話者:まつもとゆきひろ 2007/9/19
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Rubyのパパは世の中の要求に応えていく
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— 今後の展開はどのようになっていくのでしょうか
まつもと氏:Rubyがビジネスの領域にまで使われるようになってきたというのは、ほんとに予想していませんでした。正直なところ、大規模チームで開発することというのは、気にしていません。「そんなの向いてないに決まっている」ので(笑)。
ただし、大きなアクセスや大きなデータを扱うところでもRubyが使われるようになってきているという現実があり、それに対して何らかの手を打ちたい、技術を確立させたいという思いはあります。
そのために、Rubyというプログラム言語とその処理系で実現するのか、あるいは周辺技術を充実させることで実現するのかについては、まだわからない部分もあります。これはたぶん両方が必要で、今後考えていく課題であると思っています。
これに関しては、今年の6月から楽天にフェローという形で参加していることが大きく影響しています。楽天はすごく大きなデータ、例えばログだけで何テラバイトにもあるようなものを抱えています。それをきちんと扱えるようにする必要があるということです。
また、一般的なパソコンのCPUでもDual Coreが珍しくなくなってきました。これからコア数がどんどん増えていく中で、それを上手に活用する方法についても長いスパンで考えていかないといけないと思っています。
この「大きなデータ」と「複数コアのCPU」のどちらも、キーワードは「スケーラビリティ」です。これはRuby会議(注1)でも話したことですが、今後はスケーラビリティが大きなキーワードになると考えています。
ただ、これらは僕自身が興味があるテーマではないんですよ、正直。でも世の中の要求はそういうものであり、開発者として対応していく責任があると思っています。技術的に面白いところでもあるし、手伝ってくださる方がたくさんいらっしゃるので、そこは「Rubyのお父さん」としてオーガナイズしていこうかなと思います。
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まつもと氏一問一答?
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— 普段読む本は
まつもと氏:最近はWebサイトで全部済ませているので、本は読まないです。
もともとSFがすごく好きで、中でも一番インパクトを受けたのはE・E・スミスの「レンズマン」と「宇宙のスカイラーク」です。後は「バブル17」というサミュエル・R・ディレイニーの作品ですね。これは言語という僕がもともと若いころから興味があったテーマと宇宙というテーマのジョイントだったので非常に好きでした。高校生の時に読んだんだものですが。
— 座右の銘は
まつもと氏:座右の銘ですか、えっとすでに「名前重要」って書いてあるんですけれど(笑)(注:インタビュー用紙に「名前重要」と書いてあった)
後は「手段のためには目的を選ばない」とか「楽をする為にはどんな苦労も厭わない」とか、そんな感じのポリシーを持っています。
— 尊敬する人は
まつもと氏:Larry Wallの「しゃべってプログラムできる言語プログラマ」に憧れます。実は今日の講演も彼のマネをしていたんですよ。彼はシャイなんだけど、すごく面白い話をします。それを理想にして、がんばりたいと思います。
— Rubyを一言でいうと
まつもと氏:一言ですか……、「うちの子の1人」とかそんな感じですね。「子供」っぽいですね。責任もたないといけないような気がするし、「あの子は独り立ちしましたから」といえずに「しょうがないな、なにかしてやらなきゃ」と常に思っています。
— そういう意味での「Rubyのパパ」ですか?
まつもと氏:パパですね(笑)。
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株式会社ネットワーク応用通信研究所 まつもと ゆきひろ
楽天 技術研究所 フェロー 鳥取県出身、島根県在住。本人は「当たり前」のつもりでオブジェクト指向やらプログラミング言語と20年以上も戯れていたら、いつのまにやら、日本を代表するオープンソースプログラマだったり言語オタクと見なされてしまっている、らしい。3女1男のお父さんだったりもする。
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