旧を可能にする構成もあれば、サーバをもう1セット用意しておき、ある程度時間を要して手動で切り替えるコールドスタンバイ構成にすることもある。または、単純に複数サーバで冗長構成にして並列処理をさせるのも可用性を向上するの1つの手法だ。

   このように様々な手法があるが、使用するアプリケーションの使用方法や対応状況、クリティカル度の考慮も忘れてはならない。

   次にストレージ(データ)の場合、テープやDVDメディアなどへの定期的なバックアップを取得するのみという最低限の手法もあれば、ディスク装置内で瞬時にデータをコピーする機能を用いてデータ二重化をはかるということも考えられる。将来のデータ量見積もりとの兼ね合いはもちろん、バックアップウィンドウをどれだけ確保できるかといった運用要件にも大きく依存しているため、これらも含めた検討が必要となる。

   また重要な点を1つ補足すると、いずれの手法であれ、どれだけの規模のシステムであれ、事前のインフラ検証テストは欠かせない。サーバの例では切り替えテスト、ストレージの例ではバックアップデータを使用したリカバリーテストなどを運用前に実施する必要がある。

   これらを怠ると、いざ本番で切り替えやリストアしようとした際に、想定した形で復旧できる保障はない。せっかく非機能要件に目を向け、可用性を兼ね備えたインフラ選定をしても、実際には宝の持ちぐされとなってしまうのである。

性能

   実運用の中で、エンドユーザレベルで「早い」「遅い」というコメントは多数聞かれるが、では実際にレスポンスタイムはどういう状況なのか、そして目標はどの程度だったのかという視点は、意外と思われるが、実は検討から外れていたということが多い。目安の要件として例えば約n秒程度といった指針があるとよいだろう。

   この指針の裏づけとしては、机上の計算値だけでなく、本番運用前に本番運用に近い形で負荷テストを実施し、インフラのリソース状況のデータを取得/分析するのが確実であり、推奨される。既存アプリケーションの機能拡張や使用ユーザの増加といった場合には、現行のシステム負荷状況を監視し、情報収集することでも指針を打ち出せるだろう。

   これらはキャパシティプランにも直結するところである。キャパシティプランのポイントについては、「第2回:パッケージアプリケーションを支えるインフラの重要性」の文章を参照いただきたい。


拡張性

   インフラの検討段階(キャパシティプラン)において、最低限のリソースでインフラの構築を考えず、通常はある程度の余裕をみたうえでリソースを確保しているだろう。しかし、より将来を見据えた検討を重ねれば、自ずと余裕度の枠を超えた拡張性の必要性が見えてくるはずである。

   将来を見据えた検討の例としては、次の項目があげられる(表2)。

  • 業績の成長に伴うトランザクション量の増加
  • パッケージアプリケーションの標準機能に追加する機能
  • パッケージアプリケーション自体のバージョンアップ
  • 「基幹系 → 分析系 → 戦略系」といったパッケージ導入スコープの拡大

表2:将来のインフラの検討項目の例

これらは経営戦略的な側面も検討材料に含め、そしてそれらを具体的にインフラのどの部分へ反映させるかをキャパシティプランの中で落とし込んでいくのがよいだろう。それにあたっては、図2のような拡張後の具体的なインフライメージを作っておきたい。

将来を見据えた拡張性検討要素
図2:将来を見据えた拡張性検討要素

   インフラに関するアーキテクチャの開発・発展がめざましく加速している中で、「拡張性はいらない、必要になったら最新アーキテクチャの機器を買う」という割り切った選択肢もある。しかし、入れ替え後の既存インフラの有効利用のプランが事前に検討されていなければ、効率的なインフラ運用は難しい。

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日本アイ・ビー・エム株式会社 菅野 博貴
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社
菅野 博貴

2001年、日本アイ・ビー・エムに入社。入社当初よりISVパッケージのテクニカルサポートに従事。インフラ提案に日々東奔西走中。経営イノベーショングローバルISVソリューションズ所属。


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第3回:パッケージアプリケーションの将来性を見据えたインフラの選定ポイント
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