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キーパーソンインタビュー
> Rubyの誕生日は2つある?
話者:まつもとゆきひろ
2007/9/19
株式会社ネットワーク応用通信研究所
まつもと ゆきひろ
楽天 技術研究所 フェロー
鳥取県出身、島根県在住。本人は「当たり前」のつもりでオブジェクト指向やらプログラミング言語と20年以上も戯れていたら、いつのまにやら、日本を代表するオープンソースプログラマだったり言語オタクと見なされてしまっている、らしい。3女1男のお父さんだったりもする。
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Think ITの読者の皆様へ〜まつもと氏 生メッセージ〜
まつもと氏から、これからRubyをはじめようとしている読者の方々への生メッセージをいただいている。
Rubyの誕生日は2つある?
— Rubyを開発することになったきっかけについて教えてください
まつもと氏:
作ったきっかけは「趣味」ですね。丁度バブルが崩壊した後の1993年に、僕の部署で手掛けるべき仕事がなくなってしまったのです。それであまりにも暇だったので、同僚と一緒に「何か作ろう」といったのがはじまりです。
同僚はヒントをくれただけで、結局は僕が作っていました。もともと「プログラミング言語を作りたい」という思いがあったこともあり、良い機会なので制作を開始しました。その当時は2〜3人の友人が使っていたという状況で、それ以外の人に使ってもらえるようになったのが1995年のことです。
そこから先は皆さんの御存じの通りですね。
— 「Ruby」という名前の由来はなんでしょうか
まつもと氏:
Ruby以前に「Perl」という言語があったので、宝石の名前にしようと決めました。そこで宝石の名前をいろいろと上げていくうちに「Ruby」が浮かびました。奇麗だし、4文字だし。
例えば「ダイヤモンド」だと名前が長くなるじゃないですか。それは嫌だと思ったんですよ。後付けで「Perlの次という意味があるよね」という話もありました。
この「Ruby」という名前が先に決まり、そこから作りはじめました。「Rubyの誕生日は1993年2月24日」とよくいっているのですが、実はその日は「名前が決まった日」で、その時点では1行もコードは書いていなかったんですよ(笑)。
— まず名前がきまって「もうこれで誕生だと」
まつもと氏:
これで誕生だと(笑)。ソフトウェアにとって名前のほうが重要だろう、という考えがあるんです。他の言語の場合は「最初のバージョンをリリースした日」を誕生日にすることが多いようです。Rubyの場合、最初のバージョンをリリースしたのが1995年12月20日くらいだと思うので、一般的な基準ではそちらが誕生日といえるかもしれません。
「私が楽をできる」がコンセプトなのに?
— Rubyを開発するにあたってのコンセプトはどのようなものだったのでしょうか
まつもと氏:
コンセプトは「私が楽をできる」というものです。といっても言語の開発者としてではなく「Rubyのユーザたる私が楽をできる」ことを目指しています。もっといえば「Rubyのユーザとしての私が楽をできるならば、言語開発者である私はどんな苦労も厭わない」というポリシー、コンセプトで作っています。
最近は私のほかにもRubyの処理系を作ってくださる方がでてきたのですが、コンセプトのせいで皆が「なんでこんな苦労を……」と泣いています(笑)
でも、僕はRubyを作ってる時間のほうが長いのですが、どうしたら良いですかね。苦労する時間のほうが長い気がするのですが……。
— そこは、がんばっていただくということで(笑)
まつもと氏:
がんばります(笑)。
その一方で、よくいわれるような「初心者向け」というのはまったく考えていません。それよりも、僕自身がある程度経験を積んだプログラマなので、そういった経験を積んだプログラマ自身にとって生産性が高くなるようにしています。
ただ、結果的にあまりプログラムを書かなくて済むとかであったり、簡潔にプログラム書ける、あるいは自分の表現したいものが直接表現できるという性質があるため、それが「初心者にも向いている」と評価してくださる方がいらっしゃいます。
— 今のような広がりは予想されていましたか
まつもと氏:
いや、してないですね。
プログラミング言語には、すごくたくさんの種類があります。そのほとんどが誰もしらないようなもので、名前だけは知っているとか10人くらいユーザがいるといったものです。特にUNIX系ではその傾向が顕著で、実はRubyもそうなると考えていました。
僕と、Rubyを気に入ってくれた数人のプログラマが細々と使ってそれで終わりだと思っていましたが、予想外の展開になりました。嬉しい誤算ですね。
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楽をする為ならどんな苦労も厭わない!
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Rubyのパパは世の中の要求に応えていく