データ・モデリングでビジネスと向き合う

2010年10月7日(木)
松田 安弘

企業の情報システムで最も重要なものは「データ」

景気低迷もあり、昨今の企業を取り巻く環境は、ますます厳しさを増しています。企業では、これまで以上に迅速な経営判断/意思決定が求められます。その判断材料となる情報は、ますます大事な経営資源となるでしょう。情報のもとになるものが「データ」です。データは、それだけでは意味をなしません。整理/体系化されて初めて、「価値ある情報」に変化します。

データや情報は、湧水のように出てくるわけではありません。企業の日々のビジネス活動に、その源泉があります。企業がビジネス活動を展開すると、人/物/金の動きに連動して、データや情報が発生するのです。また、ビジネス活動には、連続した流れがあります。その流れに並走するように、データや情報が流れていきます。ビジネスとデータの関係、そしてこの流れを図式化したものが、Entity-Relationship Diagram(ERD、ER図)です。

例えば、ある顧客から、ある商品に関する注文を受けた場合、受注番号や受注日、顧客、受注商品などのデータが発生します。これらをER図で表したものが、図1です(この読み解き方については後で説明します)。ビジネス活動と、データや情報、そしてその順番には、密接な関係があることが分かると思います。

図1: ER図の例

データ・モデリングはビジネスをER図に映し出すこと

ビジネス活動で発生したデータや情報は、データベースに蓄積して活用するのが一般的です。ビジネスの流れとデータの流れは同期しているので、企業が運用しているデータベースの定義(構造)を見れば、行っているビジネス活動を把握できるはずです。

しかし、実際にはうまくビジネス活動を把握できないのが現状です。データベースへの参照や更新のレスポンスを考慮する、という実装上の観点から、データベース構造が手直しされているためです。運用中のデータベースとビジネスの間に隙間ができているのです。

このかけ離れている部分を詳しく分析した上で、データベース構造を再構築し、企業の活動とデータの関係を正しく同期させるのが、「データ・モデリング」です。一般的に、データ・モデリングでは、先ほど説明したER図を使って、ビジネスとデータの関係や流れをモデル化(データ・モデル化)します。

ER図とは、ビジネスとデータの関係と流れを図式化したものです。逆に言うと、ER図に書かれたデータ・モデルを読み解くことで、その企業がどのようなビジネス活動をしているのかを把握できます。

ER図の他にも、データの流れを表現するために使う図として、DFD(Data Flow Diagram: データ・フロー図)があります。DFDとER図の違いを見てみましょう。図2の左がDFD、図2の右がER図です。DFDはデータの流れ、ER図はビジネスとデータの関連、というように、それぞれ観点が異なりますが、図2では、どちらも同じ受注活動を示しています。

DFDでは、顧客ファイルや商品ファイルから注文内容のデータを受け取り、受注情報をファイルへ書き出す、という流れは分かりますが、それ以上のことは読み取れません。一方、ER図では、1回の注文で複数の商品を指定できることや、たとえ受注商品が1つでも必ず受注明細を発行すること、つまり、データの従属関係やビジネスのルールまで読み取れます。

図2: DFDとER図(クリックで拡大)
株式会社アシスト コンサルティング室 シニア・コンサルタント

データモデリング分野やビジネスモデリング分野のコンサルティングに従事。支援実績は、製造業からサービス業と、顧客の幅と数とも多い。現場主義に徹することとがモットー。最近は、原点に立ち返り、データモデルでビジネスを語ることを現場で訴求している。

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