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HAクラスタソフトウェアについて
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サーバの可用性を高めるために用いられるいくつかのアプローチのなかで、導入コストが比較的ローコストなため需要が伸びている「HA(High Availability)クラスタソフトウェア」について、その国内市場規模やプラットフォーム別の動向などについて考察する。
今回取り上げるのは、メインの1次サーバとバックアップ用の2次サーバで構成されており、1次サーバに障害が発生した場合、2次サーバがその処理を引き継ぐ「フェイルオーバー」を行うクラスタソフトウェア(マルチノード対応も含む)や、アプリケーションレベルでシステムをシングルイメージ化するものも含めている。
HAクラスタソフトウェアは、もともとUNIXプラットフォームを中心に発展してきたソフトウェアである。しかし、最近はWindowsやLinuxを採用したシステムでもシステムダウンの許されない高可用性が求められるケースが増えてきたことや、高価な共有ストレージを使わないでもデータミラーリング方式によって安価にHAシステムを組むことができるようになってきたこともあって、低価格なIAサーバ市場の普及拡大とともに現在導入が加速している。
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Linux版によって市場が活性化
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HAクラスタソフトウェアには、ベリタスソフトウェア(現シマンテック)を除くUNIXサーバベンダーが自社のハードウェアの販売促進のためにそれぞれ自社プラットフォーム限定で開発してきた歴史があり、UNIXを中心に発展してきたソフトウェアである。そのため、ソフトウェアビジネスとしての競争がほとんどなかった。
一方Windowsもまた、システム単価が低い上にミッションクリティカルなシステム利用率が低いこともあって、HAクラスタソフトウェアの市場性が低いとの見方が大勢を占めている。さらにマイクロソフトがサーバ系のOSにMicrosoft Cluster Service(MSCS)というクラスタリング技術を標準搭載していることもあり、ベンダーに対する市場参入阻害要因として働いていた。
そうしたこともあって、東芝(現東芝ソリューション)/NEC/富士通の3社のみが自社製のx86サーバを対象に自社開発のHAクラスタソフトウェアを搭載するにとどまっており、ベンダーごとのすみ分けが明確であった。
しかし、2001年頃からエンタープライズLinuxについての議論が国内でも活発になり、JavaとLinuxに特化したテンアートニをはじめとして、東芝、NEC、NTTコムウェアなどが相次いでLinux版のクラスタソフトウェアを市場に投入しはじめ、本格的なLinuxからUNIXへのマイグレーションに注目が集まりはじめたのである。
そして、Solarisのデータバックアップ/HAクラスタソフトウェア最大手のベリタスソフトウェアがLinuxへの参入表明を行ない、Linuxのエンタープライズ環境を支えるコンポーネント製品群が拡充されたことで、Linuxのエンタープライズ利用にいよいよ期待が集まったのである。
さらに最近は、市場が拡大しているブレードサーバ環境における障害検知やサーバの退避、予備サーバの立ち上げやサービスの移動といった一連の動きをクラスタソフトウェアのエンジンを利用して実現するベンダーも出現するなど、クラスタソフトウェアの適用範囲に拡大傾向がみられている。
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著者プロフィール
IDC Japan株式会社 田中 久美
ソフトウェア マーケットアナリスト
IDC Japanのソフトウェア担当マーケットアナリストとして、年間情報提供サービス「Japan Software Infrastructure and Tools」のほか、半期ごとの市場動向調査、市場分析およびカスタム調査分析を担当。対象分野に、サーバーバーチャライゼーションソフトウェア、HAクラスタリングソフトウェアなどがある。
IDCに入社以前は、国内の調査会社において3年以上、サーバー、ソフトウェア、サービスなど幅広いマーケットリサーチを担当。
青山学院大学 国際政治経済学部 国際経営学科卒業。
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