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未来が近づく、新世代ネットワーク!

【ネットワーク教習所】
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第3回:無線が変わる!コグニティブ無線

著者:情報通信研究機構 原田 博司

公開日:2008/03/17(月)

コグティブ無線機の実現を目指した研究開発項目

このコグニティブ無線機の実現のためには、無線機のハードウェアに対しては、できるだけ広い周波数帯にわたってセンシングを行うことができる機能、通信を行うことができる機能を具備させる必要がある。また、センシング項目も、受信信号電力のみならず、データ誤り率、基地局/アクセスポイントに対する接続性などに対してもセンシングができるよう無線機の機能を変更させる必要性がある。

また、無線機のソフトウェアに関しては、センシングを行わせる機能、センシングした結果を整理する機能、整理されたセンシング結果に基づいて、最適な周波数や通信システム/方式を選択することが可能なコグニティブ無線用エンジンが必要となる。

図3:開発されたコグニティブ無線機

コグティブ無線機の実現を目指した研究開発結果

以上の項目を検討し、コグニティブ無線機の開発を行った。図3(a)に開発した無線機を示す。無線機は図3(b)に示す高周波部と、図3(c)(d)に示すデジタル信号処理部からなる。この無線機は地上波デジタルTVなどが運用されているUHF帯から、携帯電話、WiMAXなどのワイヤレスアクセスシステム、2.4GHz帯、5GHz帯無線LANなどをセンシング可能である。

無線機を立ち上げ、センシング機能をスタートさせると、図3(e)に示すように各周波数帯のセンシングが開始され、信号の有無がチェックされる。しかし、このセンシング結果はあくまでも信号のレベルだけをみているのであって、ひょっとすると干渉波かもしれない。

そこで実際にどのシステムがあるのか、本当に接続可能かどうかを調べるために、無線機は利用可能な通信システムを実際に高速に切り替えて運用させることにより、同定を行う(図3(f))。

この無線機ではIEEE802.11a/b、W-CDMAの機能が利用できるため、これらの機能を用いて、より詳細な同定を行うことができる。

その結果図3(f)に示すように、現在の無線機の環境ではIEEE802.11a/b、W-CDMAの利用ができることがわかった。

そして次は、ユーザの好み、ネットワーク(CNM)からの情報を元に、最終的に接続する周波数、無線システムを決定し、そのシステムで通信できるように無線機の機能を変更し、通信を行う。

この場合は前述のシナリオの第一段階および第二段階に対応できるように、既存のシステムを複数選択することも可能であるし、シナリオの第三段階のように利用者がいない周波数帯で通信を開始するといったことも可能である(ただしシナリオの第三段階の実現には法整備が必要)。

このようにコグニティブ無線を実現するための基礎実験は成功をしており、今後はこれをどのようなかたちでどのように次世代のネットワークに組み込んでいくかが重要な課題になる。

3月24日公開の第4回では、超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」について紹介する。 タイトルへ戻る




独立行政法人 情報通信研究機構  原田 博司
著者プロフィール
独立行政法人 情報通信研究機構 原田 博司
新世代ワイヤレス研究センター ユビキタスモバイルグループ 研究マネージャー
1995年、通信総合研究所(現情報通信研究機構)入所。以来、ソフトウェア無線技術、コグニティブ無線技術、ブロードバンドワイヤレスアクセス、ミリ波WPANの研究開発、標準化に従事。現在、米国SDRフォーラム、Board of Directorsとしても活躍中。


INDEX
第3回:無線が変わる!コグニティブ無線
  なぜコグニティブ無線が必要なのか
  コグニティブ無線を支える新世代ワイヤレスネットワーク
コグティブ無線機の実現を目指した研究開発項目