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まるごとPerl!
事例編〜Web 2.0サービスの中を見せます

第2回:はてなフレームワークとPerlとシステム負荷
著者:はてな  伊藤 直也   2006/10/19
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ソフトウェア

   ソフトウェア面は基本的にLAMPで構築されています。ブックマークされたページのスクリーンショットを撮影する機能など一部でRubyも利用しています。アプリケーション本体のコードはPerlスクリプトで合計1万5千行ほどになります。商用のソフトウェアは使用していません。
  • LinuxのディストリビューションにはFedora Core
  • Apache 2.0+mod_perl 2.0/Apache 2.2
  • MySQL 4.0
  • Perl 5.8

   といった構成です。

   はてなブックマークのシステムとして直接利用している以外にも、

  • MRTGで負荷監視
  • Nagiosでサービスの稼動監視
  • Subversionでバージョン管理
  • Capistrano(旧SwitchTower)でサービスのデプロイ

   といったことも行っています。


はてなフレームワーク

   このぐらいの規模のWebアプリケーションを作る場合、スクラッチからコードを書いていたのでは効率が悪いですし、また複数のプログラマで開発を進めるにあたってコードの品質を一定に保つのが難しくなってきます。ということで、ここはフレームワークの出番です。

   PerlにはCatalystやSledge、CGI::Applicationといったオープンソースの優れたフレームワークがいろいろとありますが、はてなでは自社開発の「はてなフレームワーク」を利用しています。

   はてなフレームワークを開発した当時の2001年頃はLL向けの良いフレームワークがあまり無かったため、自分たちで作りました。その後も改良を続け現在も同フレームワークを利用し続けています。

   最近ではPerlに限らず、優れたフレームワークの実装が世の中に多数あり、その多くがフリーです。あまり自社開発のフレームワークを利用することの利点は多くないかもしれません。いずれ、フレームワークをオープンソース化して社内外のコミュニティをベースに開発を続けるか、あるいは他の優れたフレームワークへ移行するといったことを検討しています。

   そんなはてなフレームワークですが、特徴としては、

  • MVCフレームワーク:MVCのうちModel(O/Rマッパー)とController部分を実装。テンプレートはTemplate-Toolkitを利用
  • 実行環境(mod_perl/FastCGI/CGI)を抽象化
  • YAMLを利用したDIコンテナによる動的クラス生成の機能
  • プラグインによる拡張機能
  • Ruby on RailsのWEBrickやCatalystのserver.plと同様の、開発用のコマンドラインから起動できるWebサーバー
  • 必要なクラスのスケルトンをコマンドラインから生成するためのヘルパースクリプト

   といったものを持っています。

   またLLながらも比較的制約の強いフレームワークで、少人数での共同開発に力点が置かれています。他にも社内で作ったコーディング規約や、フレームワークの習得までにペアプログラミングを集中的に行うといったことを通して、プログラマ全員のコードのスタイルや品質をある程度一定に保つことを意識的に行っています。

   PerlなどのLLを用いた複数人数での大規模アプリケーションの開発は難しいというのはもはや昔の話で、今ではフレームワークも整備されていますし、そのための方法論も確立されています。はてなに限らず、mixi(注3)やTypePad(注4)など、Perlで書かれた大規模アプリケーションはもう珍しくなくなってきましたね。


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株式会社はてな 伊藤 直也
著者プロフィール
株式会社はてな  伊藤 直也
取締役最高技術責任者
ブログサービスやソーシャルブックマークなど、はてなの各種サービスの企画、開発を行う。著書に「BlogHacks」(オライリージャパン刊)。「続・初めてのPerl」(オライリージャパン)、「Perl救命病棟」(翔泳社刊)では監訳を務めた。


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