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キーパーソンインタビュー
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話者:きっとエイエスピー 松田 利夫
2007/10/5
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あるものを使うのか自分で作るのか
— 今回提供されているプラットフォームは、どのような構成になっているのでしょうか
松田氏:
プラットフォームを構成する要素技術はすべて既存のものを手に入れ、それを組み合わせることでアイデアを実現しています。
サービス販売管理(KitASP Service Delivery Network)
アプリケーション統合管理(Pivot Path)
インターオペラビリティ(SOA/ESB、データ変換サービス)
プレゼンテーション仮想化(GO-Global)
アプリケーション仮想化(AppStream、Altiris SVS)
オペレーティングシステム仮想化(Virtuozzo)
ハードウェア仮想化(VMware)
仮想化セキュアシンクライアント
仮想化アプライアンス、ネットワーク、ファイルサーバ
分散ファイルシステム
インターネットプリンティング
表2:構成する機能と要素技術
これらの技術を組み合わせることで、ベンダー側でインターオペラビリティ(相互接続性)を考えなくても、プラットフォーム側で対応できるのです。またベンダー側でインターオペラビリティを用意している場合は、それも使える環境を用意しています。何かを排除するのではなく、すべてを使えるようなプラットフォームを目指しているのです。
我々はプラットフォームを提供する側なので、その上で動作するアプリケーション同士をどのように接続するかはベンダーにお任せしています。各ベンダーそれぞれが選んだ技術を採用できる環境であり、もし接続のための技術やアイデアがなければそれを提供できる仕組みも用意しておく、ということです。
— 自社開発で接続部分を作られるケースは多いのでしょうか
松田氏:
日本の技術者は、その傾向が強いように思います。あるアイデアがすでに実現されていても、プログラム同士がタイトな結びつきを得られるようなものを開発されるケースが多いですね。しかし海外などではアプリケーション同士をルーズにカップリングするアプローチが増えてきています。これはそういったプロダクトやソリューションをみつけ、それを組み合わせていけばよい、という考え方です。
— それは事前にテストなどをして、組み合わせを検討するのでしょうか
松田氏:
いえ、すごく単純に「ソフトは動かせばいい」という考えで、実際にあるものを動作させて品質やスピードを確かめます。動けばそれを採用し、動かなければ使わない、ということです。そういう意味ではSaaSも同様です。機能やスペックをリサーチする対象ではなく、現実のものである必要があります。これは厳しい考え方ですけれど、ネットのビジネスは基本的に淘汰のビジネスだと思っています。
技術やユーザ、サービスがそれぞれマーケットの論理で淘汰されていくものです。現在の日本におけるSaaSは、ベンダーとユーザがくっきり分かれています。ベンダーはベンダーで、ユーザはユーザで選ぶものがあるのですが、今はまだユーザのロジックは動いていない段階です。ユーザのロジックをみるためには、実はマーケットに出すしかないと考えています。
SaaSはITのビジネスではない
— 今後のSaaSの課題として、ネットワークに依存することへの不安があると思いますが、この点についてどのようにお考えですか
松田氏:
それは難しい質問ですね。例えばNGNのようにQoSを確保するけれども閉じたネットワークにするか、オープンなんだけれど不安要素を残すか、といったものがあります。この点についても、最終的にはマーケットが淘汰すると思っています。
英ブリティッシュテレコム(BT)に代表されるように、今キャリアがSaaSに進出しています。個人的には100%とはいえませんが、SaaSは「キャリアが行うビジネスになる」という可能性が高いと思っています。キャリアないしはISP、企業グループのデータセンター、といったものがSaaSのポジションになっていく。そう考えると「SaaSをITビジネスとして考えていいのか」という疑問を持つようになりました。SaaSが使っている技術はITですが、そこで提供される「アプリケーションを使う」という行為そのものはITではないのです。
「SaaSはITビジネスではない」と割り切っていえるのならば、その先には非常に面白い見方ができるようになるかもしれません。ITインフラを考えなくてよく、その用途を考えればよい環境ができれば、様々なビジネスがSaaSとして立ち上がるでしょう。
技術が露出している状態というのは、ユーザは本質的ではない部分を見せられているわけです。それは「サービスでありアプリケーションを使うだけでいたい」というユーザにとっては不幸なことでしょう。ITという技術がインフラ化し、表面から隠れていくほどユーザは幸せになるに違いありません。
例えばアプリケーションのインストールやウイルスチェックは非常に面倒な作業です。もしそういったことが必要なければ、本来ユーザがやりたかったことに専念できるようになります。SaaSはその流れを良い方向にドライブするかもしれません。
SaaSならば、そういった面倒な作業を廃して純粋にアプリケーションを使うことができます。そのためには、今のネットワークのようにSaaSの中でそれぞれの役割をするレイヤーに分け、SaaSを提供できるプラットフォームであり社会インフラとしていくことが重要でしょう。
株式会社きっとエイエスピー
代表取締役社長
松田 利夫
きっとエイエスピーの代表取締役社長でCSAJのSaaS研究会メンバー
http://www.kitasp.com/
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