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『nanapi』CTO和田修一に聞く~月間PV4000万超をさばくシステムと、「事業を動かす肌感覚」の作り方

2012年9月20日(木)
『エンジニアtype』編集部
CTOが、他社CTOに直接聞きたいことを聞く!自らもエンジニアながら、3社の経営に携わっている竹内真氏をインタビュアーに迎え、注目のIT・Webサービスを展開する企業の技術トップにインタビューを敢行するこの企画。ビジネスの最前線で、技術のみならず経営をも担うCTO同士の対話から、エンジニアがどのように「ビジネスを創ることのできる技術屋」へと進化すべきか、その思考・行動原則をあぶり出していく。
ライフレシピ投稿サイト『nanapi(ナナピ)』

ライフレシピ投稿サイト『nanapi(ナナピ)

連載の第1回目となる今回登場してもらったのは、みんなで作るレシピサイト『nanapi』を運営するnanapiのCTOである和田修一氏だ。

立ち上げからわずか3年で、月間PV数4000万(※2012年8月時点)を超えるサービスに育て上げるまでの苦労と、CTOとして活躍するための秘けつや心構えについて聞いた。

CTO対談「BizHack」 インタビュアー・プロフィール

株式会社レイハウオリ 代表取締役 | 株式会社ビズリーチ・株式会社ルクサ CTO
竹内 真氏 (blog:singtacks

電気通信大学を卒業後、富士ソフトを経て、リクルートの共通化基盤やフレームワークの構築などを担当。並行してWeb開発・制作会社であるレイハウオリを設立。その後、ハイクラス転職サイトを運営するビズリーチ、国内最大級のタイムセールサイトを運営するルクサを創業、CTOに就任。mobyletなどのOSS活動も行っており、The Seasar Foundationのコミッターとしても活躍

今回のゲストCTO

株式会社nanapi 取締役 CTO
和田修一氏 (@wadap

中央大学経済学部卒業後、2005年に楽天入社。楽天市場の運用担当のほか、台湾版楽天市場の設計・構築・運用などに携わるなど、インフラエンジニアとして活躍。現在は、CTOとして2009年9月オープンのライフレシピ投稿サイト『nanapi(ナナピ)』を技術・経営の両面から支えるかたわら、講演や執筆、メディア出演経験も多数。個人ブログ『Unix的なアレ』も人気

竹内 はじめまして、本日はよろしくお願い致します。

和田 こちらこそよろしくお願いします

「サービス開始がほぼ一緒」という理由で、和田氏に親近感を持っていた竹内氏

「サービス開始がほぼ一緒」という理由で、和田氏に親近感を持っていた竹内氏

竹内 実は、和田さんが手掛けてこられた『nanapi』と、わたしがCTOを務める『ビズリーチ』は、サービス開始時期がほぼ同時期なんです。

和田 あ、そうなんですね!

竹内 それで、創業期からのCTOとして立ち上げを経験をした人間同士、親近感を感じていたのですが、実際『nanapi』を作り上げるにあたって、上手くできる自信というか、勝算みたいなものってありましたか?

和田 もちろん会社経営は初めてのことですから、あまり自信があったわけではありません。でもそれは、Webサービスを作ってうまくビジネスにしていけるかどうか多少の不安があったという意味で、会社として利益を出しながら潰さないようにやっていくことは、何とかできるだろうという自信はありました。

竹内 経営という観点から言うと、それだけでも十分素晴らしい自信だと思うのですが、なぜそう思えたのでしょう?

和田 わたしはどちらかというと『ザ・エンジニア』みたいな指向がそもそも薄い方だからだと思います。大学も文系出身ですし、新卒で入った楽天での配属先もたまたまエンジニアリングを担う部署だっただけで、そもそもエンジニアを志望していたわけでもありませんでした。

竹内 そうなんですか。

和田 そのせいか、「必要であればエンジニアリングを捨ててでも何とかする」という気持ちはどこかに持っていたように思います。もしかしたら、それが大きかったのかも知れませんね。

起業直後の「キャッシュとの戦い」は、受託や生活水準を落としてやりくり

竹内 それともう一つ、お会いしてぜひ伺いたかった質問があるんですがよろしいですか?

和田 ええ、どうぞ。

竹内 どんな会社も、スタートアップ時は「キャッシュとの戦い」を強いられます。実際、わたしも経験しましたが、自分に払う給与を削らなくてはならないことも少なくありません。nanapiにもそうした厳しい時期もあったと思いますが、どうやって切り抜けられたんですか?

和田 正直、前職の楽天にいた時の方がはるかに年収も高かったので、都内の実家に戻ったり、食べるものや身に付けるものは意識的に削って、生活水準を落としました。実は会社としても『nanapi』開発のかたわら、受託を請け負ってしのいだ時期もあったんですよ。月末になると銀行残高とにらめっこして、来月やるべきことを決める、なんてこともありましたね。

創業時は「生みの苦しみ」を味わった和田氏だが、20代の起業を肯定的にとらえている

創業時は「生みの苦しみ」を味わった和田氏だが、20代の起業を肯定的にとらえている

竹内 中には、そういう金銭的な厳しさがイヤで起業を躊躇する人もいるようです。

和田 でもわたし自身、20代で年収にこだわるって、意味がないことだと思っていましたからそんなに苦ではありませんでした。だって、経験の方がはるかに大事じゃないですか? 

竹内 本当にそうですよね。

和田 起業以前からそういう考えがあったので、年収が減ることも、生活水準を落とすことも受け入れられたんだと思います。でも、それができたのは20代だったからかもしれませんね。

竹内 その理由は?

和田 年を重ねると、どうしても背負うものが増えますから。「やらない理由」や「できない理由」も同時に増えてしまいます。若いうちに起業してよかったと思うのは、そういう部分かもしれません。

竹内 分かります。逆にそうした厳しい状況にあっても削らなかったものはありましたか?

和田 この世界って最終的には身体が資本だと思っていたので、ジムの費用だけは削りませんでした(笑)。

竹内 それは素晴らしい! 僕は全然運動していないので、根性で乗り切ってますよ(笑)。

和田 それは人それぞれなんでしょうね(笑)。わたしは体力的にも精神的にも常に一定のパフォーマンスが出せるようにしておくことが大事だと思っていたので、運動だけは続けていたんです。

大量アクセスを低コストでさばく、nanapi流のバックエンド構築法

竹内 ちょっと技術の話も聞いてもいいですか? インフラ含め、何もかも自分自身で決定しなければいけないのがスタートアップのCTOだと思いますが、『nanapi』はどういう構成でスタートを切られましたか?

和田 いわゆるLAMPです。今も基本的な構成は変わっていません。

竹内 どうしてLAMPを選択されたのですか?

「小さなチーム」でシステム構築する際の判断軸を話す2人。想定されるリスクとどう付き合うかカギとなる

「小さなチーム」でシステム構築する際の判断軸を話す2人。想定されるリスクとどう付き合うかカギとなる

和田 LinuxやApacheは楽天時代から使い慣れてたというのが一番の理由ですね。PHPに関しては、代表取締役の古川(健介氏)も少し使えるので、「もし僕が倒れても何とかなるだろう」と(笑)。

竹内 コーポレートリスクも回避する一石二鳥の選択だったわけですか。この構成にして、特に良かったなと思うことはどんな点ですか?

和田 PHPでないとできないことってあまりないので、技術的な部分というよりは、むしろリソース確保の意味でとても良い選択だったと思っています。今にして思えば、この構成を選んだからこそ現在のエンジニアチームが作れたわけなので、そういう部分で良かったなとは思います。

竹内 なるほど。ところで和田さん自身は、もともとPHPはお得意だったんでしょうか?

和田 いいえ。楽天にいた4年間は、ほとんどインフラに携わっていたので、得意ではありませんでした。本格的に学んだのは起業してからになります。技術書を読んで、勉強した新しいシステム構成を少しずつ『nanapi』に反映させていたせいか、どうしても起業後の自分の成長と『nanapi』の成長がリンクしているように感じてしまいますね。

竹内 今まで大がかりなシステムのアップデートは何回ぐらいされましたか?

和田 丸3年で5回です。

竹内 となると、楽天時代から一貫してインフラにかかわっていることになるんですね。この間、バックエンドのシステムに対する考えで変わった部分あるのでしょうか?

(次ページに続く)

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