【ネットワーク教習所】
ニューラルネットワークの可能性
第1回:ニューラルネットワークとは?
著者:シンクイット編集部
公開日:2008/03/05(水)
人工知能とニューラルネットワーク
人間の脳というと、人工知能を思い浮かべる方もいるのではないだろうか。しかし、ニューラルネットワークと人工知能は、似て非なるものである。
人工知能とは、コンピュータで人間と同等の知能を再現する試みのことである。あくまで、「人間の知能の再現」である。冒頭でも述べたように、ニューラルネットワークは人間の脳を再現する試みであり、その根本が大きく異なる。
そのため、その方向性にも違いがある。例えば、人工知能では対話型の案内や、サービスに対する受け答えなど、人間が行っている作業を代わりにコンピュータが行うことを想定している。人工知能は英語でArtificial Intelligence、つまりAIと表現される。
ニューラルネットワークでは、人間の脳を模した情報処理によって、問題解決を行う(情報を処理する)ことを目的としている。ニューラルネットは計算知能(Computational Intelligence)と呼ばれる分野の研究である。しかし近年では、人工知能という言葉が広く用いられるようになり、人間の知能に関するアプローチや手法をまとめて人工知能と呼ぶケースもある。
ファジィ理論による人工知能
計算知能という分野でニューラルネットと並んで取り上げられるものにファジィ理論がある。一時期、日本でも家電製品にファジィという言葉が用いられていた。読者の皆さんも、テレビのCMなどで見聞きしたことがあるだろう。
このファジィとは「曖昧(あいまい)」という意味である。人間の感覚的な部分、例えば温度を表現する場合、「ちょうどよい」「なんとなく」など明確な数値が難しい曖昧なものを表現する理論である。通常、1か0で表わすものを、0.7や0.3など中間の値で表わすことで、曖昧さを表現するのである。
ここでは、将棋を例に少しファジィ理論の考え方を紹介したい。将棋というルールは、81×81の升目の中で、駒を交互に動かしながら、相手の王将を取るボードゲームである。従来型のコンピュータを用いたアプローチでは、駒を1動かす場合、その強力な計算能力によってすべての手順を計算し、駒の動きを決定する。しかし、将棋は持ち駒というルールから、駒の配置や動かし方の種類が膨大であり、最良の1手を計算するのに時間がかかる。
そこで、ファジィ理論を用いる。例えば、1つ前に進めることを0.7、後ろに下がるのを0.3と重みづけをする。他にも、駒を取る0.8、成る(裏返る)0.5など、駒の動きを数値化する。1か0ではなく、その中間の値にするのがポイントである。これらのすべての数値から、駒の動かし方を数値化し、最適解を導くのである。
このように人間の知能を再現するという試みはさまざまあり、日々研究されている。さて、話を本題のニューラルネットワークに戻そう。一口にニューラルネットワークといっても種類がある。 次のページ