「OpenStack Paris Summit 2014」技術セッション聴講レポート

2014年11月10日(月)
天野 光隆(あまの みつたか)

こんにちは、ミラクル・リナックスの天野です。11/3(月)から11/5(水)にわたってフランスで開催された、OpenStack Paris Summit 2014に参加しました。技術セッションを聴講して、個人的に気になったセッションをいくつか紹介します。

1. A Practical Approach to OpenStack High Availability, IBM

OpenStackのサービスをDocker上で動かすという試みです。単純にサービスを動かすだけでは動作せず、Portの固定化やbind mount(-v)を使ってログを集約させるなどの工夫が必要になります。サービスの隔離に寄るセキュリティ強化、構成のバージョン管理、数秒で行われるデプロイ等が今回の利点になります。デモではShipyard(https://github.com/shipyard/shipyard)のDocker管理ツールからglance-apiをCloneし、haproxyが負荷分散対象として自動的に検出しています。非常に興味深い内容でした。

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2. Cold start booting 1000 VMs in under 10 minutes, CERN

Cold boot(電源停止状態)から10分以内で1000VMを動かす方法です。重要なポイントは、ディスクイメージの圧縮(圧縮・解凍両方の速度が早いこと)、Proxyを使ったキャッシュ。Novaがディスクイメージを解凍するので、イメージファイルのファイルサイズはできるだけ小さく、かつ高速で解凍しなければいけません。検証の結果、gzip -6(圧縮レベル)での処理が最も高速でした。Proxyを使ったキャッシュですが、OpenStackのAPIはHTTP(REST API)なのでHTTP ProxyをサポートするSquidが有効でした。

最終結果として1200VMの起動にかかったのが3.7時間、本工夫の適用でなんと8.3分!Grizzly(2013.1)ではNovaのプロキシサポートが無かったこと、他のプロキシソフトは試しておらずSquidのみ検証を行ったこと。そしてここで提案されたのは1. Novaのプロキシサポート、2. Glanceの自身の圧縮イメージサポートです(Juno(2014.2)にはまだ実装されてない?)。以前GSoC(Google Summer of Code)でこのアイデアを出したのですが、採択されなかったそうです。将来この手法が標準(もしくはオプション)として完全に実装されると手軽に大規模なnode展開がしやすくなるでしょう。

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3. Are We Done Yet? Testing OpenStack Deployments, Solinea

OpenStackの代表的なテストツールとしてTempest(https://github.com/openstack/tempest/tree/master/tempest)とRally(https://github.com/stackforge/rally)がありますが、Tempestは設定が複雑で導入に時間が掛かる点を指摘し、ここではRallyを紹介されていました。ほぼ全てのOpenStackのコンポーネントに対してテストシナリオを書くことが出来ます。デモではKeystone上でのユーザ作成を100回行うテストを行いました。単体テストとしてrun_test.shが各コンポーネントのソースに用意されていますが、自らが修正したコードを確かめるためのものであり、ユーザオペレーションを意識したテストや負荷をかけるようなテストは出来ません。このようなテストツールが構築の上で必須になっています。

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おわりに

OpenStack Summitのセッションは様々な構築アイデアやパフォーマンス結果、設定ノウハウ、構築の苦労話などが発表されており、今後のクラウドサービス構築のヒントが詰まっています。来年も2回開催される予定で10月は東京で行われます。ますます盛り上がりをみせるイベントなのでぜひ参加してみてください。

著者
天野 光隆(あまの みつたか)
ミラクル・リナックス株式会社
HCMC開発部部長。組込み系Linux開発から始まり、2011年には中国・北京で自社製品のQA、開発センターのサーバ管理、今年2014年2月にはベトナム・ホーチミンに移り、Linuxディストリビューション開発の管理や現地エンジニアのLinux技術に関する教育をしている。
15歳の時に初めて触ったRed Hat 7.3から今日までLinuxの世界に入り、ディストリビューションカスタマイズ、Kernel module開発、特定プラットフォームに向けたcrash, oprofile等のカスタマイズ等を行ってきた。現在は既存の開発効率を上げるため、Jenkins等のCIに興味がある。

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