TOPプロジェクト管理> 中規模ERPパッケージの導入検討
オープンソース営業心得
オープンソース営業心得〜営業とはなにか

第2回:小規模会計システムの存続と中規模ERPの導入
著者:ビーブレイクシステムズ  高橋 明   2005/12/9
前のページ  1  2   3  次のページ
中規模ERPパッケージの導入検討

   一通り質問が終わると、「申し遅れましたが、MコンサルティングのWと申します」と名刺を差し出されました。名刺の所属部署には経営企画室とあり、想像していた技術系の部署とは違うため、これは商談に発展するのではないかという予感を感じました。

   このセミナーのターゲット顧客は上場直前・直後の企業でした。このような企業では情報システム部を持つほどの企業規模ではなく、導入しているシステムも小規模の会計システムのみという状況が多いのです。

   そういった事情もあり、会計システムを導入するときに検討に携わった経理部の方が他システムの導入の検討を行います。また、上場準備期になると社内の管理体制を整える必要があるため、経営企画に関する部署が設立され、その部署の方が検討を行うケースも多いです。

   W氏は名刺を差し出した後、「現在、ERPパッケージの導入を検討しています。ただ、既存の会計システムと連携できる管理会計の仕組みがあれば、そちらも検討したいと考えています」と話を続けました。

   質疑応答を繰り返した後、後日にMコンサルティングの他メンバーの方に商品説明およびデモをして欲しいとの依頼を受けました。それを受けて、セミナー終了後にW氏よりヒアリングした内容を当社の会計コンサルタントと話し合ったところ、「現状の会計システムだと数年後にデータ量があふれてしまう可能性がある。この場合だと管理会計だけではなく、会計システムの入れ換えも検討した方がよい」との見解でした。

会計パッケージ メリット デメリット
小規模
  • 操作が簡単
  • データの修正が容易
  • スタンドアロンのPCソフトでユーザは1人
  • データ量に制限あり
中規模
(ERPの1モジュールとしての会計)
  • DBMSで管理されており、中規模企業のデータ量に対応
  • 複数の人が操作できる
  • 外貨機能、多言語機能などがない
大規模
(ERPの1モジュールとしての会計)
  • 大規模データに対応
  • 世界中の会計システムに対応
  • 操作が複雑
  • 非常に高機能なため、オーバースペックになる可能性あり

表:会計パッケージの規模別のメリット・デメリット

   今回の場合、Mコンサルティングは上記表の小規模な会計パッケージを使用していました。そこで、規模を拡大していく上で中規模な会計パッケージを導入するか、小規模な会計システムを使い続けたまま管理会計システムの導入をするかで悩んでいました。

   ただMコンサルティングの要望としては、できる限り少ないコストで管理体制を構築することを目的としていたので、当社としては既存の会計システムを使って管理会計システムの導入する方針で提案を行うこととしました。

顧客の検討状況
図:顧客の検討状況
   また、導入する管理会計システムの稼働環境にLinuxやPostgreSQLといったオープンソースソフトウェアを用いることで、より導入コストを削減できる提案としました。


既存システムを継続させる提案

   後日Mコンサルティングを訪問し、部屋に通されるとプロジェクトオーナーとおぼしき人物が登場しました。「はじめまして。経営企画室長のTと申します。本日はよろしくお願いします」と、かっちりとしたビジネススタイルをした中年の方が迎えてくれました。W氏と風貌が大きく異なり、またいよいよ具体的な提案を行うとあって、出席メンバー全員に緊張感が走りました。

   席に着くと、「当社は来年後半には上場を行う予定です。それに合わせて管理体制を整備するために管理会計システムの導入を検討しています」とT氏は話を切り出しました。

   他のセミナー参加企業同様に上場を検討しており、それに合わせた管理体制の構築の一環としてシステムの導入を検討している様子です。そして、「お恥ずかしい話ですが、当社においてはいまだ証憑書類(注1)に基づく正確な売上計上が行われていません」とT氏は問題点を提示し、話は続きました。

※注1: 注文書・納品書などで、取引の内容を明らかにする立証資料

   一般的に上場を目指す企業は、営業重視で売上を上げるための行為に熱心になりがちなため、管理業務がおろそかになりやすい傾向があります。また特にMコンサルティングの場合は営業の意見が通りやすい環境であるため、管理部が営業部に「売上計上時には必ず証憑が必要です」といくら説明しても、売上計上に必要な証憑の提出が営業スタッフよりなかなかされないようです。

   こういったことから、顧客からの注文書がないにもかかわらず売上が計上されるということが営業部の裁量で行われていたようです。このような状況ですと、当然上場基準をクリアするための内部統制(注2)が取れていないため、それらを判断する監査法人から指摘を受けるだろうということは予想できました。

※注2: 内部統制とは、次のことを目的として企業内部に設けられて運用される仕組みです。
  1. 事業経営の有効性・効率性を高める
  2. 企業の財務報告の信頼性を確保する
  3. 事業経営に関わる法規の遵守を促す
参考URL
http://www.azsa.or.jp/b_info/keyword/tousei.html

   現状の業務フローの改善が前提となりますが、証憑の存在に基づいた承認申請システムを管理会計システム上に構築することで、業務フローの改善が行えると提案しました。またこの後に状況を把握するために数回訪問を重ね、最終的に顧客要件に合わせたシステム導入に関する見積りを提出することになりました。

前のページ  1  2   3  次のページ


株式会社ビーブレイクシステムズ 高橋 明
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  高橋 明
早稲田大学商学部卒業。大学卒業後日興コーディアル証券にてリテール、法人営業を行う。その後ビーブレイクシステムズの設立に参画し、現在に至る。専門は会計システムに関するコンサルティングセールス。


INDEX
第2回:小規模会計システムの存続と中規模ERPの導入
  社内管理体制の構築の必要性
中規模ERPパッケージの導入検討
  見積り提出