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即活用!企業システムにおけるプロジェクト管理
「即活用!企業システムにおけるプロジェクト管理」

第2回:
PMBOKをベースにしたプロジェクト管理の管理

著者:システムインテグレータ  梅田 弘之   2004/12/6
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PMBOKの次の一歩を踏み出そう

   ここ数年、さまざまな企業でプロジェクト管理への意識が高まり、IT産業にとって良い方向に向かっていると思います。常駐・派遣型ビジネスならセーフなのに、一括請負型ビジネスで赤字を出すという図式から脱却するには、プロジェクト管理力を高めるしかないと経営者も気づいてきたのでしょう。かくして、あちこちでPMBOK(通常、ピンボックと呼びます)やCMMなどをテーマとした"プロジェクトマネージメント セミナー"が開催され、一時期活況を呈していました。

   セミナー参加者は、PMBOKやCMMを理解し、プロジェクト管理の重要さを再認識しました。しかし、PMBOKはそもそもプロジェクト管理に関する知識体系をまとめたものに過ぎないので、それを利用して自社に生かすという肝心のアプローチが見えません。結局、"セミナーに参加して意識が高まった"というだけに終わり、いつの間にかブームも尻すぼみになりそうにも感じています。

   セミナー開催側もその温度感の変化には気づいています。最近は、さすがに「PMBOKとは」というベーシックな内容のセミナーでは集客できなくなっており、もっと掘り下げた内容に変えているようです。ただ、相変わらず"プロジェクト管理はどうあるべきか"というような講習であり、"それを行うためにどうすれば良いか"という肝心なことは教えてくれません。もちろん、それは参加者が自社の状況に合せて考えるべきことだと思いますが、実践の方法論と具体的なツールを提供することはできるはずです。

   そこで、本連載では「プロジェクト管理力の強化」ということをテーマにしました。PYRAMIDというプロジェクト管理手法を独自開発し、それを使ってプロジェクト管理力を高めるというアプローチを実際に行っているので、そのプロジェクト管理技術と導入の実践経験の中から役立ちそうなことをお伝えします。


まずはPMBOKの体系を理解しよう

   何事も基礎知識を踏まえた上で実戦に応用することが肝心です。「PMBOKの次の一歩」に踏み出すことが本連載の主旨ですが、その前に最初の一歩であるPMBOKについてもきちんと理解しておきましょう。プロジェクト管理に関する国際標準としてPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)という規格があります。これは、Body Of Knowledgeという名の通り、プロジェクト活動を管理するための基本的な考え方、手法をまとめたものです。あくまでも知識体系をまとめたガイドなので、そのまま自社のプロジェクト管理手法として使える具体性はありません。しかし、プロジェクト管理に関する知識や要点が体系的に整理されているので、その概要をきちんと理解しておくことは役立つと思います。

   PMBOKは、プロジェクト管理体系に関する知識を分類し、書類棚を並べたような引き出しに整理しています。この書棚は図1のように、縦9段、横5段、奥行き3段の構造で、それぞれのボックスの中にプロジェクト管理に関する項目が入っています。



図1:PMBOKの知識管理体系
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


9つの知識エリア

   縦は、プロジェクト管理に関する知識(Knowledge)の分類です。日本の製造業で従来から使われてきたQCD管理(Q:「品質管理」 C:「コスト管理」 D:「納期管理」)は3つですが、PMBOKはこれに「スコープ管理」「組織・要員管理」「コミュニケーション管理」「リスク管理」「調達管理」という5つの分類を加え、それらをトータルに管理する「統合管理」を含めた9つの知識エリアから構成されています。例えばスコープ管理では、プロジェクトの請負範囲や成果物が何であるかをきちんと定義・計画します。また、スケジュール管理では、作業タスクの定義やスケジュールの作成、進捗管理などの方法について記載されています。


5段階のプロセス

   横は、プロジェクトの流れを、「立上げ」「計画」「実行」「管理」「終結」という5つのプロセスに区切ったものです。どのプロセスで何を作成・管理すべきかということが、9つの知識エリアごとに定義されています。例えばスコープ管理の場合、計画プロセスでスコープの計画や定義を決定し、管理プロセスで成果物の検収やスコープの変更の管理を行います。また、スケジュール管理の場合は、計画プロセスで作業の定義や所要時間の見積、スケジュールの作成を行い、管理プロセスでスケジュールの進捗管理を行います。


3つのパート

   知識エリアとプロセスの交わる引き出しには奥行きがあり、「入力」「ツールと実践技法」「出力」という3つのパートに分かれています。パートの構成を具体的な例で説明しましょう。図2は「スコープ管理」の「立上げ」プロセスに分類されている「プロジェクトの立上げ」というプロセスについて、3つのパートの定義内容を表したものです。

   このプロセスでは、「プロジェクト成果物記述書」「事業計画」、「プロジェクト選定基準」「実績情報」などをインプットとし、「プロジェクト憲章」「プロジェクトマネージャの選定」「制約条件」「仮定条件」などをアウトプットとしていることが分かります。「ツールと実践技法」パートでは、それを実現するためのツールや実践の方法が規定されています。PMBOKのこのキューブ構造はプロジェクト管理手法「PYRAMID」のベースにもなっています。PYRAMIDでは、実践ツールとしてExcelベースのテンプレートなどを用意し、その運用方法を定義しています。



図2:スコープ管理—プロジェクトの立上げプロセスの3つのパート

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システムインテグレータ
著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ  梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経て1995年にシステムインテグレータ社を設立。 常駐・派遣主体の労働集約的な日本のソフトウェア業の中で、創造性にこだわってパッケージビジネスを行っている。 国際競争力のない日本のIT産業が、ここから巻き返しを図るための切り札は「プロジェクト管理」だと信じ、実践的なプロジェクト管理手法「PYRAMID」を自社開発している。


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第2回:PMBOKをベースにしたプロジェクト管理の管理
PMBOKの次の一歩を踏み出そう
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