VCSの管理性と障害復旧におけるメリット
管理性の面でも、VCSはマスタースイッチから、構成している各スイッチを一元的に管理することができるので、コンフィグの一元管理、ログ・デバッグ情報の一括取得、SNMPなどの統合監視など、複数のスイッチを個別に管理する場合に比べて管理性が格段に向上しました。
また、障害復旧の面でもVCSは利点があります。VCSグループの各スイッチはすべてアクティブ状態で動作します。ポートトランキングと組み合わせることで、回線の冗長化を図れるとともに、通常時は予備回線の帯域もフルに活用することが可能です。
1本の回線の障害時には残りの回線を使用するため、ネットワークの運用を継続することができます。また、スイッチ単体の障害時には、ネットワークを停止することなくVCSグループ内からの削除、代替機の追加といった作業を行うこともできます。
次にご説明するのは、リング構成のネットワークで使用されるイーサネットリングプロテクション機能のEPSRです(図2)。
EPSR
EPSR(Ethernet Protected Switched Ring)は、レイヤー2のループ防止・冗長化機能(RFC3619)ですが、トポロジーをリング構成に限定し、各スイッチの役割をあらかじめ固定することにより、障害の検出と経路の切り替えを高速に行うことができます。
リング構成のネットワークは、これまでのオフィスネットワークでは馴染みのない構成でしたが、縦長のビルの各階フロアにオフィスが配される日本の一般的なオフィス環境や、建物の間が離れている工場などを結ぶネットワークを構築する場合には、従来の階層型(スター型)ネットワークでは、ケーブルの敷設コストが割高となる傾向がありました。また、建物の間が離れている場合は、物理的に敷設が不可能な場合もありました。
これに対して、リング型トポロジーはネットワーク機器への投資とケーブル費用などの敷設コストを抑えることができます。EPSRの利点としては、トポロジーをリング構成に限定しているため、各スイッチの役割をあらかじめ固定することにより障害検出と経路切替えが高速(最短で50ms以内)でできることにあります。
また、スパニングツリープロトコル(STP)のように明示的な段数制限はないため、リングに所属するスイッチが100台単位になるような大規模なネットワークにも適用することが可能です。このため、音声や動画などの通信断が許容されないアプリケーションを利用するネットワークにも最適な冗長プロトコルです。 次のページ