【伝わる!モデリング】モデリングの新潮流
第2回:SysMLとは何か
著者:スパークスシステムズジャパン株式会社 河野 岳史
公開日:2008/04/14(月)
システム設計の現状
本連載「モデリングの新潮流」では、モデリングの最新動向を紹介していきます。今回は、日本国内ではまだまだ認知度は低いが、確実に注目が集まり始めている「SysML」について、登場した背景、そのメリット、デメリットについて解説していきます。
現在、ソフトウェアとハードウェアをあわせた「システム」全体の設計において、モデリングを活用している例はまだ少ないのではないでしょうか。システム設計を行う場合には、過去の経験や実例あるいは設計者の知識を活用しながら、既存のハードウェア、ソフトウェアを組み合わせながら設計することが多いでしょう。そして対応できない部分については新規にソフトウェアを開発して利用するか、ハードウェア自体を新しく開発して対応していくのが一般的だと思います。
ところが昨今のシステムの複雑化、高機能化に伴い、このような考え方でのシステム設計が困難になりつつあります。設計する際には、システムを構成する「ブロック(システムを構成し、システムの機能を提供する設計単位)」間の関係や制約などを考慮した設計にしなければなりません。しかし、この考慮すべき「ブロック」の数が増えてきています。
さらに、「短納期」「低コスト」「高品質」を同時に満たすことが要求されるようになりました。短納期、低コストを重視した結果、システムに思いもよらぬバグが存在し、メーカーが回収/改修に多額の費用をかける例も少なからず報道されています。また、品質が悪いために、完成が延期となるケースも多く見られます。
このような状況では、システム全体の設計を適切かつ効率的に行い、さまざまな要求や制約を同時に満たす設計を実現しなければなりません。そのための手段の1つとして注目されているモデリング記法が「SysML」なのです。
図1はSysMLでモデリングされた一例です。
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
SysMLとは?
SysMLとは、OMG(Object Management Group)によって公開されている、システムをモデリングするための記述言語(Modeling Language)です。SysMLやOMGという言葉を知らない方もいるかと思いますが、UML(Unified Modeling Language)という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?UMLもOMGによって公開されており、SysMLはUMLの「兄弟」のようなものと言えるでしょう。
このSysMLは、主にソフトウェアの設計のために利用されるUMLをシステム設計のために拡張したものです。UMLのいくつかの図はそのまま利用し、システム設計を行うために必要な記述方法を追加しました。また、UMLに含まれる図のうち、システム設計に不要な図は削除しました。
SysMLの特徴の1つとして、システムの「機能」「振る舞い」「制約」をモデルとして定義するだけでなく、そのシステムに対する「要求」やそのシステムの「テスト」をモデルに取り込んだことが挙げられます。従来の方法では別の文書で管理されることの多い要求やテストなどもモデル内に表現し、要求とその要求を実現するブロックとの関係や、テスト項目とテスト対象のブロックとの関係を目に見える形で表現できます。先ほどのSysMLの図は、システムの要求と要求間の関係をモデリングしたものです。
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