クライアント型SOAによるスモール&クイックスタート-最適な投資とは

2006年3月3日(金)
石田 兼丈

クライアント型かサーバ型か

ここで、同じSOAを使用するシステムでもクライアント型にするのかサーバ型にするのかという選択肢が1つ生まれてきます。SOAの特性をよりいかすのはどちらでしょうか。

単純に考えれば、現状ではサーバ型のシステムが多く存在するため、サーバ型の選択が現在運用しているシステムの方向性を変えることが比較的少ない方法にみえます。サーバ側で、先ほどの「プチSOA」を実践していけばサーバ型SOAは実現可能ですが、現実的にはやっと運用がうまくまわりはじめているのにまたプログラム改修していくのは多少なりとも勇気がいることのはずです。そこで、クライアント側でシステムを構築してサーバとの連携を取っていく思想であるクライアント型SOAの手法を取り入れて見た場合はどうでしょうか。

最近のシステムではサーブレットなどを使用したサーバ中心のシステムが多く使われています。そこで、サーバ側のシステムを1つのサービスとしてうまく活用しながら、他のサービスをクライアント側のサービスとして付加すれば各担当者が使いやすいものになるのではないでしょうか。

それはサーバ側のシステムを改良するのと同じ効果が得られることが予想できます。クライアントSOAであれば根本的なサーバ側のシステムは変わっていないので致命的なバグはほぼ起こりえません。

しかも、サーバ連携のみや付加機能部分のみといったサービス単位で構築していけば、クイック&スモールスタートの実現といえるので、究極の「プチSOA」になりえるのではないでしょうか。ただ、クライアント型のシステムはプログラムの追加や修正をする度に、システム利用者すべての端末にプログラムの追加修正を行わなければならないという問題があります。

1クライアントごとにプログラムの追加や修正の作業を行うとどうしても時間も手間もかかります。

数年前まではあまりこの問題に対応する手段はありませんでしたが、インターネット、イントラネットの普及などにより簡単にプログラムの配布などを行うことができるようになりました。

ネットワークを介しての自動配布を行うサービスを連携させていければこの問題も解決です。また、1つ1つの機能が小さくできているために、サービスで連携をとっているサーバ側システムに何らかの手直しが発生したとしても、その小さな1機能のみを修正、もしくは再作成するだけで他の機能には何の影響も与えることのないものを作成することができるはずです。
 

ネットワークを介してのサービスの連携
図4:ネットワークを介してのサービスの連携

この手法を使えばシステムがつぎはぎになることもなくなるため、修正・追加開発のコストも激減するはずです。

 

効率的な投資とは

現在、社内システムが完成している中でシステム投資を行うためにどうしても考えなければならないことは、いかに効率的に予算を使っていくかだと思います。そのためには一度に大きな投資を行うよりも、繰り返し小さな投資を行っていくほうがビジネス環境の変化に則した投資ができるので、投資効果もあがっていくといえるのではないでしょうか。

そこで、1回の投資金額をいかに少なく抑えることができるかが大きなポイントです。これは「プチSOA」によって実現できます。また、クイック&スモールスタートを実践していけば初期投資も少なくなるでしょう。このことからも、効率的な投資の選択肢の1つとして考えてみても面白いのではないでしょうか。

 

まとめ

SOAは注目をされてきてはいますが、まだまだ身近ではないシステム構築手法です。ただ、一部の先進的な企業でSOAの手法を取り入れ、成功している事例もでてきています。

次回は、今回説明したクライアント型SOAが物流システムではどのように有効にいかすことができるかを、SOAソリューションの一例として説明していきます。
 

株式会社サイオ

大学の情報系学科でシステム開発について学び2000年4月にSI会社に入社。オープン系開発を中心に多様な 業務システムに携わり、システム開発から導入までの実践的な技術を養っていく。その後さらなるステップアップを目指しフリーとして転身。そこでプロジェク トサブリーダーなどの経験の中で様々な業務知識を得て2005年9月にサイオへ入社。現在も多岐にわたる技術の飛躍を求め日々新しい事に興味を持ち実践し ていく事を心がけている。同時に、サイオの提唱する「Rimless Computing」の実現を目標に尽力している。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています