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CRM市場動向
2004〜2006年のCRM市場の実態

顧客ニーズとCRMパッケージの乖離

著者:矢野経済研究所  赤城 知子   2006/12/8
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はじめに

   矢野経済研究所では国内におけるCRMパッケージビジネスの実態を調査・分析し調査レポートとしてまとめた。主に2003年〜2009年(予測)までのCRMパッケージライセンス売上高の市場規模及び、2004〜2006年(予測)までのライセンス売上高によるパッケージのシェアを算出している。

   調査は、主要CRMパッケージベンダ9社に対し、研究員による直接面接取材を行った。調査期間が2005年8月〜11月である事から、2005年については実績見込み値となっている。

調査結果サマリー

   主要CRMパッケージベンダ9社の出荷ベースによるパッケージ総売上高は2004年212億8,200万円で対前年96.6%と市場が一旦シュリンクする結果となった。しかし2005年285億円で対前年133.9%と大きく伸長、更に2006年には379億円で対前年133.0%と拡大する見込みである(CRMパッケージ総売上高には、パッケージベンダによる導入コンサルティングや導入後のパッケージ保守及び教育、パッケージのライセンス売上高が含まれる。ハードウェアやインプリに関わるSI費用等については含まれない)。

   2005年、CRMパッケージライセンスのエンドユーザ渡し価格ベースによる売上高シェアでトップはSAPジャパンでシェアは23.9%、2位はソフトブレーンで22.4%、3位はセールスフォース・ドットコムで11.3%、4位は日本オラクルで10.6%、5位は日本ピープルソフトで8.7%の見込みである(ライセンス売上高についてベンダ出荷ベースとエンドユーザ渡し価格ベースの2通りで算出している。ベンダ出荷ベースでシェアを換算した場合、直販率の高いベンダに有利であり実際の市場実態と乖離が生じる事から、シェアについてはエンドユーザ渡し価格を独自に推定、シェアの算出を行っている)。

   2005年の大手企業向け(年商501億円以上の企業向け)CRMパッケージ市場のエンドユーザ渡し価格ベースによるライセンス売上高シェアでトップはSAPジャパンで2005年のシェアは24.14%、中堅企業向け(年商500億円以下の企業向け)CRMパッケージ市場の首位もSAPジャパンでシェアは34.3%の見込みである。

   2005年、CRMパッケージのライセンス売上高の86.3%がライセンス売り切りによる売上比率で、13.7%がASPによる売上比率となった見込み。2006年もこの比率に大きな変動は無いと推定されるが、長期のトレンドとしてはオンデマンド型のASPによるCRMのソフトウェア及びサービス提供が拡大していくものと思われる。

   2005年のソリューション別CRMパッケージ市場のエンドユーザ渡し価格ベースによるライセンス売上高比率は、SFAが35.7%、コールセンターが24.6%、マーケティングが17.9%、フィールドサポートが12.6%、アナリティクスが4.6%、その他4.7%となった。


CRMパッケージの市場規模推移

   下記のグラフ表は2003年から2009年予測における、CRMパッケージの総売上高推移(ベンダ出荷価格)及び、CRMパッケージのライセンス売上高のベンダ出荷推移とエンドユーザ渡し価格推移のグラフである。

会社名 製品名
エピファニー・ソリューションズ(株) Epiphany Intelligent CRM Solution
オニックス・ソフトウェア(株) ONYX CRM
日本オラクル(株) Oracle CRM
日本ピープルソフト(株) PeopleSoft CRM
CDC Softwareジャパン(株) Pivotal
(株)セールスフォース・ドットコム salesforce.com CRM Solution
SAPジャパン(株) MySAP CRM
日本シーベル(株) Siebel CRM
ソフトブレーン(株) eSales Managerシリーズ

表1:主要CRMパッケージベンダと製品名(製品名によるABC順)

CRMパッケージの市場規模推移(矢野経済研究所推定)
図1:CRMパッケージの市場規模推移(矢野経済研究所推定)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   CRMパッケージのライセンス売上高による市場規模は非常に小さく、エンドユーザ渡し価格ベースで見た場合でも、2005年は138億1,000万円の見込みで、同じくエンタープライズ系アプリケーションのERPのライセンス売上高と比較した場合、ERPの僅か1/7程度のマーケットサイズとなっている。

   企業の多くがCRMの導入について、パッケージを選択するよりも、自社ビジネスへの最適化を優先した自社開発によるシステム構築を行ってきた。主要CRMパッケージベンダ9社が口を揃えて、パッケージ間の競合よりもユーザ企業の「自社開発案件」との競合が激しい、と言う。

   ユーザ企業がパッケージを活用するメリットの1つに「開発期間の短縮化と導入コストの削減」が上げられるが、CRMパッケージのライセンスフィーは比較的高く、またソリューションの特性上、カスタマイズをしないと導入出来ないソリューションが大半である事から、自社開発とパッケージ活用による導入期間やコストの差が出にくい、という点がパッケージ市場のボトルネックとなってきた。

   しかし、セールスフォース・ドットコムによるオンデマンド型のASPによるCRMソリューションサービス提供がユーザの注目を集め、国内においてもASPサービスによるCRMソリューションサービスの展開に踏みきるベンダが増えつつある。

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書籍紹介
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本記事は矢野経済研究所より発刊されている「2004-2006 CRM市場の実態と戦略展望」から抜粋し、加筆・修正を行ったものです。上記調査資料には、さらに詳しいデータや分析結果が記載されています。調査資料のご購入は下記のリンクより行えます。

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株式会社矢野経済研究所 赤城 知子
著者プロフィール
株式会社矢野経済研究所   赤城 知子
1989年矢野経済研究所入社。半導体・電子デバイスのマーケット担当から、1996年より「クライアントサーバを中心とした企業のコンピュータシステム導入実態調査」を手がける。1998年よりリサーチのフィールドをソフトウェア業界へと移し、主にERPやCRM、SCMといった企業向けアプリケーションパッケージのマーケットを専門に調査・分析を行う。


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