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オープンソースの適用可能性を示す
オープンソースの適用可能性を示す

第2回:DB管理ツールを例にOSSの現在の実力を診断する
著者:ユヒーロ  伊藤 寛之   2006/3/20
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独自UIによる統合管理環境

   障害を検知した際には、監視対象や障害の重要度毎に設定されたアラーム音や、メールにより監視者に障害の発生を通知。メールの送信対象は、監視対象や障害の重要度毎に設定可能だ。

   また、障害毎に設定された任意のアクションも実行できる。アクションにはシェルスクリプトやSQLクエリが登録でき、監視対象サーバやDBなどに対する様々な処理を指定できる。さらに今後は、サポートウェブサイトを通じて、アクションのテンプレートを順次提供していく予定だ。

   HiTo!は障害情報を「ケース」というフォーマットで管理する。また障害情報のステータスを自動追尾し、必要に応じて重要度などを最新のステータスに変更していく。この自動追尾により、無駄な障害情報の発生を抑え、監視業務の混乱を避けられる。

   各ケースにはインターネットの掲示板の様にコメントを書き込め、処理内容などを「メッセージ」として記録しておける。これらケースやメッセージは、様々な条件をキーワードとに検索可能。障害対応のスキルを社内に蓄積・共有できる。


低コストでの導入・教育

   HiTo!は、DBAの視点から設計されている。これはUIも同様だ。直感的に操作でき、極めて容易に操作方法を習熟できる。

   またWebブラウザのみで操作を完結させられるため、オペレータに高度なコンピュータリテラシを要求しない。


現場のノウハウを取り込めるカスタマイズ性

   HiTo!には、監視対象に向けて発行するスクリプトやクエリを登録できる。エンジニアが有しているノウハウをシステム化して運用監視業務に組み込めば、運用監視業務のさらなる効率化がはかれる。さらに高いスキルを有しているエンジニアは、単純作業から解放されて、より効果的な場面で活躍してもらえるわけだ。

   各種スクリプトやクエリ、フィルタの登録は自由度が高く、用途に応じて様々な作り込みが可能だ。スクリプトは自分で開発することもできるし、サポートサイトを通じて入手できるテンプレートの利用も可能だ。


高度な自己監視機能と実証済の安定性

   自己の機能群が正しく稼働しているかチェックする機構「stabilizer daemon」を備えている。万が一機能の一部が停止したとしても、チェック機構が、停止した機能を即座に復旧させる。もちろんチェック機構自体もまたHiTo!自身で死活を監視している。筆者がこれまでシステム開発や運用に携わった経験から、「実ビジネスでの使用に耐える」だけの性能と、中堅・中小企業でも導入可能な低コストを実現したつもりだ。

   将来的には、「HiTo!」のオープンソース化も視野に入れている。


検討することの重要性

   HiTo!は監視・障害・障害履歴の各情報を管理するため、OSSのDBMSである「PostgreSQL」を使用。またWebブラウザによるGUIを実現するため「Apache」を採用している。アプリケーション記述言語はPHP5だ。他にも「OpenSSL」や「libssh2」、SNMP監視やパケット監視のために「NetSNMP」や「snort」といった既存OSSを活用し、高い品質を得ている。

   運用監視とは、企業がクライアントに品質を保証する最終防衛ラインだと考える。その最終防衛ラインを守りきれずに品質を低下させ、結果としてクライアントからの信頼を失った企業がどれほどの損害を被ったかは想像に難くない。

   是非一度この機会に、現状の運用体制で十分に監視できているか、また、そのため導入しているツールが最適なものかを検討いただきたい。高価なツールであっても、必ずしも優れているというわけではないことが分かるだろう。HiTo!のように、OSSをベースとした製品は、多くの開発者やユーザに揉まれる中で誕生し、進化してきた。パフォーマンスや品質の面でも、十分に実用段階に入っている。「価格が安いと機能や品質が不安」「オープンソースは手間がかかりそう」などの理由で「食わず嫌い」をする前に、一度しっかりと自分の目でソフトを確かめて欲しい。

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株式会社ユヒーロ 伊藤 寛之
著者プロフィール
株式会社ユヒーロ  伊藤 寛之
2000年慶應大学環境情報学科卒業。大学1年の頃よりオープンソースソフトウェアを利用したシステムの設計、開発、運用に携わる。中堅SI企業に入社後、テクニカルサポート、DB管理者の両面よりサイベースを学ぶ。その時の経験を元に、データベース監視ツール「HiTo!」を開発。同製品の事業化を目指しユヒーロを設立した。2005年よりOSSAJ会員。


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  DBMS管理ツールの評価は機能や価格・手離れで判断
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