VMware、ハイパーコンバージドアプライアンスのEVO:RAILをデータセンター向けに進化

2015年9月5日(土)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

2015年8月30日よりサンフランシスコにて開催されているVMworld 2015。VMwareは昨年のVMworldで発表したハイパーコンバージドインフラストラクチャーアプライアンス「EVO:RAIL」の上位機種となる「EVO:RACK」を新たに「EVO SDDC」として発表を行った。

ハイパーコンバージドインフラストラクチャー市場では、ホワイトボックスサーバーを使いソフトウェアだけでスケールアウトできるCPUやストレージ、ネットワークを統合したアプライアンスとしてNutanixやSimplivityが先鞭を切ったが、VMwareによるEVO:RAILの発表からDELLやEMCなどもこぞってハイパーコンバージドインフラストラクチャー市場に参入してきたことは記憶に新しい。

Nutanixはかつて、VMwareによるEVO:RAILの発表を「ハイパーコンバージドインフラストラクチャーの優位性がVMwareによって実証された」と歓迎のエールを送ったことがある。VMwareはさらに、このアプライアンスに「Software-defined Data Center(SDDC)」という略称をつけて「手軽なアプライアンス」という位置付けから「データセンターを瞬時に立ち上げるためのプラットフォーム」として再定義しようとしている。

前置きが長くなったが、今回はEVO:RAILの責任者が行ったブリーフィングと著者のQ&Aによる「EVO SDDC」の概略をお届けする。

ブリーフィングを行ったのは、モネィ・ヴァンダーヴォルト(Mornay Van Der Walt,Vice President, R&D, EVO:RAIL)氏とブライアン・エヴァンス(Bryan Evans,Director, Product Management, Marketing & Integration Architects, EVO:RAIL)氏だ。

Q&Aに答えるヴァンダーヴォルト氏(左)とエヴァンス氏(右)

―― 最初に確認ですが、EVO SDDCはかつてEVO:RACKとして発表を行った製品の名称を変えたもの、という認識で良いのでしょうか?

エヴァンス氏:その通りです。これまでハイパーコンバージドインフラストラクチャー製品として、シンプルなアプライアンス製品であるEVO:RAILとその上位機種としてのEVO:RACKを発表しましたが、そのうちの1つ、EVO:RACKをEVO SDDCとして発表を行ったということです。

―― 去年のVMworldで発表を行ったEVO:RAILですが、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーとしては後発になると思います。昨年の発表から今日まで計画通りに導入が進んでいるのでしょうか?

ヴァンダーヴォルト氏:我々は個別の製品に関しての業績を発表はしていませんが、すでに2000社の導入事例があります。これは短い期間での販売実績としては評価できるのではと考えています。またハイパーコンバージドインフラストラクチャーの中で利用されているハイパーバイザーは90%以上が「vSphere」であるという調査もありますので、結果的にVMwareのソリューションが顧客の中に浸透する結果になっており、その部分でも非常に満足しています。

―― 今回のジェネラルセッションでも「Unified Hybrid Cloud」ということでパブリックなクラウドサービスである「vCloud Air」からオンプレミスのvSphere環境との連携が強調されていましたが、EVO SDDCにおいてもその部分は機能として強調していく考えですか?

エヴァンス氏:EVO SDDCのコアはvSphereと「NSX」、それに「VSAN」というVMwareの基本的な仮想化プラットフォームですので、オンプレミスで可能なことはEVO SDDCでも可能です。EVOシリーズの特長はアプライアンスとして素早くシステムを利用可能にする部分にありますので、特にその部分だけを強調していくことはないでしょう。vSphereでできることはEVO:RAILでもEVO SDDCでもできる、ということになります。

―― これまでのEVO:RAILと上位のEVO SDDCに加えて、より価格の安いアプライアンスを販売する可能性はありますか?

ヴァンダーヴォルト氏:システムの基本的な構成として最低でも3つのコンピュートユニットが必要ですので、今のEVO:RAILの構成をスケールダウンすることはないと言って良いと思います。ただし、価格の面でEVO:RAILより安いシステムを提供することはシステムのアーキテクチャー的には今すぐにでもできますが、それは予定にはありません。EVO:RAILは1つの製品SKUだけで構成されており、ハードウェアとは別にVMwareのソフトウェアのライセンス、それに3年間のサポートが全て含まれている形になります。これによって、より簡易にアプライアンスを導入できるところに利点があると考えています。日本ではパートナーのニーズに合わせて5年間のサポートを設定しているパートナーもあります。日本においてはシステムインテグレータが導入支援やコンサルテーションなども含んでシステムを販売している場合が多いと思いますので、一概に全てをセットしていることが利点になるとは限らない、という話は日本に行く度に聞かされる話ですが(苦笑)。

―― 競合とされるNutanixは近くオールフラッシュの製品を出すと噂されていますが、EVO:RAILはSSDとHDDのハイブリッドシステムです。オールフラッシュの製品を出す予定はありますか?

ヴァンダーヴォルト氏:オールフラッシュの製品を求める顧客は全体の中では非常に限られた少数の顧客、限定された使い方においてのみと認識しています。大多数の顧客には必要がないと思いますので、今のところオールフラッシュのEVO:RAILを出す予定はありません。

VMworldで開催されている「EVO:RAIL Challenge」。システムの立ち上げ時間と稼働させたVMの数を競うコンペ。優勝賞品は来年のVMworldの無料招待券だ

EVO:RAILに関しては今回のイベントに参加した複数のVMware導入顧客にも評価をヒアリングしたが、総じて「価格が高い」というものだった。VMware本社の製品責任者としてみれば、「北米で売れているEVO:RAILが日本でも同様に売れて欲しい」と思うのは当たり前としても「競合と比較しても価格が高い」というフィードバックが今後のVMwareのハイパーコンバージドインフラストラクチャー戦略にどのように反映されていくのか、来年のVMworldで振り返ってみたい。

EVO:RAILの最大の競合、Nutanixのブース。常に賑わいを見せていた

ヴィエムウェア株式会社のEVO:RAIL公式ページ
http://www.vmware.com/jp/products/evorail/

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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