Part1 ストレージ市場の動向

2011年9月2日(金)
Think IT編集部

IT戦略とデータの重要性

現代社会は「ITの時代」と言われる。われわれの生活は、ITに支えられていると言っても過言ではない。
また、企業のIT化が進み、電子データの扱いも多様化した。今では、どの企業でも財務情報や契約書、取引明細、顧客情報などの重要な情報が電子データ化されている。
 しかし、ITへの依存度が高まるにつれて、様々なリスクも生まれる。例えば、企業の重要なデータは、社外への漏えいや消失などが決して許されない。企業における情報管理の不備が、事業を悪化させるだけなく、社会的にも大きな影響を与えてしまうケースが多くなっている。それ故に、情報セキュリティやコンプライアンス対応のように、重要なデータを維持・運営する万全な管理体制と安全なITインフラを築く必要がある。
 ITを駆使して競争力のある経営基盤を確立することが、ビジネスの成功を左右する大切な要素となっている。一方、ITのコストを削減しながら事業の利益を上げる戦略を立てなければならない。
 多くの経営者が、このような決して容易ではない判断を強いられている。

ストレージの注目度が高まる

こうした中で、追い打ちをかけるように浮かび上がる課題が、「電子データ容量の増加」という問題である。
 十数年前から、肥大化した分散型のITインフラを、統合によってダウンサイジングし、コストを削減しようとする動きが強まっている。しかし、統合によってスペースやサーバ台数を減らすことができても、データが増加傾向にあるため、データを保管するストレージ・インフラは設備投資の大きな割合を占めるようになった。
 データが増加傾向にある中、どのようにITインフラのコストを抑えつつ、安全にデータを保護すべきなのか。多くの企業がこの難しい問題に直面している。そして、そのカギを握るのが、ITインフラのストレージである。

ローエンド商品の需要が高まる

 ITインフラの中でも特に重要視されるようになったストレージであるが、そのストレージの理解を深めるために、まずは市場に目を向けてみよう。
 前述の通り、企業を取り巻くIT環境の変化に伴い、ストレージ市場も変化している。IDC Japanのレポートを見ると、これまで市場をけん引してきたハイエンド(システム価格3000万円以上)のストレージ市場は縮小傾向にあり、今後はミッドレンジ(同500 万~3000万円未満)やローエンド(同500万円未満)の市場が伸びる(図1-1)。

図1-1●外付型ストレージの国内売上予測(クラス別)
ハイエンド・ストレージの市場は縮小し、ミッドレンジからローエンドの市場が伸びる。IDCジャパンの調査レポートから。

 背景には、サーバ仮想化などのシステム統合によってITシステム・インフラの利用効率を向上させたうえで、さらなる設備投資コストの削減に迫られている企業が増えているという状況がある。企業の規模に関わらず、より安価なストレージが求められていると考えられる。また、データ容量の急増により、ストレージのニーズが中小企業にも広がっていることも一因と言えよう。

低価格/シンプル/効率的が要点

 ストレージ市場の動向を踏まえながら、刻々と変化するビジネス環境の中で、企業がストレージに求める要素を考えてみよう。
 まずは、「低価格」であること。前述の通り、設備投資を最適化するニーズが高まっているため、投資に見合った効果を発揮するストレージ製品を選ぶ傾向が強まる。また、コストを徹底的に削減するには、設備投資だけでなく運用管理コストを削減できる機能や設計も必要だ。
 次に、「シンプル」であること。中小企業にとって、IT部門にストレージ専門の管理者を確保しておくことは困難であり、ストレージ専任者の育成に時間と費用を割く余裕もない。従って、今ある人材でストレージの運用管理を遂行できることが重要になる。
 最後に「効率的」であること。サーバ統合などの要件に対しても、それに見合った柔軟性のある最適なストレージ環境を利用できる製品が求められている。さらに、最新のストレージ技術を取り入れることによって、データが増え続けてもインフラの利用効率を常に高く維持できるようにすることが求められる。

時代が求める「EMC VNXe」

 このような背景や市場のニーズを満たすべく、EMCが満を持してローエンド市場に投入したストレージ製品が、「VNXeシリーズ」である(図1-2)。

図1-2●ローエンド市場に投入した「VNXeシリーズ」の特徴
最小構成で100万円を下回る中小企業向けストレージでありながら、ミッドレンジ・ストレージと同等の機能と可用性を備える。

 VNXeは、中小企業(社員1000人程度まで)のITインフラ環境に最適なストレージ製品であり、大企業の支店・営業所にも適している。最小構成時の価格は100万円を下回る。
 また、ミッドレンジ・クラスのストレージ製品の設計思想を受け継いでおり、このクラスと同等の機能と可用性を備え、コスト・パフォーマンスの高い製品だ。
 シンプルに運用管理できるように設計されていることも、大きな特徴の1つ。管理ツールの使い勝手もよい。メニューはシンプルで、ストレージの専門用語が使われておらず、サーバ管理者でも容易に操作できる。
 日常の業務で必要なストレージ操作は、すべてウィザード化されている。ウィザードに従って必要な情報を入力/選択するだけで作業が完結する。新たに技術者を育成することなく、現在の人材を生かして、少ない作業工数でシンプルに運用できる。コスト削減効果は高い。
 このほか、VNXeシリーズは、サーバ統合に適したマルチプロトコルをサポートしたユニファイド・ストレージである。VNXe 1台で、iSCSIを使ったSANとNAS(ファイル共有)の環境を同時に集約できる(図1-3)。

図1-3●VNXeシリーズが備える主な機能
機能 VNXe 他社エントリークラスストレージ 
管理ツール 標準装備 有償
シン・プロビジョニング 標準装備 オプション
ファイルの圧縮 標準装備 オプション
ファイルの重複除外 標準装備 オプション
スナップショット 標準装備 オプション
NAS(CIFS/NFS)

標準装備(VNXe3100のみ) 

有償
iSCSIサービス・プロコトル  標準装備 オプション
VNXeシリーズはストレージ分野の最新機能を標準装備(無償提供)。このほかにもレプリケーション、アンチウイルス連携、改ざん防止機能等もオプションで利用可能。

 また、ミッドレンジ製品に匹敵するストレージ機能を提供する。特に、データの重複除外・圧縮機能、シン・プロビジョニングなどの優れたストレージ機能は、すべて標準装備であり、別途ライセンス費用がかからない。これらの機能を駆使すれば、データの増加に対するコスト抑制効果が大いに期待できる。
 さらに、セキュリティとコンプライアンス面では、オプションとしてウイルス対策機能やデータの改ざん防止機能なども利用できる。洗練されたレプリケーション機能も備えており、災害対策のインフラとしても利用できる。
 VNXeは、他社製品と比べて、低価格かつ高機能で、管理機構もシンプルで、効率もよい。これらの特徴は中小企業のニーズに合致しており、今後のローエンド市場におけるスタンダードとなる可能性を秘めている。次回より、より具体的なストレージ機能紹介および活用例を紹介する。


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