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【伝わる!モデリング】シナリオの図解化

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第2回:図解化が生むメリットとは?

著者:産業技術大学院大学 中鉢 欣秀

公開日:2008/04/09(水)

VGA座標軸におけるモデルの位置づけの設定

何らかのモデル、またはモデルの個々の要素はその目的に応じてモデルのVGA空間のどこかに相対的に位置づけられる。少々横道にそれるが、モデリングにおいてこの3つの要素を意識することの重要性を述べておく。

モデルを作る際、最も避けなくてはならないのは視点のブレである。IT技術者が業務分析を行うと、どうしてもITシステムの視点に偏ってしまい、業務の本質を捉えてモデルにするという目的を達成できないことがある。

粒度についても、全体像を大まかに捉えることが目的ならば粗めの粒度のモデルを作ることになるし、実装できるレベルまで詳細化することが目的ならば、細かい粒度のモデルが必要になる。

抽象度についても同様で、さまざまなステークホールダの合意形成を目的にしたモデリングにおいては、抽象度を上げすぎるとモデルを用いたコミュニケーションが難しくなることもある。

以上のことから、モデリングにおいてはその目的に照らして、今作成しているモデルを最終的にVGA空間のどのあたりに位置づけるべきかを意識して分析するのが望ましい。また、この作業をきちんと行える人は優秀なモデラーであると言えると、筆者は考えている。

図2:KJ法による抽象化の例

図解を用いて抽象化することのメリット

さて、優秀なモデラーであっても、最初から目的に合致するモデルが作成できるとは限らない。通常、モデリングは試行錯誤の過程を経るものである。最初のモデルを作成し、レビューを行い、修正する箇所を修正して・・・、という過程の中で、モデルの視点を一定に保ちつつ、粒度・抽象度を調整していくのである。

例えば、複雑で大きなシステムをモデル化するとき、システム全体を粒度の粗いいくつかの固まりとして捉えることで、システムの全体が分かりやすくなる。そこで、分かりやすいモデルを作るために、モデリングの過程で細かい要素を集めて大きなまとまりにする作業をよく行う。このような作業では、モデルの要素の粒度(G軸)を調整することになる。

粒度(G軸)を調整すると、それに伴って抽象度(A軸)も変化する。モデリングの入門書でよく取り上げられるような例で言えば、「りんご」と「バナナ」という2つの異なるものをまとめるために、「果物」という上位概念でそれらをくくり出す、といった分析作業があてはまる。これが、いわゆる「抽象化」だ。

通常、モデリングにおける抽象化はモデラーが頭の中で行う、言わば「頭脳作業」である。このとき、経験豊富なモデラーは現在作成しているモデルの視点を意識しながら、モデル要素の粒度と抽象度を適切にコントロールできる。しかしながら、こういった作業はモデラーの頭の中で行われるため、他者から見るとその作業過程は目に見えない。そのため、モデリングに慣れていない初心者にとっては大変理解しづらい作業である。

川喜田二郎氏のKJ法では、このような抽象化の作業を模造紙の上でカードとペンを使った目に見える作業として行う。図2は、a、b、cという3つのカードから、それらの内容の全体を表す「X」という表札を作成する様子を示している。a、b、cという細かい要素はXという粗い要素(グループ)にまとめられた。Xはa、b、cの内容を端的に表現したものであるから、抽象度は上がっている。つまり、モデリングにおける抽象化の作業を、カードとペンを使って自分の目で確かめながら、「身体作業」として行っていくのがKJ法のグルーピングである。

KJ法が世の中で広く受け入れられている背景には、経験や慣れがないと難しい抽象化作業を、図解上のカードの物理的位置を動かしたり、グループにまとめたりという身体作業として可視化していることがあるだろう。非IT技術者にも実施しやすい、簡単なモデリングプロセスの構築を目指すにあたり、このような図解操作を通した分析作業の利点は大いに参考になる。 次のページ




産業技術大学院大学  中鉢 欣秀
著者プロフィール
産業技術大学院大学 中鉢 欣秀
産業技術大学院大学(AIIT)准教授。2004年、慶應義塾大学大学院にて博士(政策・メディア)号取得後、JST研究員を経て現職。ソフトウェア工学(上流工程、ソフトウェアアーキテクチャなど)に関する研究に従事。社会人学生を対象とし、プロジェクト型教育(PBL)によるソフトウェア開発プロセスの教育などを実践。
http://aiit.ac.jp/


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INDEX
第2回:図解化が生むメリットとは?
  図解化のメリット
VGA座標軸におけるモデルの位置づけの設定
  シナリオと図解の融合
【伝わる!モデリング】シナリオの図解化
第1回 シナリオに基づく設計とSBVA法とは?
第2回 図解化が生むメリットとは?
第3回 図解化する!
第4回 図解からユースケース抽出する!
第5回 SBVA法の今後の展開と関連研究
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