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キーパーソンインタビュー
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話者:サイボウズ 青野 慶久氏
2007/10/22
サイボウズ株式会社
代表取締役社長
青野 慶久
1971年、愛媛県生まれ。大阪大学工学部卒業後、松下電工株式会社に入社。1997年、サイボウズ株式会社を愛媛県に設立、取締役副社長に就任。2005年、代表取締役社長に就任。
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Think ITの読者の皆様へ〜青野氏 生メッセージ〜
青野氏がこれからの技術者に必要な心構えについて語った、読者の方々への生メッセージがこれだ!
日本発のグループウェア「サイボウズ」を世に送り出したサイボウズと言えば、ボウズマンをはじめとしたあっと驚く広告展開を思い浮かべる人もいるだろう。その仕掛け人であり、自らの仕事術を記した「ちょいデキ」の著者でもある同社代表取締役社長 青野 慶久氏に、経営者と技術者の両面から「技術者に求められるもの」について伺った。
「立ち上げ」が得意分野
— これまで関わってこられたプロジェクトについて教えてください
青野氏:
サイボウズ Officeのバージョン1から手がけています。ソフトウェア本体の開発は現在サイボウズ・ラボの代表取締役社長を務めている畑 慎也が行い、私が主に広告やWebサイトからのダウンロード販売にかかわるマーケティングの部分を担当しました。
マーケティングといっても、販売サイトのWebサイト構築や顧客管理データベースなど、そういった部分では技術者として行動する面もありました。
その後、サイボウズ Officeはバージョン4までの間担当し、その後はデヂエのベースとなったDBメーカーや大企業向けのサイボウズガルーン、サイボウズOfficeの10ヶ国語対応など、プロジェクトマネージャ的な立場でさまざまなソフトウェアの立ち上げに携わりました。
「何かを立ち上げる」ということが好きですし、自分にとっての得意分野なのだと感じています。
— そうして、現在も新しいプロダクトを送り出しているわけですね
青野氏:
そうです。ただ、残念ながら今は社長になってしまったので「社長業」が中心です。実際のプロダクトの部分は、社員の皆にやってもらっている状態ですね。
ベンダーとしての嬉しさは「新しい商品を世に送りだす」ことである点は同じです。現場の人間から社長になったことで仕事の内容は変わりましたが、嬉しさは変わりません。
— 目標にされている技術者・経営者はどなたでしょうか
青野氏:
目標にしてきた技術者の1人目は、TRONの坂村 健教授です。高校生の頃に坂村教授の本で感動してコンピュータの道に進んだような所があります。
2人目は、Macをはじめて使ったときに衝撃を受けたソフトウェア「Hyper Card」の開発者であるビル・アトキンソンです。彼の凄い所は柔軟なユーザインタフェースを実現していることです。私の傾向として、ユーザと接する部分で素晴らしいものを作っている人に魅力を感じるのだと思います。
目標にしている経営者については「ちょいデキ!」でも書きましたが、やっぱり松下幸之助さんが一番大きいですね。他は特に「この人」ということはありません。経営者の皆さんはそれぞれ素晴らしい点があるので、まんべんなく偉い人の本を読んで自分に取り入れるようにしています。
イントラネットにこだわるサイボウズ
— 今注目している技術と、御社が最先端を走っている技術はなんでしょうか
青野氏:
技術力という点では、やはり「Googleはすごい」と考えています。インターネットについて非常に強い技術力を持ち、インターネット上でのさまざまなアプリケーションを提供しているところからもわかるでしょう。
しかし、イントラネットに関してはGoogleよりも私たちのほうが詳しいと考えています。イントラネットの中でどのようにシステムをつなげば良いのか、顧客が何に困っているのか、といった部分のノウハウやナレッジを、これまでの経験から掴んでいます。
その上で今特に注目し、得意としているのは、複数のシステムで共通化できる認証基盤やシステム間の連携を行う仕組みといった部分です。
— 今イントラネットにこだわっている理由を教えてください
青野氏:
イントラネットがあるということは、そこに組織があるということです。
個人主義的な発想では、1人1人が強くなることで組織力が上がるという考え方を持っています。これはアメリカ的な考え方であるといえるでしょう。しかし日本の場合は、1人1人を強くするよりも「組織で勝つ」ための方法論が重要になります。この「組織」に着目した分野は、やはり日本の企業が強さを発揮する場であると思います。
例えばマイクロソフトは「the empowerment of people」というメッセージを出していますが、日本人から見るとピープルではなくパーソンに着目していると感じます。パーソンを強力にすることで、ピープルが強力になる、という発想に近いのだと思います。
そしてもう1つ、イントラネットは会社で働いている人にとって、インターネットよりもフロントエンドに近い場所にあります。つまり、イントラネットを通してインターネットをみることができる環境なのです。
1つ考えてみてほしいのですが、Googleは非常に便利な検索サービスですが、そこで検索できないものがあります。それはイントラネットの中にあるデータです。それはさすがにGoogleの中にはありませんから。
なので今後の検索エンジンの未来像の1つとして、イントラネットとインターネットの両方の情報を検索できるようになる、と考えられます。この機能を持った検索エンジンは、インターネット上ではなくイントラネットに組み込まれているはずです。
私たちがチャレンジしたいのは「社内外の融合」です。今はくっきりと分かれていて、インターネットの側だけどんどん先に進んでいる状態です。しかし、イントラネットとインターネットが融合した瞬間、これまでとは違ったゲームが展開されることでしょう。
サイボウズは先ほどお話したように、イントラネットの技術に「強さ」を持っています。イントラネットが重要視される未来が来たとき、サイボウズはGoogleと対抗できる。そういう風に思っています。
— それは何年後でしょうか
青野氏:
未来像として考えていることが当たり前になるのは、5年後です。それまでには、私たちも1つの形がみせることができると思います。
それに向けて、今サイボウズ・ラボとサイボウズが連携しながらさまざまな試みを行っています。主にサイボウズ・ラボがインターネット側を、サイボウズがイントラネット側をそれぞれ担当しており、出来上がったものをつなぎあう、という形で進めています。
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