Linux上でSAPの堅牢性をより高める

2010年12月6日(月)
菅野 博貴

再び注目されるLinux

企業の基幹システムは昨今、当たり前のように24時間365日の継続稼働が求められるようになってきました。今や全世界で採用されているSAPシステムにおいても例外ではありません。

一般的には、堅牢性の高いシステム構築費用は高額になり、各企業のITシステムには決して小さくない額の投資が必要となります。しかしながら、不振の続く国内の経済状況から、いかに投資を抑え、かつ高可用性を備えた環境を構築、運用するかというテーマがシステム担当者に課せられています。

こうした状況の中、Linuxが再び注目され始めています。そもそも、他の商用UNIXシステムに比べて安価に構築、運用できるというメリットがIA(Intelアーキテクチャ)系Linuxにはありましたが、信頼性や周辺ミドルウエアの対応等の観点で、国内のSAPシステムに関しては実績が乏しいというのが実情でした。ただ、ここにきてさまざまな要因から既存SAPシステムのLinux上への移行を検討されるケースが出てきています。

また、海外ではSAPシステムにおけるLinuxの市場は拡大を続けており、国内でもWEB系や情報系などのシステムはもちろん、金融業のミッションクリティカル・システムなど、多くの業種で採用が進んでいます。これらの稼働実績から、投資を抑え、かつ高可用性を備えた環境を構築、運用するという課題をクリアできるような基幹システム構築も、現実的であると考えられるのです。

LifeKeeperで高可用性SAPシステム構築検証

今回、SAPジャパン、サイオステクノロジー、日本IBMの3社が共同で、高可用性システムの構築・稼働検証を実施することで、現在導入を検討中のSAPユーザーが、より安心してLinuxを採用できると考えました。検証にあたっては、業務アプリケーション用途として多くのユーザーに採用されているIBMブレードサーバーと、RedHat Linux、Oracle、SAP NetWeaverの各最新バージョンソフトウエア、そしてHAクラスタソフトウエアであるLifeKeeper for Linuxの最新バージョンを利用しました。さらに、より可用性を高めるため、SAPのエンキューレプリケーション機能*1も合わせて実装し、より高い信頼性を提供できるかを検証しました。

今回検証に使用した構成は以下の通りです。

  • ハードウエア
    -IBM BladeCenter HS21、IBM TotalStorage DS4800外部ディスク装置
  • OS
    -RHEL5 Update5 (64bit)
  • クラスタソフトウエア
    -LifeKeeper for Linux v7
  • DBMS
    -Oracle 11.2.0.1
  • SAP
    -SAP NetWeaver 7.0 EHP1 SR1 ABAP (kernel 7.01 64bit Unicode)

次ページでは、より詳細な検証構成についてご紹介します。

[*1]メインメモリ上に保持されるSAPロックテーブル内容が、何らかの障害により失われた場合、実行中のトランザクションがリセットされてしまう。よって、ロックテーブル内容を事前に別ノード(サーバー)へ複製しておき、実行中のトランザクションを保護する仕組みとして、エンキューレプリケーション機能が提供されている(図1を参照)。

図1:SAPエンキューレプリケーションの構成(クリックで拡大)
日本アイ・ビー・エム株式会社

2001年、日本アイ・ビー・エムに入社。入社当初よりSAP社製品関連テクニカルサポートに従事し、日々東奔西走中。グローバルISVソリューションズ所属。

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