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ながさきITモデルへの参画 〜 地場SIerの官公庁システム開発奮戦記 |
第1回:地場SIerに訪れたチャンス 〜 Curlとの出会い
著者:ドゥアイネット 穴井 春奈 2006/4/12
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新規参入SIerとして臨んだ打ち合わせ
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落札後、長崎県庁の情報政策課内で、はじめての打ち合わせが行われた。県庁側の席には休暇システム担当者の森氏と長崎県CIOの島村参事監が出席した。この頃の当社は、実績として誇れるような仕事はこれといってなく、県の担当者にしてみれば、どこの馬の骨かわからない企業として当社が映っていたのではないだろうか。今回のシステム開発について、島村参事監は単刀直入にいった。
「失敗は許されない」
非常に厳しいお言葉だった。
その後、森氏との打ち合わせは淡々と進んだ。打ち合わせの内容はシステム構築の設計書に対する当社からの質問とその回答というごく普通のものだが、その中でも好意的な感じはあまり受け取れなかった。
これは今まで自治体の仕事に関わったことがなく、自治体の業務知識がまったくない当社がシステム開発を行うからであろう。当然、森氏としても慎重になるし、不安を抱えながらのスタートだったのだろう。しかも森氏はシステムの専門家というわけでもない。当社からの質問に対して確実な回答をすることはできないのが当たり前である。
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オープンソースソフトウェアを利用したシステム開発の着手
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今回受注した「休暇システム」とは、県庁内の職員が休暇を取る際に電子申請をして決裁するというもの。開発言語はPHP、データベースはMySQLというオープンソースソフトウェアを利用したシステムである。
長崎県からいただいた仕様書は非常に詳細なものだったが、開発していく上で疑問は必ず発生するものである。今回も例外ではなく、早速確認しなければならないことが次々と発生した。当社の休暇システム開発担当者である前田はまずメールで次の点を質問した。
- テーブルのカラムの型はこれでいいのか
- メール関数は使えるような実機環境なのか
- サーバのIPアドレスは
発生した疑問点などは時には電話で意思疎通をはかり、それでも不十分な場合には前田が県庁を訪問して森氏と直接会って打ち合わせを行った。このやり取りは疑問がなくなるまで何度も繰り返した。メールでは伝わりにくいことも実際に会って話せば伝わる。しかしそれでもまだ不十分であり、悶々としたやり取りが続いた。
なぜかというと、発注者である県側は業務については説明できるが、技術的な説明はできない。逆に受注者である当社は技術的な質問はできるが、業務をまるでわかっていなかった。ある時なぜ意思疎通がうまくはかれないのか、エンドユーザである森氏と接して気付いた。
「私たちSEは、業務の素人に過ぎない」
つまり、私たちSEはシステムについて専門用語を並べながらあれこれいってはいるが、お客様が利用する業務に関してはまったくの素人であるため、無駄のない業務要件を詳しくかつ正確に定義することさえできないのだ。
筆者たちが悶々としていたように、森氏だって悶々としているはずだ。森氏はあえて面倒なことと知りながら、当社に付き合っていだだいたのである。本来であれば楽をしようと大手ベンダーに丸投げすることだって可能だったはず。あえてそれを行わず、当社という地場企業に付き合ってくださったのだ。
ここで県庁の意図がはじめて理解できたのである。それはシステム開発を入札にかけることで、県庁側は無駄を省いてコストの削減を、地場企業には直接受注のチャンスが生まれる。発注側と受注側が互いに歩み寄ることで、双方にとって大きなメリットが生じる関係が構築されるということを。
そういったことを意識して意思の疎通をはかるうちに、森氏と前田の間にあった溝は少しずつ埋まりはじめたのである。
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著者プロフィール
株式会社ドゥアイネット 穴井 春奈
システム技術部2課 チーフ。 前職は一般事務。もっと自分にしかできない仕事をしたいという思いから転職を決め、ドゥアイネットに入社して4年。現在は長崎県電子自治体プロジェクトに携わり、設計から開発までをこなす。
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