最強ロボットを作れ!−FLL挑戦記
第1回:みんなでロボットを作ろう!
著者:オムニチュア 酒井 秀樹、ファーストキャリア 岩田 徹
公開日:2008/04/11(金)
最初の戦略:分子モーターに向かってまっすぐ進め
最初にチームが試みたのは、戦略1だ。この戦略用にチームは図2の(2)のロボットを開発した。このロボットは手前に取り付けたハの字型のアタッチメントにより側面から分子モーターを挟み込み、ロボットの位置を固定し、右側のアームを分子モーターの黒い枠にぶつけ、分子を落とすことができた。
ロボットの実際の動きは、図2の(1)の緑の矢印の通りだ。まず、ベースから上部に向けて出発し15cm程度進み、車輪の回転差を利用してロボットを分子モーターに向けて90度回転する。
毎回、正しく90度方向に回転できるわけではないため、後進して後部を壁にぶつけ角度を補正し、分子モーターに向けて直進する角度を作る。前部の車輪を下ろし分子モーターに向けて直進し、分子モーターの手前で停止する。前部の車輪を上げ、そのまま直進し分子モーターを挟み、ロボットの位置を固定するのと同時に、分子を正方形の枠に落とす。
関東地区大会までにここまで作ったのだが、この戦略およびロボットは精度が低く、ミッションをクリアするのに時間がかかった。課題はアタッチメントを含めたロボット自体が重く、電圧の高い状態の時にしかロボットを正しく回転させることができなかったことである。
また、壁を用いてロボットの角度を補正しても、埃や車軸に繋がる2つのモーターの精度の差など、その他のさまざまな要因により分子モーター近くの狙った位置にロボットを移動させることが難しく、その結果分子モーターを正しく挟むことができなかった。
改善された戦略:壁やオブジェクトを利用して正確に進め
そこで、チームが次に考えたのが、分子モーター、自己組織化の近くにある壁を最大限利用する戦略2だ。
しかしこの戦略およびロボットも精度を向上させることができなかった。その原因は、ベースから対角線上に沿って長い距離を進み、ロボットを正しく反対側の壁まで進めることができなかったことと、また1回のスタートでロボットに与える指示が多く、正確にロボットをコントロールすることが極めて難しかったことである。
スタート時のわずかな狙いの狂いが反対側の壁にたどり着く頃には、大きな差となり、次のアクションに大きな影響を与えることになってしまう。チームは改めて、ロボットが長い距離を正確に進むことの難しさ、アクションが多くなればなるほど、ロボットの制御が難しいということを学んだ。
次にチームが考えたのが、直進精度を向上させるために賢い薬ミッションを活用した戦略3だ。賢い薬ミッションは骨のような形をしており、ベースから分子モーターを直線で結んだ線上に、縦の辺が重なって設置されている。これを補正道具として利用することにより、ロボットを正しく分子モーターまで運ぶというものだ。そのため、骨の上を通過することが可能な大型のアタッチメントを開発し、賢い薬ミッション、分子モーターを同時にクリアすることを狙った。
この戦略およびロボットは強度、スピードの点で問題が多く、断念せざるを得なかった。賢い薬ミッションを活用することにより、直進性を維持しつつ、分子モーターまで高い精度でたどり着くことはできた。しかし、賢い薬ミッションの上を通過するため、アタッチメントを大型化せざるを得ず、強度を上げることと、スピードを向上させるための軽量化のトレードオフで苦しんだ。
しかし子供たちは決してあきらめず、発想を転換させたのだ。 次のページ