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Ajaxではじまるサービス活用 |
第1回:サービスを活用するAjax時代の到来
著者:ピーデー 川俣 晶 2006/12/22
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Ajax〜その事実とフィクションの境界線〜
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ここ1〜2年で「Ajax」という言葉がよく聞かれるようになってきた。しかし、新しい流行や新しい技術に懐疑的な読者も多いと思う。
この業界では「これを使えばバラ色の未来が約束されます」といって盛り上げておきながら、いくら待ってもバラ色の未来が訪れなかった技術は珍しくもない。むしろ、前宣伝に遜色ない成果をあげた技術を探す方が難しいぐらいだろう。
そのような「裏切り」が満ちあふれた状況を踏まえた上で、あえていおう。
Ajaxは裏切られない本物であると!!
ここで重要なことはいかなる技術でもなく、この「裏切られない」というたった1点と考えてよいと思う。事実として、Ajaxを支える技術はしばしば部分的に入れ替わることがあるが、それでもAjaxの立場は揺るがない。つまり、Ajaxとは技術の問題ではないのである。つまり技術よりも「裏切られない」ことがAjaxの本質といえる。
では、なぜAjaxは他の多くの技術と異なり、裏切られないのだろうか。少し回り道になるが、ここで「事実とフィクションの境界線」という問題について考えてみよう。なぜなら、この境界線こそは、裏切りが発生するか否かを区別する1つの基準線になるからだ。いうまでもなく、事実の領域に属する技術は実際に機能するが、フィクションの領域に属する技術は現実に機能するとは限らないのである。
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玉川上水に例えてみると
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ここでは、あえてIT業界と関係のない例をだして考えてみよう。江戸時代の巨大都市・江戸に水を供給するための作られた「玉川上水」を作ったのは誰かという問題である。
一見、この問題の答は簡単に見える。玉川庄右衛門・清右衛門の玉川兄弟が開削したという説明が歴史の教科書にも載っていることでもあるし、玉川上水の起点となる多摩川の羽村堰近くには「玉川上水を作った人」として玉川兄弟の銅像も立っている。
「玉川上水は玉川兄弟が作った」ということは疑いようのない事実に見える。しかし、玉川兄弟の銅像から多摩川を渡った対岸にある羽村市郷土資料館に行き「玉川上水論集II」という冊子を買って読んでみると、実はそう簡単に割り切れる話ではないことに驚かされる。
まず、実際に建設された当時の基礎資料が皆無に近いのだそうである。初期の玉川上水に関する情報は、直接的/間接的に「上水記」という書物に寄るものが多いとされるが、これは玉川上水開削の130年も後に書かれたものだ。実際には、それよりも古い、しっかりとした資料は存在しないらしい。
そして、異説もあるという。玉川上水から分水されている野火止用水が先に建設されていて、玉川兄弟は野火止用水との分水点より先しか建設していない、といったものや、実は玉川兄弟の開削は失敗し、安松金右衛門が建設したという説もある。ちなみに、野火止用水起源という異説は「上水記」にも記載されているという。開削130年後の江戸時代にして、すでに確実なことはわからなくなっていたようだ。
それゆえに「玉川上水は玉川兄弟が作ったとされるが異説もある」という主張は事実を示していると考えてよいだろう。このことから「玉川上水は玉川兄弟が作った」という断言は事実ではなくフィクションの領域に片足を踏み入れてしまっているといえる。確認した人が誰もいないのに、確定したことのように書くのはフィクションである。ここに、事実とフィクションの境界線がある。
しかし「玉川上水を誰が作ったのか」という問題はフィクションであったとしても特に大きな問題は生じない。玉川上水は小平監視所までの間で実際に上水道として機能している。作った人が誰だとしても、その機能に一切変わりはないからである。玉川上水を作った人物という問題が意味を持つのは「過去」に強い興味を抱く歴史研究者だけである。
さて、IT業界でもこのようなフィクションは珍しくもない。例えば「もしかしたら実際にあるかもしれない有望な可能性」を「ある」と言い切るような主張である。これは、実際の根拠が皆無というわけではないので、説得力を持ちやすい。しかし、情報技術は「玉川上水を誰が作ったのか」という問題とは決定的に違っている。
なぜなら、それを実現するために最低限必要な個別技術の中に、1つでも存在しなかったり事実ではないものが含まれた場合、それは実用システムとして機能しないことになるからだ。それによって影響を受けるのは、役に立つと信じて投資した者達から、そのシステムを使って利便性を得るはずだった利用者達まで幅広い。
では、なぜそのようなフィクションが事実と見なされ、投資の対象となってしまうのだろうか。その理由は、そのようなフィクションが「未来」の出来事として語られる点にある。まだ到来していない未来を検証することは誰も出来ない。
ある技術が未来の事実であるか否かを判断する根拠は、言葉と理屈しかない。しかし、言葉は思うがままに何でも語れるものであり、理屈は空理空論に過ぎない可能性を持つ。事実であると確信するには十分ではない。どうしても、判断ミスをなくすことはできないだろう。
はたして、この問題を解決する手段があるのだろうか。どうすれば、それが「フィクション」ではない「事実」だと確信できるのだろうか。そのための手段が実際にこのIT業界にあり得るのだろうか。
さあ、お待ちかねのAjaxの出番である。その手段こそがAjaxなのだ。
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かくして玉川上水=Ajaxは存在する
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Ajaxとは、既に利用者が当たり前のように使っているWebブラウザをプラットホームとして実行されるリッチなWebアプリケーションである。それゆえに、Ajaxによって実現された技術やシステム、サービスを体験するために、新しいソフトウェアをインストールする必要はない。たいていの場合、特定のURLを開くだけで、即座にAjaxアプリケーションを体験することができる。
この特徴は、事実とフィクションを区別する決定的かつ最強の手段を実現してくれる。つまり、実際に使ってみればよいわけである。言葉で語られた素晴らしい機能が実際に実現されていれば「事実」、実現されていなければ「フィクション」と簡単に区別することができる。今現在、目の前で実際にそれが実現されていれば、これ以上ない確実な「事実」の認定となる。
つまり、Ajaxは「過去」でも「未来」でもなく、「現在」に属する技術なのである。もちろん、すべてのAjaxシステムが安全確実であり、役立つという訳ではないが、誰でも使ってみることによってそれを区別し得るのである。
これほどわかりやすいリアリズムを実現している技術は他にあまり見られない。あえて極論すれば、Ajaxとは体感可能なリアリズムの究極形技術といえる。もっとストレートにいえば、投資が無駄になりにくい技術といってもよいだろう。
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著者プロフィール
株式会社ピーデー 川俣 晶
株式会社ピーデー代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、Microsoft Most Valuable Professional(MVP)、Visual Developer - Visual Basic。マイクロソフト株式会社にてWindows 3.0の日本語化などの作業を行った後、技術解説家に。Java、Linuxなどにもいち早く着目して活用。現在はC#で開発を行い、現在の注目技術はAjaxとXMLデータベース。
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