アーマードトルーパーは2025年に大地に立つ!
2008年新春にThink ITがお届けするのは、特集「新言語進化論」で好評だった連載「アレで使われている言語ってなに?」の番外編「あのロボットのOSってなに?」だ。
ガンダムやパトレイバー、はたまたアクエリオンまで日本のアニメにはさまざまなロボットが登場する。その中でThink ITが白羽の矢を立てたのは往年の人気アニメ「ボトムズ」の中で使われていた「アーマードトルーパー(以下、AT)」だ。
ATは4メートル強の人型の戦闘用ロボットで、一般的に「愛機」があるアニメの中で、主人公がその時々によって「搭乗機を使い分ける=兵器として使っている」というリアルな設定の下に物語中で利用されている。
このATが実際にこの世界に登場するのはいつで、そのOSはなにか。そして実現にはどのような課題があるのか。今年20年を迎えた高専ロボコンで審査員を務めた先生方からいただいたアンケート内容を交えながら紹介していく。
今回の記事は高専ロボコン関東甲信越大会でコメンテータを、全国大会では主審を務めた長岡技術科学大学の木村 哲也先生とのインタビュー内容を基に構成している。
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
人型ロボットはいったいどんな構造になっているの?
人型のロボットと人型ロボットで大きく異なるのはアクチュエータの数です。例えば私の研究室で開発しているレスキューロボットは前進・後進・フリッパーで6自由度があります。
これに対して人型は、市販のおもちゃレベルでも20〜30の自由度を持っていることが普通で、ATのように指が1本1本動き、足の裏のタイヤやロックピンまで搭載したロボットでは100個以上のアクチュエータが必要になります。
ではその動作を検知するセンサーはいくつ必要でしょうか。精密なバランスが要求されるロボットのセンサーですから、関節ごとに力学情報をフルに取得できるよう、位置情報・速度情報・力情報について各アクチュエータごとに検出するべきです。これでもう300のセンサーが必要になることがわかります。さらに視覚系/通信系のセンサーも必要でしょう。
これらのセンサーから入力された情報を基に、リアルタイムで、場合によっては人の反応速度を超えてアクチュエータを動かします。さらに信頼性をあげる必要があるので、基本的にセンサーやエンコーダの多重化を行います。結果として数千のセンサーとアクチュエータをリアルタイム制御しなくてはなりません。
すべてを中心に集めたスター型のシステムでは、どんなに性能が高いCPUでも処理しきれないでしょう。そこで階層化によるバスシステム、体内LANのようなものが重要になります。この仕組みをロボットに先駆けて行っているのが自動車の世界です。
自動車では現在、さまざまなセンサー情報の収集やパワーウィンドウの制御を分散して行う「CANBus」が採用されています。自動車に埋め込まれたセンサーやCPUはここ数年で数倍の増加率で、あと数年で開発費におけるソフトウェアの割合が2〜3割までになるともいわれています。ちょうど今が移行フェーズといえる時期です。
このように知能化された自動車の数倍のセンサーやアクチュエータを備えているのがATの世界です。人型ロボットは圧倒的に処理・制御する内容が多く、うまくセンサー情報をローカルで処理し、結果だけを上位に渡す構造にする必要があります。その上で、分散したポイントを全部協調作業させなくてはいけません。その点でロボットもCANBusに近いバス型のシステムを搭載することになるでしょう。
バス型にするメリットは配線の面にもあらわれます。スター型では内部が配線の塊になりますが、バス型にすることで1本あるいは数本にまとめることができます。さらに稼動部分は剛性の問題で肉厚をそれほど薄くできないので、アクチュエータにセンサーをインテグレートしたユニット構造にする必要もあるでしょう。
そうなると規格の話が出てきます。このクラスのアクチュエータはピン番号は何の出力で、対ノイズ性はどの程度確保しているか。そういう情報をすべて入手できる状況ができないと、ビジネスとしては大きくなっていかないのです。 次のページ