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情報化による業務システム改善
情報化による業務システム改善

第4回:BPRの効果をコストで示すABC手法
著者:みずほ情報総研   片田 保   2006/6/19
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5. BPR前後の効果を析出する

   各庶務事務にBPR実施モデルを適用して設計した新処理フローに対して再び活動単位でコストを算出して、事務別、業務類型別、各モデル別にBPR前後のコスト削減効果を導出する。
ITの導入効果
図5:ITの導入効果

   その結果、特にIT導入の効果が期待できる庶務事務の業務類型は次のとおりであった。

  • 出退勤管理
  • 文書管理
  • 経理関係

表7:庶務・総務事務のIT導入効果

   これらの結果を受け、BPRを実施していくにあたり、モデルごとに問題点を整理し、具体的な改善内容を示して、いつ、どのように取り組めばよいかを明らかにした展開シナリオを作成する。


ABC実践の留意点

   今回、例示してきたように、ABC手法を用いることによって、グラフなどの図表を多用し効果の可視化をするなど、いわゆる「見える化」を実践することができる。こうした図化/数値化された評価結果は、経営トップだけでなく、情報システムの導入やBPRの推進に必要な現場の協力を取り付けるためにも有効だろう。

   また、ABCを用いたBPRの実践にあたっては、社内の担当チームが実践するのも一策だが、分析にかかる作業負荷を軽減する目的だけでなく、内部からは見えにくいBPRを明らかにするためには、外部のコンサルタントを活用するのもよい。

   特に、経営改革や業務プロセスの抜本的な刷新では、社内担当が問題を指摘しても軋轢を生じてしまいがちで、外部の専門家による指摘という形で説明するほうがBPRも進めやすくなる。

   とはいえ、外部のコンサルタントに丸投げしてしまい、結果として問題点を明らかにすることはできたものの実際の改善にはつながらなかった、というケースもあるので注意が必要である。

   活動の微細に踏み込んで評価しすぎて、ABC分析に要するコストが膨れてしまっては元も子もない。効率よくABCに取り組むことも不可欠なのである。単にABCを用いて評価することが目的ではなく、BPRを実践するための道具であることを忘れてはならない。

   次回は、コスト以外についても目標を示してBPRの効果を明らかにする手法である「BSC(Balanced Score-Card)」について紹介する。

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みずほ情報総研 片田 保
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社  情報・コミュニケーション部
公共経営室長   片田 保

1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。

INDEX
第4回:BPRの効果をコストで示すABC手法
  わかりにくい効果
  ABCで評価してみる
  3. コストを析出し問題点・課題を分析する
5. BPR前後の効果を析出する