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ビジネス展開におけるWeb 2.0
第1回:Web 2.0が意味する新しいトレンド
著者:
野村総合研究所 堀 祐介
2006/3/24
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フロント型企業がカバーする領域とサービス群
フロント型企業は大量の情報と消費者のアテンションをコントロールするために、どのようなサービス群を展開しているのだろうか。フロント型企業であるGoogle、Amazon.com、mixi、はてなが展開するサービスの一部を表2の4つのフェーズにマッピングした(図3)。
図3:フロント型企業がカバーする領域とサービス群
出所:野村総合研究所
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
フロント型企業は口コミ情報、クロールデータ、商品情報、購買履歴といった大量の情報をいかし、広告配信システムや検索システムによって消費者のアテンションを獲得するといった一連の仕組みを備えていることがわかる。
またGoogleやAmazon.comの強さは、サービスがカバーする領域の広さによって裏付けされている。特にGoogleが打ち出す新サービスの展開は目覚しく、現在も野心的にカバー領域を広げようとしている。
例えばGoogle Baseによると、GoogleのアカウントとクレジットカードがあればGoogle Baseに登録された商品の決済ができるようにするという計画を明らかにした(注)。
※注:Google Base
http://googlebase.blogspot.com/2006/02/buying-on-google-base.html
この計画が実現されれば、GoogleはAmazon.comやeBayが得意としてきた「消費者に商品を販売する」領域まで進出することになる。
一方、mixiやはてなのようにある特定の領域を専門として、利用者数を伸ばしている企業も存在する。今後は獲得した利用者数を武器に他領域に拡大する、もしくは専門性をさらに高めて統合型プラットフォームを持つGoogleやAmazon.comと住み分けをしていくことになるだろう。
情報とアテンションをコントロールする手法・技術の変化
フロント型企業が情報とアテンションをコントロールするため用いている代表的な手法・技術は次のとおりである。
図4:情報とアテンションをコントロールする手法・技術
出所:野村総合研究所
手法
サービス型
主なフロント型企業は数多くのサービスをWeb上で提供していることが特徴である。blogサービスや検索サービスに留まらず、旧来はローカルマシン上で動作するパッケージソフトウェアとして提供されていたメールクライアントやオフィス系ソフト(ワードプロセッサ、表計算、スケジューラ)もWebアプリケーションとして提供する動きが広がっている。
CGM分析
フロント型企業は、消費者がブログ、SNS、Wiki、ユーザレビューサイトで発信する口コミ情報を収集する。イネーブラ型企業は収集された口コミ情報を分析してマーケティングや商品・サービスの改善にいかす。
パーソナライズ
Webページに配置する情報や広告を消費者1人1人の嗜好にあわせて配信することで、消費者のアテンション獲得やコンバージョン率向上をはかる。
マッシュアップ
複数の情報ソースを組み合わせ可能な仕組みを提供し、新たな「情報・アテンションの流れ」の形成を支援する。
技術
RSS/ATOMフィード
フィードはHTML主体のホームページと並ぶ、新しい情報配信媒体となる可能性を秘めている。またフィードにはデータを構造化して様々な情報を盛り込めるため、消費者のアテンションを獲得するツールとしても有用である。
WebAPI
フロント型企業が有する機能や情報を外部に公開することで、トラフィック増加を狙う。
Ajax
リッチでインタラクティブなユーザインターフェースを構築することで、消費者が情報入力・閲覧しやすい環境を整える。
表4:情報とアテンションをコントロールする手法・技術
これら7つの手法・技術の具体的事例については連載の第3回目で詳しく述べたい。
まとめ
以上、第1回目ではWeb 2.0時代における大量の情報と消費者のアテンションをコントロールすることの重要性と、これから導かれる2つのトレンドについて説明した。次回ではWeb 2.0がもたらす市場へのインパクトについて解説する。
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著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 技術調査室 研究員
堀 祐介
東北大学工学部通信工学科を卒業後、大手SIerにてオープンソースソフトウェアおよびテレコム関連技術の標準化活動に従事。2005年、野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。
INDEX
第1回:Web 2.0が意味する新しいトレンド
はじめに
顧客満足と売上げの目標が持つ問題とは?
CRMの効果とは何か