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第1回:その必然と当然
著者:ピーデー  川俣 晶   2006/1/26
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設計変更

   一見意味のない書式の差としか見えなかったものが、実はビジネスを行うために重要な意味を持つケースがあったのだ。例えば自社指定の書式に合致しないと受け付けない、罫線の位置をミリ単位まではかって一致しないと却下する取引先であるとか、確かにビジネスを行う上で避けて通れない独特の書式というものがあったのだ。

   貴方はその事実を技術者にところに持って行き、設計変更を求める。だが技術者は激怒する。

   「そういう、意味のない慣習を打破しなければ効率化などできはしないのだ!」「それを解消するために説得するのがあなたの仕事だろう!」

   それを聞いて貴方はムカッとするかもしれない。誰かが説得して変えられるぐらいなら、とっくに変えている。誰もそのような特殊な書式を喜んで使っているわけではないのだ。

   貴方は今度は技術者を必死に説得し、そのような特殊な書式もサポートするように設計を変更させる。だがそれによって、美しかった設計は見るも無惨に汚くなっていく。あちこちに無駄やほころびが見えはじめる。それでも業務の効率はアップするので、貴方は必死にシステムの完成を推進する。

   そしてついにシステムは完成した。

   貴方の説得が功を奏して、もはや社内には感情的な反発はない。誰もが新システムを使う日を楽しみに待っていた。


予測できなかった事態

   だが稼働させてすぐにトラブルが続出した。社内の誰もが上手く行くと思った設計なのに、どうしても業務が上手くまわせない部分がでてきたのだ。

   更に、このシステムでは扱えない書類が存在することも明らかになった。それはごく最近取引をはじめた企業が要求する書式で、設計段階では存在しなかったものだった。

   釈然としない貴方はそれでも技術者にシステムの修正要求をまとめて持って行った。

   その結果として技術者が見積もったのは、法外とも思える高額な値段と、びっくりするほど長い納期だった。システムを作ったばかりで、それほど大きな予算が取れるわけもなし。また、今ここに遂行できずに困っている業務があるのに、何ヶ月もの時間を待つことなどできるはずもなかった。

   結局、このシステムはお蔵入りとなった。貴方はどこで間違えたのだろうか?


システム開発に潜む罠

   先のドラマは現実のシステム開発を単純化しすぎているところがあり、実際はもっと違うという意見はあるだろう。私ならこのような愚かなミスは犯さない、という人も多いだろう。

   しかしこれはいくつかの教訓を埋め込んだ一種の寓話である。では、どういう教訓が埋め込まれているのだろうか。

   このドラマでの「貴方」「ユーザ」「技術者」の「発言」「行動」の問題点を見ていこう。


統一の提案

   最初に技術者は書式統一の提案を行っている。このような提案は間違いではない。しかし統一するという提案だけでは十分ではない。業務には、常に取りこぼされる例外というものがあるのだ。そしてたいていの場合、例外を扱うのが最も大きな負担となる。つまり貴方は統一の提案を納得した上で、「では、統一できない書式はどのように扱うのですか?」と質問すべきだったのだ。


変化への抵抗

   新システムを発表したときにユーザたちは一斉に反発している。実はこのとき、ユーザたちは根拠のない感情的な反発と、実際に業務に差し障りのある問題点を明確に区別できていない可能性がある。業務を遂行している担当者本人が的確に自分の業務内容を把握しているかというと、実はそうではないからだ。ルーチンワーク的に業務をこなせるということと、業務に絶対必要とされる条件を正しく把握するということは同じではない。

   つまり、このような抵抗の大多数が感情的反発に過ぎないと見えても、そこに本当に有益な指摘が含まれている可能性は否定できない。単に説得すれば良い、という技術者のアドバイスは適切ではない。

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株式会社ピーデー 川俣 晶
著者プロフィール
株式会社ピーデー  川俣 晶
株式会社ピーデー代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、Microsoft Most Valuable Professional(MVP)、Visual Developer - Visual Basic。マイクロソフト株式会社にてWindows 3.0の日本語化などの作業を行った後、技術解説家に。Java、Linuxなどにもいち早く着目して活用。現在はC#で開発を行い、現在の注目技術はAjaxとXMLデータベース。


INDEX
第1回:その必然と当然
  ビジネス展開と対応していなかったニーズは表裏一体
設計変更
  美しい設計
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