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UML導入に関する考察
第3回:UMLを導入することで期待できる効果
著者:
野村総合研究所 田中 達雄
2005/7/14
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古河電気工業株式会社
H社と似た事例に「古河電工」の事例がある。グループ内の購買システムの開発における目的はコスト削減である。増加傾向にあるIT投資を抑制するために、グループ各社が保有する購買システムを共同利用可能な購買システムに一新。さらにプラットフォームにはオープンソースの利用、開発作業では中国へのオフショア開発と可能な限りのコスト削減策を施している。
その中でオフショア開発先である中国開発要員との情報伝達ツールとしてUMLを活用している。H社と多少異なるのは、H社は日本語をベースにした情報伝達であるのに対し、古河電工では日本語で書かれたUMLを含むドキュメントを中国語に翻訳してから中国開発要員に伝達しているところである。翻訳の精度を高めるため、日本側に日本語が堪能な中国技術者を加え、設計書を作成している。
情報伝達としてのツール
この2つの事例からUML導入が正確に情報を伝達するツールとして期待できることが伺える。現状の開発量に対し技術者の人数や開発生産性が追いついていない中、さらに増加傾向にある開発量に対し、国内技術者だけでなく海外技術者を外部リソースとして活用する傾向は否応なしに増加するものと思われる。
表2は野村総合研究所が発表した中国における日本向けオフショア市場動向であるが、現時点でも約1500億円を越えており、2008年には約7000億円にまで成長すると予測されている。特に運用市場の伸びが著しく、開発したソフトウェアやシステムの運用を中国に任せるケースが増加すると見込まれている。
市場(単位:10億円)
2004年
2008年
CAGR
オフショア開発・運用市場(A)
158
694
44.7%
うちオフショア開発市場
147
460
33.0%
うちオフショア運用市場
11
234
114.8%
日本のソフト開発・運用市場(B)
10,273
14,056
8.2%
日本市場との比較(A÷B)
1.5%
4.9%
CAGR(Compound Annual Growth Rate):年間平均成長率
表2:中国の日本向けオフショア市場動向
出所)野村総合研究所
オフショア開発の場合、仕様を正確に理解していないことが原因で運用トラブルを引き起こしたり、トラブル対応に時間がかかったりし、低コストで運用を任せたにも関わらず、かえって高コストになってしまうことがある。このような状況を避けるためにも開発したソフトウェアやシステムの仕様を正確に伝達する必要があり、そのツールとしてUMLの必要性が高まってくるものと思われる。
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著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。
INDEX
第3回:UMLを導入することで期待できる効果
UML採用の目的
UML導入が目的の成功要因になっている例
古河電気工業株式会社
組み込みソフトウェア開発からの視点