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未来が近づく、新世代ネットワーク!

【ネットワーク教習所】
未来が近づく、新世代ネットワーク!

第3回:無線が変わる!コグニティブ無線

著者:情報通信研究機構 原田 博司

公開日:2008/03/17(月)

なぜコグニティブ無線が必要なのか

本連載では、新世代ネットワークのさまざまな技術を取り上げる。第3回の今回は「コグニティブ無線」を紹介しよう。

コグニティブ無線は、無線機が周囲の通信環境に応じて最適な周波数や通信システムを選択することにより、限られた周波数帯域内でできるだけ多くの無線通信システムを共存させ、できるだけ多くの人にブロードバンド通信環境を供給することを目指す新しい無線技術だ。2015年頃にかけてコグニティブ無線の本格的な導入が検討されつつある。

現在、2015年頃の移動通信システムにおいてはブロードバンド化に伴う周波数不足が非常に大きな問題として考えられている。実際に、毎年のように新しい無線LANシステム、携帯電話システム、新しいブロードバンドワイヤレスアクセスシステム(WiMAXなど)が標準化され、それに対してどのように周波数を割り当てていくかが問題になっている。

特にシステムが新しくなるほどブロードバンドになるのでその割り当ての困難さは尋常ではない。また周波数も無限にはないので、いずれは枯渇化してしまう。ではどのように周波数を確保すればよいのだろうか。

コグニティブ無線は、現在の無線システムの周波数割り当てを変更することなくユーザが必要となる周波数帯域を確保する夢のような技術なのである。

図1:周波数の割り当ての現状と未利用周波数対策

コグニティブ無線とは

図1を見ていただきたい。現状は、各周波数帯に各種無線システムが割り当てられている。そして、その間に空き周波数帯があり、そこに新しく標準化される無線通信システムを割り当てることになる。しかし、その空き周波数帯が新システムを割り当てるために十分な広さがあるとは必ずしもいえない。この周波数を確保するために、同図に4つの方法を示している。

まず図1(a)に示すように、周波数の再割り当てを行い,空いた周波数帯を用いてブロードバンド通信を行う方法である。これは確かに理想ではあるが、いったん割り当てた周波数を移動させるのは困難を極め、大変時間がかかるという問題がある。

次に図1(b)のように、既存のシステムに割り当てられた周波数帯に干渉を与えない低い電力で送信させ、できるだけ広い周波数帯域でブロードバンド通信を行う方法が考えられる。これは、低い電力で送信させなくてはならないので、遠くまで通信させるシステムには不向きである。

上記2つの問題を解決するための方法として、以下の2つがある。1つは図1(c)の現状各既存システムの間で空いている周波数帯、時間帯を無線機が見つけ出し、その周波数帯を用いてユーザが通信を行う方法である。もう1つは図1(d)のように現状存在する無線システムを無線機が見つけ出し、必要に応じて複数選択し、束ねて伝送することによりブロードバンド化をはかる方法である。

いずれも既存の方法を変更させることなく、ブロードバンド化が実現できる。そしてこれを実現するためには、無線機が周囲の電波利用環境をセンシングし、その結果に応じて最適な周波数や通信システム/方式を選択する必要性がある。これがコグニティブ無線である。

次にコグニティブ無線を支える新世代ワイヤレスネットワーク「コグニティブ無線クラウド」について解説しよう。 次のページ




独立行政法人 情報通信研究機構  原田 博司
著者プロフィール
独立行政法人 情報通信研究機構 原田 博司
新世代ワイヤレス研究センター ユビキタスモバイルグループ 研究マネージャー
1995年、通信総合研究所(現情報通信研究機構)入所。以来、ソフトウェア無線技術、コグニティブ無線技術、ブロードバンドワイヤレスアクセス、ミリ波WPANの研究開発、標準化に従事。現在、米国SDRフォーラム、Board of Directorsとしても活躍中。


INDEX
第3回:無線が変わる!コグニティブ無線
なぜコグニティブ無線が必要なのか
  コグニティブ無線を支える新世代ワイヤレスネットワーク
  コグティブ無線機の実現を目指した研究開発項目