レイヤー3スイッチが生まれた背景
現在のネットワーク構成においては、ネットワークの負荷分散、冗長化が一般的です。これらを実現するためにレイヤー3スイッチと、RIP(Routing Information Protocol)、OSPF(Open Shortest Path First)、VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)といったルーティングプロトコルが使われています。
今回はレイヤー3スイッチと主なルーティングプロトコルについて説明します。まず、レイヤー3スイッチの登場の背景を見てみましょう。
ネットワークの初期においては、中・大規模ネットワークのほとんどの場合、ルーターを使ってバックボーンを構築していました。しかしながらネットワークの活用が飛躍的に進み、グループウェアなどのアプリケーションや、音声・動画などの利用によるサーバファームへのアクセスが増大し、インターネットに代表される外部ネットワークとの接続が激増しました。そのため、これまでワークグループ内にとどまっていたトラフィックがバックボーンへ流れ出すようになったのです。
これに伴いルーターに負荷が集中し、ルーターがボトルネックとなりネットワーク全体のスループットが低下するという問題が発生しました。また、それと同時にルーターがパケットを処理する速度をこれ以上高速化できないという問題も起こりました。従来のルーターはソフトウェアでパケットを処理しており、ハードウェアでパケット処理をしているスイッチと比べると処理速度が極端に遅いという欠点がありました。
拡大し続けるネットワーク規模と膨張し続けるトラフィックに対応するためには、これらの「ルーターへの負荷の一極集中」と「ソフトウェアでのルーティング処理速度の限界」の2つの問題を解決することが不可欠となってきたわけです。
そこでまず、「ルーターへの負荷の一極集中」という問題に対処するために、ネットワークに散在するスイッチにルーティング機能を追加し、ルーティング処理を分散すること、すなわち「負荷分散」によりネットワーク全体のスループットを向上させようという動きがはじまりました。
そこで生まれたのが、スイッチにルーティング機能を追加した「レイヤー3スイッチ」です。
ソフトウェアでのルーティング処理速度の限界の解決
当初のレイヤー3スイッチのルーティング機能は、従来のルーターと同様にすべてソフトウェアで処理されていました。この時点では、「ソフトウェアでのルーティング処理速度の限界」という問題はまだ解決されていません。
この問題を解決するため、ソフトウェアで行っていたレイヤー3スイッチのルーティング機能を、少しずつハードウェア化していこうという動き生まれました。まず、アドレステーブルに対するクエリーから対応し、次にパケットのフォワーディング処理もというように、ハードウェア化する部分が増えていき、すべてのルーティング処理をハードウェア化したレイヤー3スイッチとなったわけです。
また同時に、ハードウェア化にはASIC(Application Specific Integrated Circuit)と呼ばれる特定用途向けIC(集積回路)をスイッチに使用することで、高速化と低価格化を実現しました。このようなレイヤー3スイッチの普及に伴い、現在ではレイヤー3スイッチをワークグループに設置して負荷分散型ルーティング環境を構築し、バックボーン機器(ルーター/レイヤー3スイッチ)の負荷を平準化するとともに、高速なパケットのフォワーディング処理を実現しています。
また、レイヤー3スイッチは従来のルーターに比べて低価格なため、高速なバックボーンを低コストで構築することに利用されています。 次のページ