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協力会社の評価管理
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第1回でもお話ししたようにPMBOKがプロジェクトの立上げから終結までを管理対象とするのに対し、PYRAMIDの基本的な考え方は継続的改善です。PDCAサイクルをまわしながらプロジェクト管理能力を強化して行く発想なので、契約完了までは終わりません。例えば以前紹介したPYRAMIDの管理ツール「質問管理システム」や「障害管理システム」は、協力会社も参加できるような仕組みになっています。付与したIDとパスワードでWebサイト経由でログインし、質問や障害などの情報を双方から書き込み共有します。これらのコミュニケーション情報はデータベースに履歴保存され、いつでも検索できますので、議事の発言を確認できないことや、質問に対する対策漏れなどを防ぐことができます。
PYRAMIDでは、プロジェクト終結時点で協力会社の仕事ぶりを評価し、その情報を次のプロジェクトの調達管理に有効活用できるようにしています。以前紹介したように、弊社ではプロジェクトが終了した時点でレビューを行い、「プロジェクト完了報告書」を作成・提出するルールになっています。その際に、図1のような協力会社の評価管理シートにも記入します。これは組織全体で協力会社の評価管理を行う目的のもので、次のプロジェクト発足時に調達を行うための重要なデータベースになります。
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図1:PYRAMIDの協力会社評価管理表 (画像をクリックするとEXCELファイルをダウンロードできます。/19KB)
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図1には、いつ、どの、プロジェクトでどんな仕事をしてもらったか、その評価や再度仕事をしてもらいたいと思うか、などの情報を記入されます。記入の単位は、請負ベースの場合は会社単位、派遣ベースの場合は個人単位が基本です。このような情報を組織全体でデータベース化しておくことにより、次のプロジェクト発足時に役立てることができるのです。
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当たり前と言い放つ前に
プロジェクト管理に関する話は、全て当たり前のことばかりなので、正直なところ「そんなこと知っているよ」という感想を持つでしょう。「飲み過ぎは身体に悪い」とか「夜更かしはやめましょう」などと言うのと一緒です。でも、その当たり前をみんな実践できていないことが深刻な問題なのです。
現代のサッカーは個人技だけでは試合に勝てません。組織的な連携プレーができなければ、ワールドカップで勝ち残れない時代になっています。現代のIT業も同じです。個人の技術レベルだけでは、がんばってもプロジェクトの成功につながらないのです。若いうちは、全体のことよりも個人の技術を磨くことに興味があります。しかし、プロジェクト管理がきちんとなされているかは、結局は自分の仕事効率にも関る問題です。「上がやってくれない」、「プロジェクト管理がめちゃめちゃだ」と批判しているだけでは、一生懸命仕事をしてもトータルの生産性があがりません。
プロジェクト管理の基本は改善提案です。問題があるようなら、自ら手を上げて改善を訴えかけてください。効率良く仕事をしたいという目的は上も下も一緒です。提案内容が良く、説得力があれば、きっと受け入れられると思います。
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まとめ
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PMBOKはプロジェクト管理におけるノウハウの整理という点では良くできていると思います。しかし、これを現場で使うためには、実践レベルまで落とすためのツールが必要です。そのため、弊社ではプロジェクト管理手法「PYRAMID」を作成し、全てのプロジェクトで利用しています。連載の中では、これらの管理テンプレートを具体的例として紹介し、プロジェクト管理力を強化するポイントをお伝えしました。企業により実践の方法は異なると思いますが、これらの手法やツールが皆さんのプロジェクトに少しでもお役に立てば幸いです。
日本のIT業界の将来は、プロジェクト管理力にあると信じています。今は世界的に見て劣勢ですが、日本の強さはプロジェクト管理と言われるように、一緒にがんばっていきましょう。
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著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ 梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経て1995年にシステムインテグレータ社を設立。
常駐・派遣主体の労働集約的な日本のソフトウェア業の中で、創造性にこだわってパッケージビジネスを行っている。
国際競争力のない日本のIT産業が、ここから巻き返しを図るための切り札は「プロジェクト管理」だと信じ、実践的なプロジェクト管理手法「PYRAMID」を自社開発している。
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