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情報化による業務システム改善
情報化による業務システム改善

第1回:再燃するBPR(業務プロセス改革)
著者:みずほ情報総研   片田 保   2006/5/8
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されど、再燃するBPR

   日本では、正しくBPRを実践できたケースは少ないといわれる。もちろん、米国型の人員整理の道具としてではなく、旧来の組織の枠を超えて業務プロセスを見直し、顧客の視点から抜本的に刷新することができたかどうかである。冒頭でも述べたように、近年の情報化投資は増加傾向にある。特に不良資産化する情報システムが、以下の問題を露呈している。
  • きちんと効果のでる情報化投資はできているのか
  • 情報システムを導入しさえすれば、期待した効果はでるのか
  • 効果がでないのに情報化投資を増額し続けているのではないか

表2:情報化投資の問題

   情報化投資とは、当然のことながら情報システムを導入すること自体が目的ではない。業務を効率的・高品質にサービス提供できるかどうか、新たなサービスを迅速に立ち上げられるかなどがポイントになる。

   そのためには、情報システムの導入以前の問題としてBPRを実施している必要がある。しかしながら、情報システムを開発・構築するにあたり、きちんとBPRを行っているケースは極めて少ない。

   情報システムの導入の際には、本来ならば新しい業務プロセスを設計して情報システムを導入するべきだが、「現行の業務プロセスでの処理は特に問題がないのでBPRは不要である」「情報システムを入れればBPRはおのずと実現できる」「情報システムを導入するのにBPRに時間をかけるとプロジェクト自体が遅滞する」といった声を筆者はよく耳にする。特に、確実かつ迅速に情報システムを導入する「スピード」が重視され、業務システムを設計してからでは間に合わないので、とにかく情報システムを構築するというケースも増えている。

   上記のような導入では、結果的として効果を十分に引き出せないまま、ひどい時にはプロジェクト自体が頓挫する。ERPにしても、データを統合したところでそれを活用するのは人であり組織である。その業務プロセスが旧態依然とし、情報システムの活用を阻害してしまったのでは元も子もない。「情報システムを使いこなせる業務プロセスや組織になっているか」ということを改めて問い直す必要があろう。実際に情報システムを導入しただけでは、その効果は限定的にならざるを得ない。

   実際のところ、情報化投資において重視する点として、一番多いのは「業務プロセス・システムの再編」である(図1)。ベンダーに求める企画提案でも「ITを活用した業務改革」が上位を占めた(図2)。自社・子会社の情報システム会社に求める企画提案でも同様の傾向が見られる。

情報化投資において重視する点
図1:情報化投資において重視する点
出所:ユーザ企業IT動向調査2006(社団法人日本情報システム・ユーザ協会)

ベンダーに求める企画提案
図2:ベンダーに求める企画提案
出所:ユーザ企業IT動向調査2006(社団法人日本情報システム・ユーザ協会)

   BPRを実践しようとすると、実際にはその効果が曖昧で意義が失われたり、慣れ親しんでいるがゆえに業務プロセスの見直しが甘くなったり、総論賛成・各論反対の中で抵抗勢力化しやすいのも事実であり、業務プロセスや組織・機構の設計を抜本的に改革するのは容易くない。

   だが、情報化投資の効果を引き出すためには、「情報化以前の問題」が障害になることが多い。次回以降では、BPRの具体的な内容や効果、実践手法などについて説明していく。

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みずほ情報総研 片田 保
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社  情報・コミュニケーション部
公共経営室長   片田 保

1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。

INDEX
第1回:再燃するBPR(業務プロセス改革)
  拡大する情報化投資の明暗
  BPRとは何だったのか?
されど、再燃するBPR