ユースケースのシナリオは?
ユースケースが抽出できたら次はそのユースケースのシナリオを考えます。シナリオを記述するのには一般的にシーケンス図を使用します。
図3(上)に示した「車を運転する」ユースケースのシナリオを見てみましょう。「Ref」で囲まれている部分は他のユースケースの参照となります。図2のユースケース図で記述されていた「車を運転する」ユースケースと依存関係があるユースケースが「Ref」で表現されています。シナリオを順番に見ていきましょう。
まず、車を発車させています。ついで車の状態によって適したユースケースを呼び出します。アイドル状態であれば「アイドル」ユースケース、加速状態であれば「加速する」ユースケース、ブレーキ状態であれば「ブレーキをかける」ユースケースが呼ばれています。
また、上記とは並行して「舵をとる」というユースケースが呼ばれています。皆さんも運転するときはアクセルを踏んだり、ブレーキを踏んだりしながらもきちんとハンドル操作をしていると思います。そういったシナリオをシーケンス図で表すと図3(上)のようになります。このシナリオでは最終的に「駐車をする」ユースケースを呼んで車を止めて終わっています。
今、挙げたシナリオは正常系と呼ばれているシナリオです。実際の運転にもさまざまなトラブルは付き物です。モデルでも異常系や例外系と呼ばれるシナリオを考えなくてはいけません。想定するシナリオをすべて含めて「運転する」ユースケースのシナリオが完成します。
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
シーケンス図の階層化
要求図やユースケース図と同様にシーケンス図も階層化して記述するのが一般的です。先ほどの「運転する」の正常系のシーケンス図の「発車する」の正常系のシナリオを見てみましょう。「発車する」の正常系のシナリオは図3(中)のようになります。運転手が鍵を回す(これをStartVehicleというイベントとします)と車は加速する準備ができたというシナリオです。車の中身をブラックボックスとして考えているので非常にシンプルです。
では、これをもう一段階ブレイクダウンして考えてみましょう。図3(下)がブレイクダウンした図になります。運転手が鍵を回すと、パワーコントロールユニットが電子制御系に起動をかけ、電子制御系は準備ができたらパワーコントロールユニットへ準備OKのメッセージを送るというシナリオです。
ホワイトボックスのシナリオを考えていくと、縦軸のライフラインを考慮しなくてはいけません。こうして抽出された縦軸がサブシステムに該当します。他のユースケースのホワイトボックスのシナリオを考えていくと、他にもサブシステムが抽出できると思います。
このようにシナリオを考えていきながら、サブシステムを抽出していくとシステムを分割しやすいと思います。
次回は抽出したサブシステム間のつながり、構造すなわちアーキテクチャを考えていきたいと思います。そしてサブシステムの振る舞いについても触れていきます。ハイブリッドカーが、開発の分析段階でどのような外部構造になっているのか、またどのような内部アーキテクチャになっているのか、さらにバッテリーとガソリンの使い分けはどのようにしているのかということについて、解説していきます。
なお、記事中にてご紹介しているモデル表記などは、テレロジック社のモデル駆動型組込み開発環境の「Telelogic Rhapsody(ラプソディ)」を利用しています。
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