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情報化による業務システム改善
第3回:規定・制度、組織・機構を改革する
著者:
みずほ情報総研 片田 保
2006/6/5
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組織・機構の改革
さらにもう一歩踏み込んで、組織・機構の改革を考えてみよう。多くの組織・機構は、その設置や成立についての規定や制度が存在する。その点では、規定・制度と不可分ではあるが、ここでは特に組織・機構に関して重要な項目を採り上げる(表2)。
組織のフラット化/柔軟な組織編成
組織維持のために業務を行いがちで硬直化している
現場に人事権がなく、迅速かつ柔軟な対応ができない
業務の集約・集中/アウトソーシング
個別部署に人を配置して庶務事務などを行うことが前提となっていて、柔軟な人事異動ができない
組織の軽量化・分散化
各店舗・部署に人を配置して内部事務を行う組織形態が前提となっていて、各々の運用で格差が生じてしまう
意思決定の分権化/現場への権限委譲
企画・営業・受注などに関する権限がなく、都度、本部所管部課の判断・意思決定を仰いでいるため、タイムリーな意思決定ができない
表2:BPRの阻害要因(組織・機構)
組織のフラット化、柔軟な組織編成
先述の調査結果からも明らかなように、IT導入とともに組織のフラット化が進んでいる。従来は部課を縦ラインで管理してきたが、市場や顧客の動向に迅速な対応を行うため、課長・係長制度を廃止してチーム制による柔軟な組織運営に切り換えているケースもある。最近では、社内公募制度などもあわせて運用することで、社内から幅広く人事異動を行うところも多い。
その一方で、組織のフラット化にも課題がある。組織的な上下関係という明確なラインが消えてしまうため、運用次第では上からの指示や下からの報告などが組織の途中で曖昧になることがある。また、より効率的な人材活用ができる反面、能力の高い人に仕事が集中しやすいという点も労務管理の上で新たな課題となっている。安易なフラット化には注意が必要である。
業務の集約・集中、アウトソーシング
一般的に福利厚生や庶務事務、総務・経理事務などは、部課ごとに担当職を配置し、個々に事務処理を行っている。近年では、これらの間接的な業務の管理コストを削減して経営改善に取り組むことが多い。
しかし、個別部課内の事務の見直しに留まり、その効果も限定的にならざるを得ないのが現状である。こうした業務を各部課バラバラに改善するのではなく、IT導入にあわせて関連する事務群を集約し、さらに専門事業者にアウトソーシングする取り組みもあらわれている。
また、グループ系列の企業や業界で集まり、まとめて業務を取り扱うシェアードサービスの導入も進んできた。このようなアウトソーシングの実施にともなっては、サービス水準やリスク管理の責任範囲を明確にすることが重要である。
なお、アウトソーシング対象となった業務を行っていた人員を、別部課に異動させるか、アウトソーシング事業者に再雇用させるか、社員(職員)の身分や処遇についての対応も明確にする必要がある。
組織の軽量化・分散化
前項のように、業務の集中化が進むことで、営業や窓口業務を支える様々な間接的な業務(バックオフィス業務)が集約され、支店や営業店などを需要にあわせてコンパクトに配置することができるようになる。
最近では、郵便局と競争する宅配事業者が、受付窓口を地域密着型で多店舗展開するだけではなく、受付時の諸事務の煩わしさから解放するために営業端末を活用し、個々のドライバーと配送トラックそのものが店舗機能を有する迅速かつ効率的な経営も注目されている。
意思決定の分権化、現場への権限委譲
このような組織の軽量化を実践するためには、意思決定のあり方も大きく変えなければならない。ニーズに一番近い現場で、いかに人材・資金などの経営資源のバランスをとり最適配置をするか、そして迅速に意思決定するかが課題になる。よりスピードが求められる時代だからこそ、人事権・決定権などを現場に分権する必要がある。
ある一定の金額までは現場で決裁できるように分権しつつも、「それにあわせて人材を配備するための権限がない」というケースは多々ある。資金の決裁(決済)権限と人事異動の権限を所管する部署が、各々異なっているがゆえに、このような中途半端なことが生じてしまう。こうした落とし穴にはまらないようにするためにも、人材・資金・情報・物品・資材など関連する権限を現場に委譲することが求められる。
横断的な情報共有
業績評価のあり方や運用方法によるところが大きいが、組織横断的な情報共有は往々にして困難をともないがちだ。「マツタケの生えている場所は親族であっても教えない」というように、特に利益(収益)をともなう場合の情報共有は難しい。そして、もともと組織分化された状態で、各々の職務が決まっているならば、隣の部課とは業務内容も責任範囲、組織の役割も異なるため、あえて情報共有する理由もない。
とはいえトラブル対応などで、受け付けた人や組織によって対応が異なってしまうのは問題だ。対応が人や組織でバラバラになると新たなクレームにもつながりかねない。このような組織横断的に利害関係を一にする情報から、全社的に共有していく必要がある。
説得・説明の技術が重要
規定・制度の改革、さらには組織や機構の改革ともなると、一担当者の身の程を超えた問題だとして敬遠されてしまいがちである。関係者の説得や調整を考えただけでも、その壁の大きさ、厚さに圧倒されてしまうのではないだろうか。
しかし、ITを活用して業務システムを効果的に改革するためには、この壁を避けては通れない。そこで必要になるのが、「説得・説明の技術」である。改革後の具体的なイメージや変革の効果を共有できなければ、BPRへの賛同も集まりにくい。
「現状の業務がどうなっているか。業務プロセスや組織の上での問題はどこか。どのような改革案が考えられるか。そして、それらを実践したときに得られる効果はどれくらいか。」
第4回、第5回では、BPRに取り組んだケースを参照しながら、BPRを実践するための説得・説明の技術について考えてみたい。
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著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社 情報・コミュニケーション部
公共経営室長 片田 保
1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。
INDEX
第3回:規定・制度、組織・機構を改革する
BPRに「魂」を入れる
決裁権限
組織・機構の改革