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たかはしもとのぶの「はじめてのオープンソース」

第10回:歴史から知るオープンソースの心

著者:たかはしもとのぶ   2008/04/16
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フリーソフトウェアのフリーって?

もとのぶ先生 もとのぶ先生    さて、FSFのWebサイトを見てみよう。FSFによるフリーソフトウェアの定義は「英語版」「日本語版」の両方で読むことができるけど、"Free"の意味は、無料よりも、自由(freedom)であることにポイントがあることが述べられているのがわかるね。

また、ストールマンが2007年に来日したときの講演内容でも、日本語は「無料」と「自由」という違う単語でFreeが表現できるのだから「自由なソフト(ウェア)」と言ってほしいと発言しているよ。
森君 森君    自由なソフトのことはよくわかりました。でも、まだオープンソースは出てこないんですか?
若宮さん 若宮さん    そろそろですよ。先ほど、森君はストールマン氏の自由なソフトウェアに対する哲学を肯定的にとらえましたね。

実際、当時主流だったMS-DOSというOSでは、いろんな人が趣味でソフトを作っては無償で公開していました。fdとかよく使ってましたね。

しかし、ストールマン氏の指摘のように、英語ではFreeの区別が明確でないため「Free=無償」とだけ認識し、フリーソフトウェアはビジネスにならないと否定的に考えた人がいました。

また、FSFと相いれない考え、つまりソースコードに触れられず、実行ファイルだけ提供されている、改変できない、再配布できないなどの制限を加えたソフトウェア、いわゆる「プロプライエタリ・ソフトウェア」と呼ばれるものですが、こうしたソフトウェアでビジネスやさまざまな活動を行うグループへのFSFの発言や行動が「ちょっと…」と言う印象を強烈に与えてしまったのです。

そのせいで、FSFの主張そのものが否定的に解釈されるという皮肉な結果をもたらし、自由なソフトウェアのイメージダウンにつながったのです。
森君 森君    で、その否定的なイメージ払拭のために、新語を作ったんですか?
もとのぶ先生 もとのぶ先生    だいたい、そんな感じかな。「真のプログラマたちの回帰」に、その辺のことが載っているけど、「オープンソース」という新しい言葉によって、フリーソフトウェアの再ブランド化を図ったんだ。
森君 森君    でも、主義主張はまったく変わってないんでしょう?ストールマンが定義するフリーソフトウェアはオープンソースなんでしょう?
もとのぶ先生 もとのぶ先生    「オープンソースの定義」を見てみよう。FSFが定義するフリーソフトウェアとは違うよね。オープンソースでは、ビジネスも視野に入れた。

GPLは、オープンソースの定義を満たしているけど、FSFは、オープンソースの定義からは肝心の自由という思想が失われていると考えている。それは、GPLが「コピーレフト(自由なソフトウェアは、著作者の手を離れたあとも自由であり続ける)」という概念に基づいているけど、オープンソースではコピーレフトである必要がないことからもわかるんだ。
図2:フリーソフトウェアとオープンソースソフトウェアの違い

もとのぶ先生 もとのぶ先生    インターネットがはやりだしたのっていつごろか知ってるかな。
森君 森君    うーん、10年くらい前…かなぁ?
もとのぶ先生 もとのぶ先生    そうそう。

そのころから一般の人もインターネットにつなぐようになってきたんだ。

ところで、インターネットのWebサイトとかメールのソフトというのは、今でもOSSが多いけど、当時はほぼ100%がUNIX上で動作するOSSだったんだ。

インターネット上でいろいろな有料のサービスが提供されるようになったんだけど、その基盤を支えていたのは、「フリーソフトウェア」であるOSSだった。
森君 森君    ということは、OSSもビジネスに使えるのでは?ってことですか。
もとのぶ先生 もとのぶ先生    そういうことかな。

1999年ごろから「オープンソース・バブル」と呼ばれる現象が始まって、オープンソースをビジネスに採り入れるということ自体が一種のトレンドになった。

最近では、オープンソース・バブルは落ち着いたけど、これはOSSを使おうっていう機運が沈んだ訳じゃなくて、むしろ使うこと自体はあたりまえになって、わざわざ大騒ぎするほどのことではなくなっちゃった、っていうところかな。
森君 森君    そういうことだったんですか。OSSという言葉、いまは普通に使ってますけど、色んな経緯があったんですね。
表1:関連サイト一覧
表1:関連サイト一覧
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

若宮さん 若宮さん    そうですね。金子さんが信奉している「すとーるまんさま」をはじめ、いろんな人の努力があって、今のOSSがあるってことですね。
森君 森君    …うーん、やっぱりどこかから、金子さんの気配を感じる。あ゛ーっ、わかったぁ、テレビ会議システムだっ!もしかして、回線がずっとつながりっぱなしだったとかー?でも、声は聞こえない…というか、かすかに聞こえる!?
もとのぶ先生 もとのぶ先生    音量は?
森君 森君    あ、音声がボリューム0になってました。今直します。
金子さん    森く〜〜ん、
森君 森君    すみません。音量0だったんで、金子さんの声、全然聞こえま…
金子さん    ちょっとわたしが目を離したスキに、すとーるまんさまの尊厳を汚すようなことをするなんて!すとーるまんさまはいつもわたしたちのそばにおられ、愛と自由をふりまいてくださるの。だから、すとーるまんさまを信じてゆきなさい。
森君 森君    ゆくって、どこへ?
金子さん    すとーるまんさまと、おーぷんそーすを広めにゆくに決まってるでしょ。とりあえず、1年間勉強したんだから、そろそろ教わる側からは卒業しなさい。
森君 森君    は、はい。(すとーるまんさまはともかくとして)実は今、OB訪問用の資料を作っているところでした。で、自分の部署のことを説明する部分があるので、ほら、こんな風に書いてます(と言って、画面に向かって手書きのメモを見せる)。
金子さん    (怒)あんたねー、それじゃあ、どう見たって、わたしが人間じゃないじゃないっ!ちょっと、若宮さん、こんなの持って行かせたら、帰国したときにどうなるかわかってるでしょうねー!
若宮さん 若宮さん    え、だって金子さんは、ストールマン氏をゲットするから帰国するつもりないっておっしゃってたじゃないですか。それに、これを見る限り、森君の観察眼はたいしたものですよ、いやぁ、こういう才能があるって今はじめて知りましたぁ。うちの部署に連れて帰りたいなぁ。
金子さん    ひ、ひどーい!!!!!大型連休には一度帰国するつもりだから、そのときは、そのときは、そのとき…(ぶつっ)
森君 森君    あ、切れちゃいましたね(と、LANケーブルを握りながらニコニコする)。
もとのぶ先生 もとのぶ先生    そういう手がありましたか。森君もだいぶ成長しましたね。
若宮さん 若宮さん    そうですねぇ、最初はどうなるかと思いましたけど、これなら今年以降も大丈夫そうです。あんしん、あんしん。
森君 森君    あ、1年間、僕を応援してくださったみなさん、ありがとうございました。どうやら、おふたりからは社会人1年目は合格点をいただけたようなので、2年目もさらにがんばりまーす。
もとのぶ先生 若宮さん 森君 もとのぶ先生・若宮さん・森君    それでは、またいつかお会いする日まで!
青井部長 青井部長    (しくしく、最終回なのに、出番がなかったよー。)
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たかはしもとのぶ
著者プロフィール
たかはしもとのぶ(高橋基信)
1970年生まれ。1993年早稲田大学第一文学部哲学科卒。同年NTTデータ通信株式会社(現:株式会社NTTデータ)に入社。
クライアント・サーバシステム全般に関する技術支援業務を長く勤める。UNIX・Windows等のプラットフォームやインターネットなどを中心とした技術支援業務を行なう中で、接点ともいうべきMicrosoftネットワークに関する造詣を深める。
現在は「日本Sambaユーザ会」スタッフなどを務め、オープンソース、Microsoft双方のコミュニティ活動に関わるとともに、各種雑誌への記事執筆や、講演などの活動を行なっている。


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