モデルを使ってシステムエンジニアリング
Think ITの2008年4月の特集「伝わる!モデリング」では、さまざまな角度からモデリングを取り上げています。
日本では「モデリング」とは、文字通り「何かを組み立てて作る」という意味で使われています。モデリングを使って、分析時に考えたモノや設計時に考えたモノを抽象的に組み立ていくことで、プロジェクトに関わる人間の間でより正確に情報をやり取りすることができるようになります。
本連載では、身近なアノ製品のモデリング方法を紹介していきます。第1回と第2回では、なんと「ハイブリッドカー」を題材にその中身を徹底解剖していきます。
ハイブリッドカーと一口で言っても、中身はとても複雑で、ハードウェアとソフトウェアが複雑に絡み合って構成されています。どの機能をソフトウェアで実現するか決まっていない段階では、分析はUMLではなくシステムエンジニアリングに特化したSysMLで行っていきます。
SysMLをご存知ない方のために簡単にSysMLについて説明します。前述の通りSysMLはシステムエンジニアリングに特化したものです。UMLの中でシステムエンジニアリングに必要ないものをそぎ落とし、逆に足りないものを付け加えたものです。その結果UMLよりシンプルな言語になっています。要求の関連をグラフィカルに表す要求図や、パラメータのやり取りをグラフィカルに表すパラメトリック図などが新たに追加されています。
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
まずはユースケースをまとめる
ものづくりには必ず満たすべき要求があります。要求は、要求間で関連があったり、大まかな要求の下位に細かな要求があったりとお互いに関連を持っています。
例えばハイブリッドカーのトップレベルの要求を見てみましょう。まず、車ですから当然道を走るのに必要な要求があります。「加速・ブレーキなど」(図1(上)の2レベル)が大まかな要求としてあり、個々の要求に細分化した結果、で「既存の車よりブレーキが効くこと」「既存の車より燃費が劇的に良いこと」などの要求(図1(上)の2.nレベル)と階層関係を持ちます。
要求図を使ってグラフィカルに繋がりを表すことで要求間の関連を整理することができます。Microsoft Wordなどの文書作成ソフトによる章立ての要求よりも把握しやすいと思います。
また、要求だけではなく、製品には満たすべき機能が存在します。製品がどんな機能を実現してくれたら良いか分析するのにユースケース図を使用します。まずは図1(下)に示すトップレベルのユースケース図を見てみましょう。車にまつわるユースケース(機能)はいくつもあります。「車を運転する」「道をナビゲーションする」「保険をかける」などです。
次のページでは、これらのユースケースを利用するアクタの配置について説明します。 次のページ