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格付け問題
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後日、ミーティングが行われると唐突に、「このオープンソースのDBに関連するコミュニティとやらの格付けってどうですか」とH部長からの質問がありました。「格付け?」最初は何に対する質問かと思ってとまどってしまいましたが、S&PやMoody'sと呼ばれる格付け会社が付与する企業への財務信頼性を示す格付けのランクのことを聞いているということが理解できました。
コミュニティへ格付けが付与されているかどうかもわからないために、その場の答えに窮してしまった格好となりましたが、何故そのような質問をすることになったかという真意を確認してみました。その答えから察すると、オープンソースのDBの信頼性を開発しているコミュニティの財務信頼性に置き換えて評価しようとしているようでした。
財務部門出身者としてサポートの存続可能性を財務の視点からはかろうとしており、サポートがなくなることをもっとも恐れているということはわかりました。ただコミュニティという性質上、多額の資金調達をはかる必要はほとんどなく、わざわざ財務格付けを取る必要はありません。おそらく、同じ質問を商用DBのベンダーにもしたうえで比較しようとしているのだろうと容易に想像できました。
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AAA |
債務履行の確実性が最も高い。 |
AA |
債務履行の確実性は非常に高い。 |
A |
債務履行の確実性は高い。 |
BBB |
債務履行の確実性は認められるが、上位等級に比べて、将来、債務履行の確実性が低下する可能性がある。 |
BB |
債務履行に当面問題はないが、将来まで確実であるとは言えない。 |
B |
債務履行の確実性に乏しく、懸念される要素がある。 |
CCC |
現在においても不安な要素があり、債務不履行に陥る危険性がある。 |
CC |
債務不履行に陥る危険性が高い。 |
C |
債務不履行に陥る危険性が極めて高い。 |
D |
債務不履行に陥っている。 |
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オープンソースを活用する場合、ユーザ企業のメリットとしてあげられるのは次のことだと思います。
- ライセンス料が無料
- オープンソースなのでユーザ企業自身でのメンテナンス・サポートが可能
表2:オープンソースを活用するユーザ企業のメリット
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ただ当時のA製鉄に限っていえば、表2の1のみを追求していて2については考慮していない状況でした。むしろ、2をユーザ企業のかわりに行ってくれるベンダーを望んでいました。
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オープンソースソフトウェアの普及へ向けて
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再度オープンソースのDBの有用性や今後の発展性をアピールをしましたが、「3年後にまた検討します」とのH部長の一言により、結局この話はお蔵入りとなりました。この時の寂寥感を忘れずに今でも心して営業をしています。ただ、これがほんの数年前のユーザ企業のオープンソースへの見方だったのです。
今でこそオープンソースのDBは商用のDBをしのぐ勢いで普及しており、ユーザ企業やSIerの中でも一般的なものとして扱われています。ユーザ企業側においてオープンソースという言葉自体への抵抗感は薄れましたが、個別のオープンソースソフトウェアに対する実際のアプローチには慎重なものがあります。
今後も各種オープンソースソフトウェアを積極的にユーザ企業に紹介していく必要があると思います。当社ではこの時の苦い経験もありますので、オープンソースに関する調査活動の成果の公開を通じて、ユーザ企業へのオープンソースソフトウェアの普及を促しています。
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著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ 高橋 明
早稲田大学商学部卒業。大学卒業後日興コーディアル証券にてリテール、法人営業を行う。その後ビーブレイクシステムズの設立に参画し、現在に至る。専門は会計システムに関するコンサルティングセールス。
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