エンジニアの設計・管理の負担を減らす最新スイッチの技術
今回は、最新のスイッチの動向について解説していきます。前回説明したように、従来ネットワークの冗長化はレイヤー3スイッチとさまざまなルーティングプロトコルを複雑に組み合わせることで図られてきました。
しかし、最新の冗長化の手法では、複雑なルーティングプロトコルを使わずに、またネットワークの接続形態(トポロジー)も複雑な階層構造ではなく、よりシンプルな構成にする方法がとられています。この結果、エンジニアの設計・管理の負担は従来に比べて大幅に軽減されるようになりました。
次にこれらを実現した最新のスイッチの機能について、当社のアドバンストレイヤー3・ギガビットイーサネットスイッチ「CentreCOM x900シリーズ」をもとにご説明していきましょう。
VCS
まず最初にご説明するのはVCSです。VCS(Virtual Chassis Stacking:バーチャルシャーシスタック)は、複数台のスイッチをスタック接続することで仮想的に1台のスイッチとして動作させる機能です。
利点としては、全スタックメンバーがアクティブとして動作しながら機器冗長や負荷分散をすることが可能となります。また、スイッチを跨いだポートトランキング接続を用いることで回線冗長も実現することができます。前回説明した、従来の冗長化で使う機会の多かった「VRRPとSTP」の構成を、「VCSとポートトランキング」に置き換えることで、シンプルなネットワークが構築できます。さらに、マスタースイッチで複数台のスタック接続されたスイッチを一元管理できるため、運用・保守の工数およびコストの削減もできます。
それでは、従来の冗長化で使用していた「VRRP+STP」とVCSはどこが異なるのでしょうか?
従来のネットワーク構成では、上位のレイヤー3スイッチと配下のレイヤー2スイッチにおいて、それぞれの冗長プロトコルを使った設定が必要となり、管理する上でも非常に複雑なものでした。
これに対してVCSでは、コア・スイッチをVCSで接続することで、スタックグループ内でレイヤー2/レイヤー3のテーブルを同期します。それによって配下のスイッチおよび上位のルーターに対してポートトランキングを設定するだけで、回線の冗長化が実現できるのです。さらに、VCSで接続されたコア・スイッチはアクティブ/アクティブの運用となるため、トラフィックは2台に分散され負荷分散も容易にできます。 次のページ