スマートフォン選択とUI

2011年1月19日(水)
永井 一美

携帯電話市場の変革とタブレット型端末

前回は、スマートフォンが登場した背景と、市場競争について解説した。今回は、"業務利用"という目的下でのスマートフォンの選択、そして"業務"に適したUI(ユーザー・インタフェース)について、次回(第3回)が主体となるが、解説を始めたい。

まずは、前回少し解説した日本の携帯電話市場についてまとめる。スマートフォンの発端は、PDA(Personal Digital Assistant)であり、「情報端末」として登場した。日本ではZaurus(ザウルス)(シャープ)などが相当する。最初のスマートフォンと言えるのは、2005年発売のW-ZERO3(シャープ)である。

米Appleと米Google、勢いのあるIT企業が携帯電話市場への参入を表明、米国でAppleからiPhoneが発売され、GoogleがAndroidを発表した。その後の2008年7月、iPhone上陸前の日本では「携帯電話に大変革が起きるだろう」と語られていた。

当時、携帯電話の成長モデルは、すでに陰りが見えていた。2007年から、日本での端末契約数の伸びはブレーキがかかり、人口に対して飽和状態を迎えていた。また、番号ポータビリティや、ソフトバンクモバイルが2007年1月に開始した「ホワイトプラン」の頃から料金競争が激化、各通信キャリアのARPU(ユーザー当たりの月間平均収入)はじわじわと下がっていた。

「大変革」の論調が生まれた背景には、このように携帯電話市場の"楽園"が末期に近づいていた中で、"黒船"の到来がせまっていたという状況がある。そして満を持して登場したiPhoneは単に魅力的な端末が出現したというだけでなく、携帯電話事業が、従来の通信キャリア主導からIT企業主導に切り替わった歴史的なものであった。

現在、TVCMで「GALAXY Tab(ギャラクシー・タブ)」(NTTドコモ)を"スマートフォン"と言っているが、7 inchの液晶搭載モデルで電話などはしない。スマートフォン(Smartphone)は本来「スマート(賢い)な電話」であり、iPhoneも電話機として登場した。しかし、"スマートフォン"が何を指すのかというと、境界線があいまいとなってきたのではないだろうか。

米AppleのiPadが火を付けた結果だが、先日ラスベガスで開催された世界最大の「家電ショー」(2011 International CES)では、各社から多くの端末が発表され、"タブレット元年"の様相をみせた。今回のテーマである"業務利用"における必要機能は"電話"ではなく"情報端末"、"インターネット端末"であるから、本連載でも"スマートフォン"の境界を広げて考えたい。

図1: 続々と発表されているタブレット端末(一部)。左: GALAXY Tab(NTTドコモ)、上: 韓国Samsung端末、下: パナソニック端末、右: NEC端末。(上、下、右はラスベガス家電ショーでの発表端末、Samsung端末はスライド式キーボード)

図1: 続々と発表されているタブレット端末(一部)。左: GALAXY Tab(NTTドコモ)、上: 韓国Samsung端末、下: パナソニック端末、右: NEC端末。(上、下、右はラスベガス家電ショーでの発表端末、Samsung端末はスライド式キーボード)

スマートフォンの選択(1)

以下では、業務においてスマートフォンを選択する場合に、どういったことを考慮して決定すべきなのかを解説する。

「家電ショー」(2011 International CES)で発表されたタブレット端末は、100種類以上。各社がこぞってタブレット型に傾注するのは、もちろんiPad人気に対抗するため。タブレット型は、デスクトップ・パソコンと携帯電話(およびiPhoneに代表されるスマートフォン)との"すき間"を埋める端末であり、2台目需要が見込めるからだ。

今回"スマートフォンの業務利用"について執筆しているさなかにも、新たな潮流となるかもしれない"タブレット端末"の発表ラッシュがあったことで、モバイル端末を利用した業務のさまざまな可能性について、あらためて考えることができた。

一方では、米Appleの「Apple TV」や米Googleとソニーが共同開発した「ソニーインターネットTV」などの"ネットTV"や、写真をスライド表示する"デジタルフォトフレーム"などには、無線LAN機能を持つものが登場し、販売されている。今後、"モノ"はすべてネットにつながり、本来の機能を超えて境界線があいまいとなっていくのだろう。

話が少しそれたが、iPhoneのような音声通話をともなう3.5 inchほどの画面を持つ端末や、iPadに代表されるタブレット型端末が発表される中、"業務利用"に関しては、流行に流されることなく冷静に端末を選択すべきだ、との思いをますます強くした。

では、業務でスマートフォンを利用する"必要性"とは何だろうか。第1は、もちろん"モバイル"である。

  • 作業環境や作業形態の制約から、モバイル以外の端末を利用できない
  • ロケーション・フィックスでの作業に閉じることなく、ロケーション・フリーでも業務を遂行することで、生産性を上げたい
  • 表現力のある画面を、業務で活用したい

といったことが考えられる。単にノートPCの代替として使われるケースもあるだろうが、「モバイルでも、それなりなサイズと表現力のある画面を、業務に生かす」こと、これは、スマートフォンのような新たな端末が現れたからこそ可能となった新たな利用形態と言える。

次ページ以降も、引き続きスマートフォンの選択について考察する。

アクシスソフト株式会社 代表取締役社長
SI会社においてOS開発、アプリケーション開発、品質保証、SI事業の管理者を経て、ソフトウェア製品の可能性追求のため、当時のアクシスソフトウェアに入社、以降、一貫して製品事業に携わる。2006年より現職。イノベータであり続けたいことが信条、国産に拘りを持ち、MIJS(Made In Japan Software consortium)にも参加、理事として国産ソフト発展に尽力している。

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